第1章-2 初めて呼んだ名前


次の日

体はまだ重かったが何とか起きれるようになった



アイツにお礼言わないと…。



「昨日は…ありがとう」




勇気を出して声をかけたのに、アイツはしばらく黙ったまま私をじっと見てる



な、何なのよ




「お前さぁ、何でもかんでも頑張り過ぎなんだよ。スキーも宿の仕事も全力でいっぱいいっぱいやってるだろ?もうちょっと楽に出来ないかなぁ。見ててイライラすんだよ」




「そんなこと…

私だってもっと器用になりたいよ

でもね、でも、これが私なの!

ほっといて‼」




何もかもを見透かされてるようで、悔しくて情けなくて、思わず声を荒げて飛び出してしまった




上着も着ないで雪の道をどれぐらい歩いただろう




雪山に沈む夕陽と私の涙が重なり、まるでダイヤモンドダストのようにキラキラと輝いた




寒っ、私、何してんだろう






「ノンー!」



聞き覚えのある声



畑野?



でも、アイツ…私の名前


初めて呼んだ




息を切らして走ってきたアイツは何も言わず私を抱きしめた




一言もしゃべらないけれど温かさと優しさが背中に回された腕、頬に感じる鼓動から痛いほど伝わってきた





「言い過ぎた…ごめん」






耳元で囁くように言った声にお互い閉ざしていた心が通いあった気がした




「…カズ」




私も初めて呼んだ…


あなたの名前




たぶん、

うううん、きっと、

この頃からもう…好きだったんだよね





『人を好きになるのに

理由や時間なんて関係ない。

気付けば、その人のことでいっぱいになってる

ただ、愛しい…それだけ』





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