おんな

愛したことさえ忘れてしまった

そんな眼をした女がひとり

朝焼けの街角に佇んでいた


仕事帰りなのだろうか

疲れを滲ませた横顔にかかる髪が

目許に漂う歳月を覆う


夜に舞う蝶の羽は朝日に傷ついて見え


きりっ、と胸を締め付けた感情に

似合う言葉は見つけられず

ただ擦れ違い通り過ぎて行く


カーテン越しの薄闇に抱かれ

女は眠りに就くのだろう

光に背を向けたまま


その細く白い肌から立ちのぼ

胡蝶の夢に

軽い目眩を覚えながら


目覚める街の雑踏に私は身を投げる


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