第二話 幕明け

「まさき まさき起きなさい早くしないと遅刻するわよ」


 たく言われなくても分かってるよ。これだから母さんは·····

 母さん?

「んん かあァさん!!·····ここは?」


 見渡す限り辺りは暗くどこかの洞窟の中だろうか 少し肌寒い

 どうしようこれからどうすればいいんだ?

 あのゼウスって奴はこの世界を救え!みたいな事を言っていたが本当にどこでも居そうな俺にそんな偉業ができる訳が無いだろうが

 てか無責任過ぎるだろ。急に出て来て「我の問に答えよ」だぁ?そして挙げ句の果てには自分には出来ない事を俺に押し付けてきやがった。マジでなんなの?俺の人生返せよ!


 でも前の世界に残してきた家族はどうなったんだろ?俺を探しているんじゃないだろか?俺の帰りをずっと待っているんじゃないだろうか?帰りたい。今すぐにでも帰って、母さんの作ったご飯を食べたい。どうしてこんな事に。俺は一体何を·····何をしたって言うんだ?何もしてない本当に何もしてない。親不孝も親孝行も何もしてない

 それがいけなかったのか?でも親孝行に関してはこれから少しずつ少しずつしていくものだろ?俺は本っ当になにもしていない·····

 なのに この仕打ちは非道すぎないか?

 ほんっとなんなんだよ·····


 今更ながらにも、自分が起こした軽率さ

 あの時何も言わず逃げておけば何事もなくいつも通りの日々があったかも知れない

 あぁあ そう考えると涙が止まらねぇ 母さんに会いたい

 まだ涙が止まらないが洞窟の奥から少し眩しめの光と共にあの男ゼウスが来た。


「君。すまなかった。君にこんな事を頼むのは間違っているとは分かっている。

 だが どうしようもなかったのだ

 でも我は思ってしまった。君なら、あの時死んでしまうはずだった君ならどうって事が無いのではないかと

 でもそうではないと今分かった

 今更ながらに」

「もういい。黙ってろ」

「·····本当に申し分けなかった」


 もういいって言ってんだろが

 ダメだ涙が止まらねぇや

 これから俺はどうなるかも分からないし頼れる人もいない

 ここで初めての恐怖·····いや本当の孤独を知った。

 ゲームや漫画やラノベその主人公達は異世界に行ったりしたら喜んで前を向き街に向け進でいた。でもそれはあくまでゲームなどのフィクションの中の世界だからだ。ほんとにこの出来事を体験してみろ?まず怖くてそこから動けない。


 そして元の世界の友達、家族などを思い出すと涙が止まらなくなり

 これまた動けなくなってしまう。

 まさに2重ブロックだ

 このまま俺はここで引き篭もりそのまま死んでしまうのではないか?


 こういう不安はある あるのはあるのだが

 恐怖や孤独などに勝ることは無かった。

 自分の意識が覚醒してもう何時間たったのだろうか?

 一向にそのまま動けない自分がどうしようも無く嫌になってきた

 だが動けない 動こうとしても動けない程に

 心は蝕まばれていた。


「あぁぁぁ クッソォォォ」


 やけくそになった訳では無いがたまたまそこにあった石を投げた


 カァーーン


 !?なんだ 今金属に当たった様な澄んだ音が

 なったぞ!?

 まさかここの洞窟には 何かいるのか?

 ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ

 只でさえ脆くなっていた精神に、またも負担を与えてしまっている。


「なぁあ 誰かいるなら返事をしてくれ!」


 なんの返事も無かった

 返事が無いのが当たり前なのだがどうにも

 違和感を拭うことができなかった

 本当に誰もいないのか?考えれば考えるだけ思考のループにハマっていく

 だめだ埒が明かない·····どうしようか

 この違和感を払拭出来る方法は1つあるにはある。


 それは近くまで行き直接確認する事だ

 しかし行こにもここから何時間も動けずに

 いるのだ。よし♪確認しよっと!って

 言って立てるようならこっちだってこんな

 苦労はしない


「ハァ」


 ため息が漏れる。·····あぁぁぁもうぉぉ!


 スッ

「あらぁ?」


 立てました☆って えぇぇぇぇぇぇぇぇ

 いかんいかん ビックリし過ぎてアゴ落ちかけたわ

 でもなんだかんやで立てたから確認しに行くか

 何時間も同じ体勢でいたから足がとてつもなく痺れている。

 1歩踏み出せばその度ピリッって電気が走る


「うっ はっ あぁ」


 気持ち悪い奇声を上げながら違和感のある方を辿っていく


「·····」


 まぁ簡単に説明すると、言葉を忘れた

 違和感の元を辿って確認してみると1人の女の子が倒れていたのだった。

 綺麗な金髪の目が蒼いとても言葉では言い表せない子だった


 しかしそんな子が見るも無惨な姿で横たわっていたのだ

 額から大量の血が流れたのか顔の半分は

 どす黒く服はビリビリに破れ、体はもう見るのも酷な程にボロボロだった。


「あっ ·····」


 情けなかった こんな女の子がいたのにも関わらず元々死ぬ運命だった自分に新たな岐路きろをくれ、転生して親に会いたいからって泣きじゃくり何時間も同じ場所に佇んていた。


 この娘を見たら自分がどんな形でも生きているって事を強く思わされた。

 生きていればどうにかなるかもしれないのに

 でもこの娘にはもうそんな事は無い。

 人生の終着を迎えている。なのに自分はって

 考えると言葉など出るわけもなかった。


 でもせめてちゃんとした姿で弔ってあげたいと思ったので辺りを見渡す

 ここの1番奥辺りで良いかな

 移動させようと思い女の子を抱き抱えた


「うぅ」

 ビクッ


 思わず落としそうになった (危ねぇー)

 女の子が声を発した 生きてる!生きてる すぐさま女の子を地面に座らせ


「ねぇ 分かるか?大丈夫か?」

「うぅぅ」


 見た通り結構の重体だった。俺に医療の知識なんてこれっぽっちも無い

 どうしよう 俺はこの娘を救いたい気持ちで

 頭が一杯だった。絶対に助けたい

 この俺を思いあがれせ、動けるよう救ってくれたこの娘を!

 身勝手なこちら側の都合だが、なんと言われようが救ってみせる。絶対に!


 とりあえず一刻もはやく医者に見せないと

 不味いということは馬鹿な俺でもすぐに分かった。

 ここから出ないと·····出口はどこなんだ?

 転生してきて全く辺りも確認もしていないし

 状況も把握できていない

 どうする·····どうすれば良いん!!

 そうだあいつだゼウスを呼べばいいんだ


「おい!聞こえてるんだろ?出てこい おぉい

 頼む出てきてくれ。

 頼み出てこぉぉぉぉいぃよぉぉぉぉ」


 何の変化も起きない。クソなんで肝心な時に出てこねぇんだよ。

 こうしているあいだにもこの娘の呼吸は弱くなってきている。

 どうすれば·····いや考えてる時間もねぇ


「頼む 出てきてくれ!時間がねぇんだよ

 なぁホンットに頼む」

「頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼むたのむ!!」


 一向に出てくる気配する無い

 どうして···どうしてなんだよ もう本当に

 この娘の時間はねぇんだ。何故?もしかして出てこれないか?でもならあの時出てきてたんだ。

 あの時と同じ状態にすれば出てくるんじゃないか?いや迷ってる暇はねぇとりあえずやるぞ


 でもどうやって再現すればいいんだ?あの時はどうしようもなくて、心がズタズタになってそしてボッーっとしてたら俺の前から

 光パッーとなって·····

 そうだ 俺の前から現れたなという事は

 元々座っていた位置に戻って前を向きそのまま正面に向かって突っ込んだ。


「出てこい インチキ自称神様よぉぉぉ」

 ドン!

「痛っ」


 見るとそこには1mもない石碑みたいな物があった。


「これか···?俺が何回呼んでも出てこねぇんだろ?ヨシッ」


 思いっきり今ある力MAXで蹴った


「でて来い!!とりあえず姿を出せぇぇぇええ」


 パーーっとその石碑が輝き始めた。よし成功だ やっと出てきやがったか···

 今までこんなに全力で行動した事がなかったで今までの緊張が解けその場に座り込んだ。


「やっとか やっと出てきたか」


 そんなに長い時間が経った訳ではないが

 こんなにも切羽詰まった状況に置かれ

 頭をフル回転させた事は初めてだった。

 だからだろうか、成功させた事で緊張が解け

 その場にへたり込んでしまった


「うむ 呼び方に少々問題があるがまぁそれはそれでよしとしておこう」

「ん?出てこない奴が悪いんだろ あんなに

 叫んだのに·····でもお前がした事絶対に

 許すことはない。これだけは言っておく」

「あぁぁ 肝に銘じておく ところで我を

 呼び出した訳は?」

「あぁその事なんだがこの娘の手当てをしてあげてほしい」


 はやくしないと、さっきも息が弱かったし

 こく一刻を争うんだ。はやく早くしてくれ


「·····フゥム その子の手当てをする事は

 できん」

「は?な、何いってんだ?俺を転生させる事が出来んだろが、なら回復魔法の1つや2つ造作もないだろ」

「うむ 造作もない、造作もないが手当てをしようにも、この子はもう現世におらん」


 んん?現世にいない、そう言うのか?

 そんな···んな訳あるわけないだろ

 ほら小さいけど息が···息が、ない

 ま、間に合わなかったのか? そんなはずはない おかしい コイツが出てくる前は必ず息が

 あった。なのに、なのに!!どうして!!


「う、う 嘘だろ?おいしっかりしろ!起きろ

 頼むから息を!息をしてくれぇぇ」

「無理だ もうその体にもう魂は無い」

「どうにかしろ どうにかできないのかぁァァ」

「出来ん事はない」

「本当なのか?この娘を助ける事ができるんだな?」


 その話が本当なら不幸中の幸いだ。直ぐにでも使ってもらうぞ


「なら、すぐに対処をしてあげてくれ」

「できる だが魂の再召還さいしょうかんともなれば対価が必要になってくるのだ」

「俺に払えるものなら全て払う」

「そう 簡単に払えるものではないぞ。」


 ダメだ。また悪い癖が出そうになった


「取り敢えず対価を教えてくれ」

「うむ 対価は血と皮膚の細胞だ

 それが必要になってくる。やるならはやく決めないと魂が天昇してしまう」

「それを捧げるとどうなる」

「どうって?まぁ大層な事は無いが、麻酔無しの手術をここで行うということだ。痛みで精神が崩壊するかもしれん」


 そうなのか·····って大層すぎんだろ

 でもどうして血と細胞なんだろうか、悪魔でも召喚するのか?


「まずなぜ血と皮膚の細胞なんだ?まだ血と

 言うのは分かるが細胞?なにをする気だ」

「なぜかとは 魂を再びこの身体に戻すことも造作もない。しかし魂を戻す器がこんな状態

 では魂を戻しても苦痛を与えるだけになり

 またすぐに器から離れてしまう

 だから器を治すのに必要な対価なんだ」


 そういう事か···すぐにやってくれと言いたいのだが精神が崩壊する可能性があるのか

 救いたいのはやまやまなんだけどあと1歩が

 踏み出せない。耐えられる自信がない


「はよぉせぇ もう時間がないぞ!」

「ッツ 分かってる」


 決まらない···喉元まで答えがで掛かっているが、言い出せない


「もう限界だ答えをだせ」


 よし分かったやってやる。フゥ·····

 壁に向かって思いっきり頭をぶつけた


「な何をしておる!あぁ血迷ったか。やっぱりこの子の「はやく魔法を始めろォ」」

「ほら血も出て、1つ手間が省けたろ?だから頼む必ず救ってあげてく、、、れ」


 そのまま気を失い その場に倒れた。


「たく 無茶しおって、分かった必ずやその

 意気込みを無駄にせん」



「神々かみがみの恩恵を  我々に 恵を

  治癒の大いなる恩恵を 代償をもって 再復を謳い給え

 回帰再生<リフォロー・ターン・ヒーリング>」




「まさき まさき!ちょっとねぇ まさき」


 ん?誰だ?俺を読んでいるのわ


「何言ってんのよ、しっかりなさい」


 かっ母さん!?どうしているんだよ!

 どうしてここ·····に居るんだ····よ··うぅ

(やべぇ 涙が止まりません)


「うん まさき、頑張ったね本当に頑張ったね母さんはアンタはもう1人でも問題無いってことが分かって安心したよ」

 っとニッコリ笑いながり優しく言った


 いやいや まだまだ1人じゃ無理だよ

 目の前にいた子も救えなかった、挙句の果てには自分の体までも傷つけてしまった

 自分の手で·····自分が死んだら元も子もないのに


「全然いいのよ って言うことは親として

 間違っているのでしょうが、まさきの事は

 私達がなんと言おうと決めるのはまさき

 あなたなの。だからあなたが正しいと思ったらそれが正しいって母さんはおもうよ」


 母さんの言葉には暖かみあって、自分した事は間違っていなかったと思わせてくれた

 もうそれだけで俺はずっと楽になれた。

 母さん今まで言えなかったけど俺を産んで

 育ててくれてホントありがとう

 そして母さんの息子でホンットに良かった

 親不孝ものですがどうか許してください

 ありがとうホントありがとう


「うふふふっ 急にどうしたの?でもそんな風

 に思ってくれているだけでとても嬉しいよ

 親不孝ものなんて、そんなこと無いよ

 だって 生まれてきてくれた事がもう親孝行なんだから」


 いつも通りの暖かみのある笑顔で言ってくれた。

 その結果泣いた 結構な時間、永遠に

 みっともなく泣いた。

 でも母さんはずっと大丈夫大丈夫と聡してくれた


 ねえ母さん

「ん?どうしたの?」

 俺そろそろ行かなきゃならない気がするんだ

 行ってきてもいいかな?

「まさきが行きたいって思うなら行きなさい

 」

 分かった!じゃあそろそろ行くわ

 行ってきます!

「はーい いってらっしゃい」


 母さんは俺が学校に行くの時ように送り出してくれた。



 じわりじわりと体と1つ1つ繋がっていくのが分かる 感覚からそして嗅覚、視覚と鋭くなってくる。

 だがここであいつが言っていた事が分かる。

 なんだか体全てが猛烈に痛んでくる

 こう何だろうか、日焼けを限界以上にしたみたいな痛さあのピリピリと動かすと更に

 痛みが襲ってくるあの嫌らしい強い痛みが


「うぅっ がぁはぁっ うぅぅ」


 声も戻ってきた。うめき声だが

 でもガチで今それ所じゃない


「天使の慈悲を此処にあれ この者に治癒の慈悲を

《ヒーリング》」


 ん?誰の声だ?透き通るようで淑やかな声だけど力強さも伝わってくる、頭が痺れそうなくらいとても心地の良い声だった

 声の主を絶対に確認したかったので、目を全力でこじ開けようとする。


 開かない


 開かない


 開かない


 ちょっと開いた


 そこには天使がいた。というか女神

 はぁ俺は死んだのか·····

 そう思い、またも意識を失うまさきだった

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