第51話浮舟4

「ようやるなあ、匂宮は。昔のわしでもあそこまでは」


「東宮におなりかというお立場であられるのに」


「明石の血かもしれぬ、あの一途さは」





お二人の行く末を危ぶむ天空の源氏と柏木でした。





その日は事前に連絡がありましたので準備は万端


整っています。





前回の突然の訪れの時のように、


物忌みのための方違えと皆に心得させてあります。





川向うのお屋敷へと小雪舞う中、匂う宮と浮舟は


舟でこぎだします。





「橘の 小島の色は かはらじを


    この浮舟ぞ ゆくへしられぬ」





まる二日の間お二人は誰にも邪魔されずに愛の限りを


尽くされましたご様子です。





そののち薫の君から間もなく京へご引越しの準備が整


いますと連絡があり母君も大喜びしておられます。





ところがある日双方の使いの者が鉢合せをしてしまいました。


薫の君は疑いを起こして警備を厳重になさいます。





とうとう匂宮は山荘に近づくこともできません。


犬にも吠えられ這う這うの体で京へ戻られます。





姫様は匂宮との不倫が発覚した時のことを思うと


もう生きた心地が致しません。考えあぐね疲れ果てて


宇治川へ身を投げようと決心されました。

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