第49話 浮舟2

「まあこれはいったいどうしたこと!けしからぬではありませんか!」





「名を聞かぬうちは離さないよ」


そう言って匂宮は姫に寄り添いながら横になられました。





「なれなれしい。この方があの匂宮様だ」


と姫はお気づきになられました。





乳母は言いようもなく呆れ果てて、すぐそばに座り宮を


ものすごい形相で睨みつけておいでです。





宮は足の先で乳母をつついたり膝をつねったりしますが


乳母は梃子てこでも動きません。





そのうち女房達の声が聞こえます。


「中の君様がお帰りでーす」





女房の右近がこちらに近づいてきました。


乳母が突然大きな声で叫びます。





「ちょっとすみません!こちらで大変なことが起きていまーす!


私は見張り続けて困り果て身動きもできませーん!」





右近はそれを見て、


「まあなんてみだらなことを。中の君様に言いつけてまいります!」





そこへ宮中から急使が参りました。


「中宮様の胸の発作が起きました匂宮様、至急お帰りを」


と間近まで来て申します。





さすがの宮も姫を屏風の影に突き放し


しぶしぶお戻りになりました。





薫の君はあの姫君が匂宮邸にいることを知りましたが、


どうも母君がほかの隠れ家をお探しのようだと聞きます。





そしてとうとう薫の君はかなり強引にあの姫君を宇治の


新しい建物にお移しなさいました

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