Tale5.幸せだね、メアリー

 ねぇ、おじさん。わたしたちずっと一緒だよね?


 メアリーは、時々おじさんに訊きます。


 どうしたんだい、メアリー? そんなことを訊いて。


 おじさんは優しい微笑みを浮かべながら、メアリーに訊き返します。

 メアリーは、そんなおじさんの顔を見られるととても嬉しくて、でもドキドキしてしまうのです。もしおじさんと一緒にいられなくなったら、わたしはどうなっちゃうのかな、と。


 おじさんは、ずっとわたしと一緒だよね?

 一緒にいてくれるよね? そうだよね?


 何度も何度も、メアリーは問いかけます。

 おじさんは、メアリーの隣で寝ながら、そうだよ、と言ってくれます。優しく頭を撫でて、背中をさすって、それから強く抱きしめてくれます。


 そうだよ、メアリー。わたしたちはずっと一緒。

 メアリーが一緒にいたいって、思ってくれたら。

 それだけで、ずっと一緒にいられるんだよ?

 だから、安心しておやすみ。


 さぁ、もう悪い夢なんて全部忘れて。

 もう誰も、君を怖がらせたりしない。

 ここでは誰も、君を泣かせないから。

 わたしは、メアリーが大好きなんだ。

 だから、安心して夢を見ていいんだ。

 ずっと、わたしがついているからね。


 おじさんの優しい声が、メアリーの耳から身体中に回っていくのを感じます。メアリーはその声と、おじさんの温かさと、メアリーの中に感じる温かさでいっぱいになりながら、にっこり笑います。


 ありがとう、おじさん。

 あのね、おじさん。

 わたしは、おじさんに会えて嬉しかったよ。

 おじさんは、たっぷりわたしを好きでいてくれるから。

 おじさんは、わたしにあったかいご飯をくれるから。

 おじさんは、優しく笑ってくれるから。

 おじさんは、一緒に寝てくれるから。

 おじさんは、手を繋いでくれるから。

 おじさんは、あったかいから。


 ずっと一緒にいようね、おじさん。


 言ってから、メアリーは少し恥ずかしくなりました。でも、おじさんはとても優しい笑顔でメアリーを見つめています。そのにっこりした笑顔にまたちょっと恥ずかしくなったけど、メアリーはとても幸せな気持ちです。

 メアリーは、おじさんの目を閉じて、いつもおじさんがしてくれるようにそのおでこにキスをしました。


 おやすみ、おじさん。

 また明日も遊ぼうね。

 絶対に約束だからね?

 だいすきだよ。


 メアリーは、幸せな気持ちで目を閉じました……。




 行方不明になっていた少女、メアリー・グランディアが郊外の家で保護された。ジョン・ホワイトの自宅で監禁されていたとみられる。

 ジョンは既に死亡しており、彼の遺体の傍らで衰弱した状態で保護されたメアリーは、捜査員の質問に対して以上の証言を繰り返し述べている。精神鑑定の準備が、今も進められている。

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しあわせだね、メアリー。 遊月奈喩多 @vAN1-SHing

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