第6回 キャラクターを作る

 さて、今回はキャラクターの作り方を軽く書いていこうかと思います。


 皆さんもご存知の通り、ストーリーにおいてキャラクターは最も重要なファクターの一つです。キャラクターがいなければ物語は成り立ちません。


 当然ですが、自分の考えたキャラクターというものを皆さん何人かお持ちだと思います。ですがキャラクターの性格や行動がふらふらと定まらなかったり、どんなキャラなのか自分でもよく分かってないし、周りからはキャラの個性が薄いとよく言われる……なんてのが正直誰しも経験があるのではないでしょうか。


 では、どうすればキャラクターはしっかりとしたものになるのでしょうか?


 気付きにくいですが簡単なことで、役割と行動理念、そして登場から退場までの経緯が明確になっていないからです。キャラクターがストーリーにおいてどんな役割を担うのか、主人公にどんな影響を与えるのかをしっかりと考えずにキャラクターを量産してもかなり無個性な感じになります。まあはっきり言ってしまえばNPCですね。


 こういうことを書くと「レールの上に人物を置くとキャラが生きない!」みたいなことを言われることがあります。ですが何回も言っている様に、基本ができない人がそれ以上の事をしてもできる筈がないのです。料理でも、他の料理をレシピ通り作れない人が創作料理を作っても大した出来にならないでしょう? あれと一緒です。


 さて、話を戻しましょう。話の主題については既に説明しましたが、主人公は基本的にその主題に沿う様な役割を担う様にすればいいと思います。ヒロインはそれを支える役、主人公の友人、主人公と敵対するキャラ……という風にざっくりとした役割をしっかり決めると決めてない時よりは思い通りに動かせるようになります。


 ですがこのくらいの役割付けであれば誰でもやっていると思います。キャラクターをよりコントローラブルにする為には、行動理念も明確にする必要があります。


 そのキャラはどう考えて動くのか。これを明確にすれば、行動や思想が矛盾することはかなり減ります。最初の内、特に起の部分は主人公の行動理念が一貫していた方が分かり易いしやりやすいでしょう。話が長くなる場合は何かのイベントを機に一、二回修正されてもいいと思います。ティーンエイジャーならふらふらと考えが動き、大人なら一貫していると言った風に考え方を変えるとこれだけで個性にもなります。


 キャラの個性については、役割の他に『色』で考えてみるのもいいと思います。熱血キャラは『赤』、クールなキャラは『青』、明るい性格の子は『黄』といった具合にイメージカラーを作って色のイメージごとに性格や言動を差別化していけば他とは被らない個性的なキャラクターになります。


 先に考えた個性を受けて、最初に「このキャラは最初どんな性格なのか」と「最後にはどんな性格になるのか」を考えて、何故最後にそうなったのかという過程を細かく考えて行けばそれだけで中身のあるキャラになるかと思います。


 しかし話の大筋が決まっていないとできない作業なので、主題→世界観→大まかな話の流れ→設定→主人公→ヒロイン→メインキャラ→サブキャラ→細かい話の流れ→プロット→清書の順で作っていくとやりやすいです。話の流れと設定に合わせて微調整しながら、話の筋を壊さない様に中身を創りましょう。


 そして先程作成したキャラの中身を受けて、各キャラの登場から退場までの経緯を考えます。どこのシーンで登場して、どこのシーンが一番盛り上がって、どこで退場……一番分かり易いのは死ですが、どこで自分の課題を達成してケリを着けられるか、つまりそのキャラの『終わり』を考えます。


 あとは今までと同じように、登場からクライマックスまでの過程、クライマックスから退場までの過程をどんどん分割して考えていけばそれなりに個性的で厚みのあるキャラクターができます。あとはこのキャラクター達を物語という骨組みに入れれば、決して薄い話にはなりません。


 キャラクターが思い通り動かない理由は単純で、『思い通り動くように作ってないから』なんですよね。勝手に動くように作ってあるから、勝手に動いて話がブレたりキャラクターが薄くなったりするわけです。事前に各キャラクターの動きを初めから終わりまでを考えておけば後はそれに従うだけですから、勝手に動く筈は無いです。


 ストーリー重視の作品ではキャラの動きを細かく設定して、掛け合い重視の作品では性格を細かく作っておけば大丈夫かなとは思います。


 これを読んでいる人の中には「書く前にこんなに色々作らないといけないの!?」と思っている方が少なからずいると思います。そうですその通りです。こうした下準備があって初めてちゃんとした作品は書けます。


 キャラも設定も作らないで小説を書くなんて、私からしてみれば設計図無しで家を造る様なものです。主題を考えて、世界観を考えて、キャラや設定を考えて、構成を考えて初めて書けるようになります。


 一見すれば途方もない作業ですが、これは書きながら考える労力を前借りしているだけです。初めにきちんと考えてから書けばスラスラと書けるようになります。こうした段階をきちんと踏んでプロットの段にまでいけば、後は予め決めておいた構成の通りにまとめて一本に仕上げる作業しか残っていませんからね。


 ですがここで解説しているのは、どちらかと言えば新人賞やコンテストを狙っている人、小説の完成度を上げたいと思っている人、あるいはちゃんとした物語を人に読んで欲しいといった人に向けた解説なので、これを読んだ上で「俺(私)はストレス無く思ったまま書きたいんだよ!」と思っている人はそっとブラウザやアプリを閉じて忘れてください。


 さて、次からはとうとう本筋である『小説の書き方』について本格的に解説しようと思います。

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