【大音量推奨】サンタハンター vs サンタ

ちびまるフォイ

たたかえ!サンタクロース!

Q.ずいぶん朝早いんですね


「ええ、まあ。サンタハンターは朝がメインの時間ですから。

 イブにどれだけ準備ができたかで当日の動きが変わります」



Q.仕事をしてやりがいを感じる瞬間は?


「そりゃあ、サンタを仕留めて、持っていた袋を開くときですね。

 あの袋を開くときは童心にかえってわくわくしますから」



Q.全国のちびっこたちに一言


「みんな、中学生あたりから

 ちらほらプレゼントが届かなくなることがあるけど

 あれはね、おじさんがサンタを仕留めているからだよ」



サンタハンターは猟銃を持って冬の外へと繰り出した。


ホワイトクリスマス。

雪の降る視界不良の夜に舞う、真っ赤な飛行物体。


Sacrifice Ancient Neo Technical Annna


通称「サンタ」


サンタハンターは奴らの持っている背中のでかい袋を狙う。


「子供のころの夢を叶った仕事がこんなにもシビアだったなんてな」


ハンターは白い息を吐きながらつぶやいた。

サンタさんを捕まえてプレゼントをひとりじめ。


それをかなえるために資格を取り、銃の腕を磨き続けて数十年。


憧れの仕事についたのに、子供のころ憧れた華々しさはない。

ピンと張り詰めた緊張感だけがある。


「きた!!!」


深夜の夜空に高速でよぎる赤い服。サンタだ。

ハンターは猟銃をかまえて引き金を引いた。


 ・

 ・

 ・


「なにぃ!? プレゼント普及率が前年比より30%ダウン!?」


サンタ連盟のゴッド・サンタは世界に全然プレゼントがいきわたらない現状に怒った。


「ゴッドさん」

「タをつけろデコすけ」


「近年、ハンターの腕も上がってますし、デジタル技術の進歩により

 GoogleMAPでたちどころに位置も割り出されてしまうんです」


「最近ではドローンを導入して航空警備も万全なんですよ」


「我々もデジタル技術を取り入れるしかないですよ。

 いまどき、トナカイで飛んでいくなんてアナログすぎます」



「バカ野郎!! ジェット飛行機に乗ったサンタがやってきて嬉しいのか!?」


ゴッドは秘密のパスワードを入力し始めた。


「ゴッド、一体何を?」


「こんなことになると思って準備していたものがあるのだ」


サンタ連盟の共用トイレがせりあがると、中から武器庫が出てきた。


「こ、これは……!!」


「わしらもただ狩られているだけの獲物なのではない。

 こっちが逆にハンターを狩ってやるのだ」


「ゴッドさん……!」


「サンタの服が赤いわけがわかっただろう? いくぞ!!」


「「「 おう!! 」」」


サンタたちは武器を手に取り、クリスマスの闇の中へ消えていった。


ハンター対サンタ。

のちに「聖戦」と称される戦いはここから始まった。


「撃て撃て! ひるむなーー!

 わしらの背中には子供の夢がつまってるんだぞ!!」


空を舞うサンタ部隊と地上で待ち受けるハンターたち。


「うああ!」


「ミニスカサンター!!!」


「ごめんなさい……私は……もうだめです……」


「あれほどドンキのサンタ服を着るんじゃないと言ったのに……どうして!?」


「やす……かった……から……」


陸と空ではサンタのほうが有利。

そうハンターの技術を見誤っていたのはサンタの方だった。


いくら武装してきたとはいえ所詮は素人集団。


この日のために訓練を続けていたサンタハンターの手練れにとっては赤子同然。

むしろ、逃げ回っていたころよりも的にされてしまう。


「だめだ!! 勝てない! 退け! 退けーー!!!」


どんどん撃ち落とされる赤い服を見てすぐさま撤退した。

サンタ界に戻ってからも空気は重かった。


「ゴッド……どうしましょう。普通に配っても襲われる。

 武装して戦っても歯が立たないとなったら……」


「みんな聞いてくれ。大事な話がある」


いつになく真剣なゴッドの声に全サンタが姿勢を正す。


「サンタ連盟はこれにて解散する」


「なっ……! ゴッド、本気ですか!?

 いくら撃ち落とされたといっても、それじゃ子供たちはどうなるんですか!?」


「……」


「プレゼントを待っている子供たちは世界にいっぱいいるんですよ!?

 いくら撃ち落とされて数を減らしても届ける義務があります!」


「誰が諦めると言った」


「えっ?」


ゴッドは自分のサンタ服を脱いだ。強烈な赤いティーバックがまぶしい。


「サンタ連盟は解散する。だが我々の活動が終わったわけではない」


「どういうことですか……?」


「サンタはエージェントとして人々の日常に同化する。

 そして、クリスマスの当日にサンタへと舞い戻りプレゼントを届けるのだ」


「なるほど! それならハンターにも見つからないですね!」


「故にサンタ連盟は解散する。

 みな、クリスマスまでサンタであることを捨てて、

 普通の一般人となり日常に溶け込むのだ。解散!!」


ゴッドサンタの号令で全員がサンタ服を置いて去っていった。

世界にちりぢりになったサンタたちは、ハンターの目をかいくぐり、

クリスマスの日が来るまで静かに暮らしていくのだった。








「というのが、パパが今プレゼントを持ってきてた理由だよ」


「パパ……!!」



エンディング曲:スガシカオ「Progress」

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