第25話 蟇蛙

 鈴を鳴らせなかった邪神の前に、ついにこの土地の神が姿を現した!


「クトゥルー、クトゥルー、何やってるのら?」


「その声は、ツァトゥグアなのです」


 柱の陰から姿を現したのは、神々しい神などではない、悍ましく醜悪なヒキガエルのような寝間着を着込んだ、邪神ツァトゥグアだ!

 既に、神社に祀られた神でさえ、邪神に侵略されていたのだ!


「ツァトゥグアは、ここに住んでるのら」


「すごいのです。大きな家なのです」


「えっへん。部屋の中に案内するのら」


 邪神が神社の中へと案内されてしまう!

 ツァトゥグアが案内した先は床下だ!

 床下に潜り込む気なのだ!


「ツァトゥグアは、ここに住んでいるのら。冬眠にちょうどいいのら」


「床下はあったかいのです」


「うらやましいのです」


「貰った餅もあるのら、ツァトゥグアはお腹いっぱいなのら、クトゥルーが食べるのら」


「わーい、餅なのです」


「べたべたなのです」


「触手がくっついたのです」


 餅でべたべたになった触手が絡まる!

 触手で餅を食べるのは危険だったのだ!


「落ち着いて食べるのら。のどに詰まるのら」


 神聖な神社の下で、邪神たちの宴が行われていようなど、誰に想像できるだろうか!

 いや、知った所で、人類に抗う術は無いのだ。


「ツァトゥグアは、もう少し寝るのら」

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