第27話 刺客

 私は、春風楓子。

 自分で言うのもなんだけど、この世界で一番かわいい女の子よ。

 だけど、今日も元気に学校に向かう途中で奇妙な生き物にあったの……。


「やぁ、楓子。突然だけど、魔法少女になってよ」


(何この生き物! 虫みたいに足が沢山あって壁に張り付いてる……無視よ、無視に限るわ) 


「キシシ……待ってくれよ、君が魔法少女にならないと大変なんだ」


 速足で通り過ぎようとする楓子を奇妙な生き物が沢山の足を動かし追って来る。

 余りに物気持ち悪さに、走り出した楓子だったが、一瞬にして目の前に回り込まれた!


「何よ、今どうやって動いたのよ!」


「どうやってって、腹筋の蠕動運動に決まってるじゃないか。猫だからね。キシシ……」


「猫はそんな動きしないわよ。それだけ足があるのに、何で使わないのよ!」


「よく見てくれよ、これは20本とも足じゃなくて手なんだよ、ちゃんと長い指が付いているだろ?」


「余計きもいわよ! それだけの手を何に使うのよ」


「手は、ものを掴むために使うのさ。やれやれ、この世界の人間は、手の使い方も知らないのかい?」


「きもいだけじゃなくて、頭にも来る生き物ね」


「生き物って、ずいぶんガサツな呼び方をするね。僕の名前は、カタストロフィー、気軽にフィフィーって呼んでくれて構わないよ。……キシシ」


「物騒な名前に愛称つけてるんじゃないわよ」


「まぁ、それはいいとして、魔法少女になってもらうよ」


「いやよ! どうせ、役にも立たない魔法で、凶悪な敵と戦えとか無茶振りするんでしょ」


「その点は大丈夫さ。僕のは、超実戦的魔法少女だからね。どんな魔法を覚えても敵を殺す事に特化しているのさ」


「そんな夢も希望もない魔法は嫌よ!」


「しかし、楓子が魔法少女になってくれないと、この世界は邪神に侵略されて、僕たちの世界のように滅ぼされてしまうんだよ」


「何よそれ……」


「人間は気付かぬうちに、邪神に洗脳されてしまうのさ。君の友達も家族も、やがて、世界中の人間がね」


「でも、なんで私が……」


「その辺は、猫ゆえの気まぐれってやつだけどね。キシシ……」


 こうして、私は魔法少女になったの。

 魔法の国の猫フィフィ―と一緒に世界を邪神の侵略から守る、正義の魔法少女よ。

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ルルイエの遺書 海土竜 @mo-guri

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