第15話 闇に住まう者

 空間が揺れ動くほどの熱を噴き上げる漆黒の川を、白く輝く橋をつたって渡り、光さえも凍り付く暗黒の大地を越え、険しく切り立った崖を乗り越えて、その地へとたどり着いた。

 人類が踏み入れる事を想像さえしなかった場所、河川敷に!


「水も近くにあって便利なのです」


「屋根もあるのです」


 しかも、橋の下だ!


「ここに、新しい家を作るのです」


 邪神の侵略が始まった!

 河川敷のゴミどもは次々に始末され、廃材から使える部品を集めて、人類の技術、いや、想像力では到底作りえない建物を造り出していく。

 秘密基地なのに、壁はよく目立つピンク!

 侵略基地なのに、表札まである!

 そんな馬鹿な!

 私の頭がどうかしてしまったというのか!

 こんな秘密基地がある筈など無いのだ!


「クトゥルーの家なのです」


「ルル家なのです」


 だが、これは事実なのだ。

 我々の足の下。

 光の当たる薄い表皮一枚隔てて、深き闇の中には、邪神が棲まうのだ。

 地球の真の支配者足る邪神にとって、剥がれ落ちぬようしがみ付く人類など塵にも等しいのだ。

 そう……地球は既に侵略されていた。

 我々の知らぬ遥か昔から……。

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