第4話 供物

 空き瓶が捨てられずに、頭を抱えるクトゥルーの前に、ゴミ袋を持った謎の老人が現れた!


「お嬢ちゃん、ゴミを拾ってくれてるのかい? えらいね~。おや、空きビンかい?」


(変わった髪型の娘さんだな……外人さんかな?)


「何者なのです!」


「ゴミを持っているのです」


「枯れ木みたいなのです」


「ゴミは、処分するのです」


「わしは、この地域の清掃ボランティアをやってるんじゃよ。それは、お爺さんが捨てておくよ」


「ゴミを処分する仲間なのです」


「良いお爺さんなのです」


「森の神なのです。木で出来てるのです」


「枯れそうなのです! ビンに水を汲んで来るのです!」


「水は要らないよ。お茶があるからね。どれ、少し休憩しようかね」


「クトゥルーは、もっとゴミを処分できるのです」


「お爺さんは、さぼっているのです」


「小さくなったのです」


「枯れないように水をやるのです」


「いや、水はいいから……。おにぎりを食べるかい?」


「おお~、おにぎりなのです!」


 クトゥルーは、地球に来て初めての食料を手に入れた!

 触手で掲げて回り始めると、獲物をもてあそび苦しめ、四肢を引き裂く魔物のように、一つのおにぎりを四人で分けて食べた。


「おいしいのです」


「お爺さんを眷属にするのです」


「インスマウス人にするのです」


「ここに、シールを貼っておくのです」


「ん? シールを貼ってくれるのかい?」


「インスマウスシールを貼ると仲間なのです」


「そうかい、そうかい。ありがとうねぇ」


 老人が、邪神の犠牲になった。

 自らが邪神の眷属にされた事など、理解しないように笑顔を作る老人。

 邪神に抗う術など、人間にありはしないのだ。

 最早、彼は、人間として生きていくことは出来ない、邪神の眷属として暗く冷たい世界を彷徨わねばならないのだ!

 人類が滅亡するのも時間の問題だ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る