第30話 デスムーンていうとダサさが爆発する

 月の『塔』の完成のせいなのか、メルティとは違う、改良型というか少し強い奴が現れるようになった。普通の武器は全く効かなくなったぽい。砲弾やミサイルは貫通するし、レーザー光線とかはバリアでもあるかのようにレーザー側が避けてしまう。たぶんだけど完全に機装でないと倒せないヤツになってると予想された。


 梅雨に入る前なのにもう蒸し暑い6月、アメリカとロシアの大統領が会見を開いた。月まで機装唱女たちを送るための宇宙船(と言いつつでっかいミサイルやロケット)を複数完成させたという内容だった。

 さらに、塔や唱石の研究の成果として、機装用歌唱中継衛星が作られた。ひと月ほどの間に世界各国から打ち上げることになっている。塔の近くのように高出力が出せるようになるはずだ。表向きは、単純な音波の中継や増幅ということになってるけど、ちゃんと唱石の力を使っている。

 最後の衛星が無事に打ちあがったとき、月は完全に謎構造物に覆われていた。


 打ち上げの日の夜、運用が確認されて初めて、私への機装に関する制限は解除された。もちろん、月の建造物を壊すためだ。


 翌朝、ワイドショーがうるさかった。日本時間の朝の4時くらいに外装にTodesMondと書かれた謎の手紙が各国当てに届いたんだそうだ。うざいことに全文ドイツ語で書かれていて、映像を見ても、解説がないと意味が解らなかった。


『「あの」機装唱女三人を拘束して、白旗をかかげたスカイツリーに縛り付けておけ。期限は日本時間本日18時』


 昼の番組では世界各国の反応の紹介があり、インタビューを受けた街の人が呆れていた。ワイドショーでは、三人のうち先輩方はすぐわかるが残る一人は誰かというのも語られていた。ゲスト席の佐々木先生に迫る政治系の大学教授がいてほかのゲストが怖がっていた。その様子を私の横で見ていた空井さんが大爆笑していた。


 あの人たちに関係がありそうなのは、南極で基地爆誕に遭遇した私たちだと思う。明らかに、三人目は私だ。自分から言う気はゼロですけど。


 迷惑な手紙のせいで、明後日だった私と先輩たちの乗る宇宙船の打ち上げに待ったがかかった。明日にはロシアの宇宙センターのどれかに行かなきゃいけないのに、そのまま待機しろという指示が社長から下った。内閣府のばかー。

 打ち上げは、機装唱女三人ずつ実施される。そして、ロケットや宇宙船(という名目の、ロケットの先端)の調整のために、一度取りやめると最低でも一日ずつ伸びる。ちょうと私とマモルさんとカナデ先輩が打ち上がる予定だった。

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