第6話 アイツ、ほんとバカだからさー

 駐車場で寝転んだままの私を、戻ってきてくれた佐久間先生は見下ろしてる。一度かがんで私を起こそうと手をかけてくれたんだけど、通信が入って強く呼び戻されちゃった。ごめんね、と何度も頭を下げてから、ちょっとふらついた足取りで、車を止めた場所へ向かって走っていった。


 仕方なく一人で、ゆっくり体を起こそうとしてみる。ず、ずず、と砂利と舗装の音がして、腕をなんとか動かせてるのが分かる。少しずつ曲げて、地面を押そうとしたところで、誰かが私に覆いかぶさるように……


 私と同じ、白と青を基調とした同じ配色だけど、全然違う形をした機装。ぼさぼさで先がくるくるしたショートヘアが歩くのに合わせて、ふわん、ふわん、と揺れる。街灯のそばを通ると、オレンジに近いくらい赤毛だった。


「あ、あたしマモルっていうんだけど、ごめんね」


 何を謝ってるのか分からないから「別にいいですよー」と世間体全振りの返事をしておく。目の前には、これ私が男性だったらやばいよねっていう、たわわなモノがゆさゆさしよる。そうでなくても、お姫様抱っこは恥ずかしすぎてどうしたらいいのか。


 返事のテキトーさを見破ったのか、マモルさんは言った。


「ああ、あたしが謝りたいのは、あいつのことなの。」 


 マモルさんは笑うと可愛い。たぶんちゃんと明るいとこでみたら美人に違いない。


「アイツ、あたしのことになるとバカなんだもん。イノシシも横に逃げるレベルの猪突猛進。」


 はぁ、とため息をつくマモルさん。私は心の中で頷く。あんまりまだ付き合いないけどなんかやっぱりそのうん、カナデさんはそういう人なんだろうって納得したよ。


「あたしもこうやって晴れて機装唱女になったっていうのにさ、連絡もしたのに、あたしから色々なものを奪ったみたいに誤解したまま、こうやって後輩ちゃんをいびるし。」


 シールド解除まで、適当な屋根の上に飛び乗ったマモルさんが、傷口を拭いて、包帯代わりにハンカチで止血してくれた。その間、少しおしゃべりで紛らわす。もちろん聞かれても大丈夫なやつね。


 確認のためシールドの少し外まで行って、マモルさんは私を抱き上げ直した。機装で飛んで帰るから、こっちもしっかり捕まる。


「そんじゃ、今からでも、よろしくね、後輩ちゃん」


 ちゃんとアオイって名前があります!私は叫んだがマモルさんは研究所まで戻っても、完全スルーなのでした。

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