第11話 後華宮職

紫鳳国の後宮は後華宮コウカグウと呼ばれる。

娘子ジョウシという敬称で呼ばれる皇帝の正妃、皇后を筆頭として、他の妃嬪達は位の名前を姓につけて呼ばれ、位に応じて給金が与えられるのだ。

その妃嬪の中でもきさきとしてかしずかれて生活するのは、正一品の位に位置する四夫人の貴妃、淑妃、徳妃、賢妃と、正二品の位に位置する九嬪の昭儀ショウギ昭容ショウヨウ昭媛ショウエン、修儀、修容、修媛、充儀、充容、充媛である。その下の位に当たる妃嬪は宮官となり、妃嬪でありながらも働くことが求められる。そこには正三品の捷予ショウヨ、正四品の貴人キジン、正五品の才人サイジン二十七世婦ニジュウシチセイフと、正六品の宝林ホウリン、正七品の御女ギョジョ、正八品の采女サイジョ八十一御妻ハチジュウイチギョサイが当たる。それぞれの妃嬪は自分好みに生活する殿舎を飾ることで後華宮から出られないのを紛らわせている。また、皇后と四夫人にはその身分を表す花と色が与えられている。そのため、他の妃嬪達はその花と色の使用は避けなければならない不文律が存在する。皇后には蓮と国色で皇帝とそれに連なる人々しか身に付けることの許されない紫が、貴妃には葵と青が、淑妃には梅と紅が、徳妃には蘭と緑が、賢妃には菊と黄が下賜されている。

「…ということを知っていればある程度のことは対応できるでしょう」

凰琳は優しく答えた。

「なぜ妃嬪様の位階が異なるのです?」

「陛下のご寵愛の深さ、家格、御子がいらすか…などいくつかございます。一番大きな決め手は鳳城の縮図が後華宮と言われるように鳳城の権力を血縁が持っているかどうかでしょう」

そこで終業の鐘が鳴った。

「ここまでに致しましょう。わからないことはいつでもお聞きください」

こうして凰琳の講義は終わった。

夕日に照らされながら凰琳は自らが語っていた後華宮への門をくぐった。

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