エピソード6『ネット炎上とリアル炎上と――』

ネット炎上とリアル炎上と――

 4月20日、違法ARガジェットの密売者が逮捕されると言うニュースが拡散すると思われた。

しかし、別のアプリゲームの違法ツールを販売した人物が逮捕されたニュースが報道される。

これに関しては重要度を優先し、アプリゲームの方をニュースとして報道した――という建前が存在していた。

実際の所はアプリゲームの風評被害を拡散し、超有名アイドルが絶対である事を――という何時ものテンプレも拡散する。

【密売者のニュース、もみ消されたのか?】

【何処がもみ消す必要がある? ARゲーム運営がもみ消したとしたら、それはそれで大問題だ】

【噂によると、密売者が超有名アイドルのファンだと言う噂がある】

【つまり、芸能事務所側は風評被害を恐れてもみ消したと?】

【それこそあり得ない。日本経済は超有名アイドルが全部を掌握していると言うのか?

【超有名アイドルが日本経済を救ったという事も、赤字国債に関しても――それはフィクションの世界だろう。現実世界と混同してはいけない】

【ここまでの流れはテンプレか――】

 違法ARガジェットの件はネット上には出回っていたが、テレビのニュースで速報される事はなかった。

その理由を巡り、様々な憶測が出回るのだが――それらを信じようと言う勢力は少なかったと言う。

彼らにとって唯一の収穫があるとすれば――別の芸能事務所やアイドルの不祥事であると押し付ける、あるいはこれを利用して芸能界を改変する事を思いついた位だろうか。



 この日は、更にARゲームにとってもトータルバランスが崩壊するような事態が起きたと言う。

しかし、その一部はネタバレと言う名の情報規制でネットに拡散する事はなかった。

『こちらとしては、ネットに拡散や中継でもされると都合が悪すぎる――決着は刹那の――』

 何処の場所かは不明だが、青色のクリスタルをベースにしたSF系アーマーを装備したこの人物は――西雲響(にしぐも・ひびき)だった。

目の前にいたのはアイドル投資家勢力とは自称しているが、実際はフジョシや夢小説勢と言う可能性が高い。

彼らが使用していたガジェットはチート技術が使われていた為、西雲との戦闘では機能しなかった。

ARゲームとしてスタートしていたバトルも、まさかの幕切れをしていたのである。

『刹那の一撃で決まると思われたが、一撃以前の決着となったか』

 西雲はARアーマーのフルパワーを解放し、常識を超えるようなパワーを発動させたのである。

ネット上ではブーストとも言われているが、それを別の単語で言及していたのは、意外な事にも――。

「アカシックレコードへのフルアクセス――!! まさか、こちらの想定外とも言える事案が?」

 ネット上のまとめサイト削除に動いていた明石零(あかし・ぜろ)だったが、ここで思わぬ衝撃を受ける事になった。

フルアクセスを行えば、その反動は計り知れないともネット上で言われており、アカシックレコードのサイトでもフルアクセスを使い続ければ――と警告されている。

「スケジュールを――前倒しして、あの勢力には退場してもらうか」

 明石は慌てて何かを検索し、その場所をARガジェットに記憶させていく。

その場所は草加市だけでなく足立区内の一部も該当しているが、それが何を示しているのかは分かっていない。



 4月21日、ネット炎上を招きかねなかった事件は予想外の展開で解決する事になる。

それは、チートガジェットの使用者がアイドル投資家だったからだ。

何故に今回の事件が起きたのかは、まだ調査する段階ではあるのだが――。

「この解決速度はおかしい。ビスマルクの仕業なのか?」

 ARガーディアンの一人が、事件の解決速度に関して疑問を持っていた。

警察の介入、防衛隊が招集された訳でもない。だからと言って、特撮ヒーローが現れた訳でもない。

確かにARゲームには特撮ヒーローもののゲームも存在し、そちらでもネット炎上案件が存在するのは事実だ。

それを差し引いても、解決速度が異常だったのである。別勢力がついでに片づけたという理由でも、無理があり過ぎる速度――。

「アカシックレコードのフルアクセスか――やってくれる」

 今回の件をアカシックレコードのフルアクセスと分かり、慌てていたのは比叡(ひえい)アスカだった。

彼女としても、今回の一件は放置できない物であり、邪魔になるようであれば他の勢力を片づけるつもりだったのである。

「ARゲームの環境を、何としても――」

 しかし、比叡は何かの疑問を持っていた。

本当にARゲームの環境を改善する為に、炎上マーケティングを根絶すれば解決するのか?



 午前10時、謎の呼びかけに答えたアイドル投資家は集中的に特定人物を狙う。

『貴様たちの行っている事は、テロリストと同類――そう思わないのか?』

 メイド服に大型バックパック、脚部にはクリスタルが特徴的なARアーマーという周囲が恐れる外見の人物がいた。

彼女の顔はARメットが隠している。メットの形状も特殊だが、バイザーも特殊な形状をしていた。おそらくはワンオフだったものを更にカスタマイズした可能性も高い。

本来であれば、ARメットでも顔が薄くでも見えるはずなのだが――彼女のメットはマジックミラー形式である。

このカスタマイズは違法ではない。ただし、銀行などのフルフェイスが禁止の場所では使用できないのだが――彼女にとっては問題ではない。

「我々はテロリストとは違う」

「ARゲームで人命を奪う行為やデスゲームが禁止されているのは、貴様も知らない訳ではあるまい!」

「むしろ、貴様の様な場を荒らしていくような勢力こそが――」

 メイド服の人物を取り囲むのは、サバゲで見かけるような重武装兵のモブ達である。

そのリーダー格も肩アーマーが赤色をしているが――どう考えてもフラグなのは明らかだろうか。

持っている銃火器は、明らかに特殊な物であり、下手をすれば違法ガジェットとも言えなくもない。

『黙れ! フィールドを荒らす存在、違法ガジェットにも手を染めるような連中を放置する訳が――』

 メイド服の人物は背中のバックパックに装着された2つのウイングを分離、そのウイングは合体する事でブーメランへと変化した。

そして、そのブーメランが蒼い光を放ち始め、周囲を囲んでいる重武装兵に向けて勢いよく投げつける。

「貴様――ゲームのルールを無視するのか?」

 自分の方向へと飛んできたブーメランを撃ち落とそうとマシンガンで迎撃をするのだが、ブーメランの勢いが削られる事はなかった。

そして、ブーメランが周囲の重武装兵を次々と吹き飛ばし、気絶させていく。

『違法なガジェットやチートツールに手を染めた段階で、ゲームのルールを無視しているとは自覚しないのか? イースポーツ化が進む中で貴様たちがやっている事は――』

 ブーメランが戻ってくるのと同時にキャッチ――ではなく2つのウイングに分離、その後はバックパックと合体する。

どうやら、バックパックのウイングがブーメランとしても使用出来るガジェットらしい。

そして、彼女は周囲を確認して他の敵がいない事を確認する。

《作戦終了》

 ARバイザーに表示されたメッセージを見て、彼女はほっと一息をついた。

『――CDランキングで超有名アイドルがやっているようなグレーゾーンのブーストと変わりない。重要なのは1位と言う結果に囚われれば、1位を取る為に何をしてもよい訳ではない』

 彼女の正体が飛龍丸(ひりゅうまる)と重武装兵が気付いたのは、ネット上で撃破報告がアップされてから1時間後だったという。

しかし、他の勢力が気づく頃には、さまざまな勢力が炎上マーケティングを行う勢力に対し、大規模な作戦を展開していたのだが。



 午前10時30分、速報として飛龍丸(ひりゅうまる)の一件が拡散されたのだが、その反応は意外なものばかりだった。

【アイドル投資家の陰謀というか、まとめサイトの誘導じゃないのか?】

【芸能事務所側が破産しかけているので、アフィリエイトで稼ごうと言う魂胆だろう】

【アフィリエイトで稼いだとしても、すぐに現金が入る訳ではない。だとすれば、何が狙いなのか?】

【風評被害が目的じゃないのか?】

【ARゲームガーディアンの動きが俊敏と言う事もあり、ここの所は風評被害がないと聞く】

【彼らは何をしようとしているのか?】

 ネット上のつぶやきは相変わらずであるのだが、それでも炎上を誘発するような過激な発言はなく、これもガーディアンの対応による所があるのだろうか?

しかし、過激な発言がないのは一部の該当アカウントが凍結されているからとする情報も存在している。

実際、数日前に大量のアカウントが削除あるいは凍結された一件はニュースにも取り上げられるほどであり――。



 午前10時35分、アンテナショップで有名プレイヤーの来店を待っていた人物がいる。

それはガーディアンの制服を着ている人物で、名前を阿賀野(あがの)と言う。名前はアカシックレコードにも似たような人物がいるのだが、偶然の一致だろうか。

黒髪のロングヘアーだが、特徴的な体格でもない為に地味と言われそうな予感もする。

彼女が有名プレイヤーが来るのを待っていたのには理由があり、一連の超有名アイドル投資家の情報を得るためだ。

ネット上にも情報があるのだが、トラップと言う可能性も否定できない為――こうしたアナログな手段を取っている。

しかし、20分経過した所で何人かのプレイヤーを発見して情報を聞き出したが、想定していた人物は現れず、その部分に関しては不発に終わった。

「あのガーディアンは見ない顔だな。もしかすると、アイドル投資家の――」

 阿賀野の姿を見て、投資家サイドのスパイという説を考えたのは、何時もの白衣姿の大和朱音(やまと・あかね)である。

しかし、ガーディアンの人物でスパイ疑惑のある人物は既に何名かを確保していた。

その大半が男性であり、フジョシ勢力や夢小説勢を利用してARゲームの評判を落とそうとしていたのは明らかだろう。

どういう手段を使って落とそうとしたのかは伏せられているが、おそらくは実在プレイヤーを題材とした夢小説、あるいは――。



 午前10時40分、阿賀野が訪れていた場所と別の草加市内のアンテナショップ――そこには比叡(ひえい)アスカの姿もあった。

阿賀野に関しては向かうアンテナショップを間違えたという可能性もあるが、他にもガーディアンメンバーが潜入捜査をしているので、その部分には問題はない。

「ガーディアンが動いた理由は、大体察する事は出来るが――」

 比叡はこれからパワードミュージックをプレイする所だったが、下手にガーディアンと接触すれば迂闊な事をしゃべりかねない。

そうした観点から、意図的にガーディアンとの接触は避けていた。同じような行動をしている人物は比叡に限った話ではないのだが。

それに、比叡はアカシックレコードの一件も――。

「大きな事件の予感か――」

 周囲を見回せば、ガーディアンばかりと言う訳ではないが、赤の他人と目を合わせると危険なので視線はタブレット端末で隠す。

しかし、比叡の行動は逆に他のプレイヤーの注目を浴びるような展開になるのでは――と言う事で、すぐに視線は元に戻した。

実際に比叡の怪しい行動にツッコミを入れるようなプレイヤーはいなかったので、この辺りは余計な集中力を使ってしまったのかもしれない。

「一つの勢力を根絶したとしても、別の勢力が同じような事件を起こせば――同じことの繰り返しじゃないのか」

 比叡は思う。過去に同じような事を見た事がある彼女にとって、今回の襲撃者事件はデジャブその物だった。

その一方で、彼女は超有名アイドル勢力を炎上させた勢力に覚えがある――と言っても、それは今回より以前の話だが。

しかし、一部の事件はアカシックレコードにも記載がなく、ネタバレと言う名の情報規制が過剰にされている訳でもない。

何故、この事件だけが触れられていないのか――その理由として、事件に触れるのを意図的に避けているとしか思えないからだ。

意図して避けている理由は、ARゲームのプレイヤーがスルーし続けているのも原因だが、その詳細はネットでもリアルでも不明と言う物だった。

「ガーディアンも事件に関して触れていない以上――」

 結局、比叡はパワードミュージックをプレイする事無く、別のARゲームに関する電子パンフレットなどをダウンロードして帰って行った。

当然のことだが、ガーディアンが比叡を発見して情報を聞き出す事は出来なかったという。



 足立区に一番近い気配のする場所にもアンテナショップがある。

そのアンテナショップでは、最近になってパワードミュージックを導入したという話だ。

しかし、それでも新規プレイヤーが集まっているかと言われると疑問が残るだろう。

プレイヤーが集まるのは間違いないが、そのほとんどが草加市の方でエントリーを終えたプレイヤーばかりだからだ。

「うーむ、パワードミュージックだけでは新規ユーザーを集めるのは難しいか」

 このアンテナショップを仕切るリーダーは、導入する機種に関して悩んでいた。

AR対戦格闘をメインにしていたのだが、ここ最近ではARリズムゲームが人気になっており、格ゲーの方が下火気味になっている。

イースポーツで人気があると言っても、それはARではなくゲーセンに置かれているような対戦格闘がメインだろう。

「しかし、こちらはARゲームの特区と言う訳でもない。資金援助が得られる訳ではない以上は――厳しいかもしれない」

 足立区ではARゲーム特区だったり草加市のように町おこしでARゲームを盛り上げようという事もない為、この辺りは様々な大人の事情も発生する。

ちなみに、足立区では超有名アイドル等で町おこしをしようとしている訳でもなく、特にそう言う流れは足立区全体では聞かれない。

個別であれば――聖地巡礼等の事例もあるかもしれないが、あまり大きく取り上げられないのが現状だろう。

「ネット上で人気があるからと言って、それが人気があると限らないのは超有名アイドルでも分かり切っている話だ。稼働してから一カ月も経過していない以上、様子を見るか」

 現状では稼働してから一カ月も経過している訳でもない為、様子を見た方が良いと判断した。

足立区内で取り扱う店舗が増えれば、この状況は変わるのかもしれないが。

「下手に導入して、ネットを炎上させては――客足も鈍るだろう」

 ショップリーダーは、スタッフに突っ込まれるであろう一件に関して、ある程度は知っている。

パワードミュージックで起きているネット炎上、それはショップ側でも導入を見送りさせるような勢いになっていた。

まさにネット炎上がリアルで風評被害を生み出し、コンテンツ流通に障害を起こしている証拠でもある。

そして、最終的には超有名アイドルが宣伝を行っている機種を導入し、芸能事務所側から裏金を受け取るような構図――。

それも炎上する理由なのではないか、ともスタッフは考えているが――発言力の弱いスタッフでは、ショップリーダーに訴えるのは難しいだろう。



 午前10時50分、アイドル投資家事件は思わぬ所で決着する事になった。

しかし、その顛末はネット上で拡散する事はなく――わずかな勢力によって闇に封印されたと言ってもいいような状況である。

この解決方法に関して、ガーディアンは遺憾の意を述べた。警察が強制介入し、解決した物ではないのはニュースで報道されていない事から判明している。

一体、誰が何のために強制的な決着を付けたのか――この段階では誰にも分からない。

「まさか、先手を打たれるとは――」

 この現場を一足遅い状態で発見したのは、改造軍服姿のビスマルクである。

彼女もアイドル投資家の事件に関しては怪しいと思う個所があり、独自調査をしていたのだが――後手に回った格好だ。

周囲を見回しても証拠となりそうな物は落ちておらず、道路に亀裂や穴があいている訳でもない。

実際、アスファルトの道路をARガジェットで破壊しようと言うのであれば、それは建造物破壊に該当し、ガジェットの没収もあり得る事案なのだが。

それに加えて、投資家の人物が倒れている姿もない。既に逮捕された後なのか、それとも――逃走中なのか?

ARゲームをプレイ中であれば、ARガジェットで逆探知などを行う事も可能だろう。ただし、一部ジャンルに限る手段だが。

「一体、誰が指示をしているのか――」

 周囲に何かある可能性を信じ、ARバイザーの高性能レーダーを展開するのだが、そちらにも引っかかるような反応はない。

反応があっても、別のフィールドでARゲームをしているプレイヤーの反応のみである。

そう簡単に犯人が見つかるはずもないだろう。チートプレイヤーであれば、反応を消す位は余裕かもしれない。



 午前10時52分、アイドル投資家事件に関して疑問を持っていた人物は更に一人いた。

「これが、ネット上で都市伝説と言われていた新日常――」

 アイドル投資家事件に関してはテレビのニュースで見た訳ではなく、ネットのつぶやきサイトで偶然拾った物である。

タブレット端末に表示されたタイムライン、それは極秘裏にやり取りされているようなネタバレ情報と言える物だった。

その内容を見て衝撃を受けていたのは、メイド服姿のローマだった。

今回はツインテールではなく、セミショートに近い髪型だが――ぽっちゃり気味の体格にメイド服は変わらないので、周囲からは目立っている。

「ARゲームを町おこしにと考えている日常に対し、超有名アイドルの野望に対抗しようと言う非日常――」

 一連のタイムラインを眺めていたローマは、とある結論に到達する事になる。

ネット神が逮捕された事で、秘密にされていた情報はネタバレと書きかえられ、大量に拡散する事になった。

何故にネタバレと言う単語が使われたのかは不明だが、それが魔法の単語と思っているような人間が拡散でもしたのだろう。

その情報の中には、今の段階で知られれば大パニックは避けられないクラスの機密情報等も存在する。

それらを拡散させないようにガーディアンが動いている事はローマも把握済みな一方、アイドル投資家事件がそれに該当するとは全く気付かなかった。

「もしも、それらにデスゲーム的な要素が加えられたとしたら、日本は一瞬にして血の海と――」

 ローマは何としても懸念する最悪の展開を避けるべきと考えるのだが、どうすれば回避できるのか?

結局は現段階で自分に出来る事も限られており、それをギャラリーとして観戦することしかできないだろう。

それが分かったローマは、現状では様子見するしか出来なかったのである。

「これが、ネット上でも都市伝説とされていたリアル炎上とでもいうのか?」

 ローマは頭を抱え、苦悩していた。ネット上でもリアルで炎上するとは考えておらず、遊び半分でネット炎上をさせようと言う人間もいるのだろう。

しかし、一部勢力は今回のネット炎上が、リアルの日本で首都炎上という非常事態に発展するのでは――そう懸念していたのだ。

実際にネット上の動画で警告をしていたビスマルクも、そんな事を言っていたのかもしれない。

アカシックレコードにもチート等を使用したリアル炎上は、世界を滅亡させるだけの力が存在するとも書かれていた。



 午前10時55分、比叡(ひえい)アスカは――あるデータを発見した。

発見と言うよりは、偶然展示していた電子書籍で見つけたのだが。

「太陽光発電を更に進化させたエネルギー、それがソーラーフォース――」

 比叡が見ていた電子書籍は、株式投資の本である。

何故、このような本を見ていたのかと言うと、それはアイドル投資家の一件があった。

「ARゲームに使用されているARアーマー、バックパックユニットにはソーラーフォースが――実装されている?」

 更に驚く記述を比叡は発見する。それは、太陽光発電システムがARゲームには実装されているというのだ。

アンテナショップ、ARゲーム専用施設、ARガジェットにも使用されているソーラーフォースは、次期エネルギー問題を解決できる程のシステムを持っていると言う。

日本では火力発電と言う物が存在していたが、次第に施設が老朽化して言った事で原子力にシフトしたと言う。

しかし、原子力もある年代を境にして廃炉を決めたのだと言う話があった。その後に導入したのが太陽光と『とある発電手段』だったと言うが――。

その詳細は一切明記されていない。それでも信用する理由として、ソーラーフォースの存在がARゲームの電力消費問題を解消していた事にある。

このシステムがなければ、ARゲームを起動するのに莫大なエネルギーを消費する事が議論された事があった。

そして、草加市をエネルギー消費が多い市にする事を回避する為に開発されたのがソーラーフォースとも言われている。

「草加市の風力発電施設、太陽光発電施設は――周辺エリアに電気を売っているという話があったが、それも――」

 草加市の自家発電能力は100%に近い物を持っていた。それに加え、周辺の埼玉県内の自家発電能力も上昇している情報もあった。

家庭用太陽光発電も普及率が50%を超えているのを踏まえると――。

「この資金が――それは考え過ぎか」

 比叡はエネルギー関係の利益を何処かへ投資しているのではないか、とも考えた。

しかし、それは考え過ぎであるのと同時にアカシックレコードのシナリオ通りになる可能性もあったのである。



 午前11時、ワイドショーが早速アイドル投資家事件に関して触れ始めた。

しかし、大体が投資家グループの逮捕や数日前のインサイダー取引までしか取り上げておらず、メインであると思われる違法ARガジェットは未言及。

周囲がARガジェットに関して取り上げない理由として、芸能事務所側がARゲームをタイアップに利用する為、あえて言及させないとしているのか――。

ネット上の反応は、さまざまであるが――当てには出来ないとする反応が相次いだ。

その根拠に関しては不明だが、あまりにもあっという間に解決したのが逆に不気味だと言う反応が多いのも――反応を当てに出来ないという意見が多い理由の一つだろう。

【事件の解決が早すぎる】

【まるで、次のステージには超有名アイドルが不要と言う様な切り捨て方だ】

【政府も超有名アイドルに莫大な投資をしていたと聞く。どちらにしてもブーメランと言うべきか】

【超有名アイドル自体が、オンラインゲームにおける外部ツールや不正チートなのはアカシックレコードでも言われていた】

【結局は――繰り返すという事か】

 事件のスピード解決は、超有名アイドルに対しての風評被害と別の事件への序章だと言うつぶやきが多かった。

次の事件が何を示すのかは憶測ばかりで当てにならない可能性が大きいのだが。

「やはり、このスピード解決はおかしいとしか思えない」

 ガーディアンでも下の人間である磯風(いそかぜ)には、スピード解決の情報が伝わっていなかった。

ネット上のまとめサイトでも、一部記述が歪められている等の関係で真実には程遠い。

それに、アカシックレコードと言う単語も拡散しつつあり、それがカギを握っている可能性さえネット上では有名になりつつあった。



 午前11時10分、比叡(ひえい)アスカはソーラーフォースのブラックボックス判明を後回しにした。

今は、こちらよりも重要な事がある――と判断したためである。

タブレット端末で株式市場に関係するサイトを開いていたブラウザを閉じ、別のブラウザをたち上げ直す。

その重要な事とは――ARゲームではない別のゲームに関係する一件だった。

「リズムゲームの状況は、どうなっているのか――」

 比叡が調べていたのは風のうわさで聞いたリズムゲームの近況である。

ARリズムゲームではなく、それ以外の機種――一般的な機種の事だ。少し前には比叡の参戦で状況が一変したとも言われていたのだが――。

「これは、一体どういう事だ――?」

 オリジナル楽曲をメインとした機種では、さほど楽曲ラインナップが変わっている訳ではない。

問題はライセンス曲を扱っている機種だ。何と、超有名アイドルの楽曲が一気に増えていた。

リズムゲームの場合、楽曲の追加は機種ごとなのでアップデートされれば全国の同機種で同じ楽曲がプレイできるようになる。

例外として一部の国で収録見送りの曲は、その国の筺体ではプレイ出来ない。こうした事例は例外中の例外だ。

草加市でも例外中の例外として超有名アイドルの楽曲を収録しないという選択肢もあったのだろうが――。

この状況になったのは、比叡がARゲームを初めて少し経過した辺り。おそらくは、事前に仕組まれていた可能性も否定できないが、詳細は不明である。

「こちらが不在の間に、やってくれる!」

 比叡は思わずテーブルを思いっきり叩きそうな勢いで激怒していたが――物に八つ当たりをしても、意味はないだろう。

それを百も承知の上で――今回の一件をある陰謀が関係していると考えた。

それはアイドル投資家と似たような勢力によるコンテンツ流通の完全支配――自分達の都合だけでコンテンツの流通を行おうと言うのである。

「ここは戻るべきなのか、それとも――」

 比叡は本来のフィールドへ戻るべきか、パワードミュージックに残留するかを悩む。

今の状況下でプレイしたとしてもオールラウンダーとして動ける程のスキルを持っている訳でも、資金的な部分で両方プレイ出来る訳でもない。

その為、現状ではパワードミュージックを優先する事にする。止む得ない判断だが、資金的な状況が改善する手段がない限りは――。

資金が回復したとしても、複数の機種を並行プレイするのは至難の業とも言えるだろう。

特にリズムゲーム特有のイベントを追うのであれば――。

「比叡アスカ――」

 比叡が遭遇した人物、それは提督服姿のガーディアンだった。帽子を深く被っていた為に視線は確認出来ず――。

「ガーディアンが何の用なの?」

「こちらとしては特に用がある訳ではない。偶然はち合わせただけだ」

「偶然? その割には、アンテナショップをピンポイントで発見して来店したようにも――」

「アンテナショップの身回りはガーディアンでも定期的に行われる。ピンポイント来店という意図はない――ショップに違法性があれば、ピンポイントで強制捜査はあり得るが」

 比叡はガーディアンがピンポイントで比叡に接触しようとしたのでは――と考えた。

しかし、ガーディアンはピンポイント来店を否定、アンテナショップの視察は不定期に行われるので、そこと重なったという言い訳で切り返される。

「一連のトータルバランス崩壊は――」

「その事件、何処で聞いた?」

 比叡がある事を聞こうとした際、ガーディアンは慌てているような表情を見せた。

しかし、帽子を脱ぐ事はなかったので素顔は分からなかったが――。

「どちらにしても、急ぐ必要性があるのか――」

 ガーディアンの人物は、早歩きでアンテナショップを後にする。一体、彼らは何を隠しているのか。

真相が仮に分かったとしても、その詳細はネット上でも確認出来ない為、犯人に直接聞かなければ分からない可能性が高い。

「ARゲームはゲームであり、個人の主義主張等の押しつけやプロパガンダに悪用されるべきではない――と」

 ガーディアンが姿を消した頃、比叡は現状のARゲームで起こっている事件に対し、ふと考える部分があった。

芸能事務所のプロパガンダにARゲームが悪用され、炎上マーケティングが展開されているのは放置するわけにはいかないだろう。

これは、アカシックレコードにも書かれているのだが――これが全体の意見と言う訳ではない。

アカシックレコードに関しては、あくまでもフィクションの集合体と考えるべきである、そんな意見が大半と言ってもいいだろうか。



 午前11時15分、アンテナショップを見回していたのは明石零(あかし・ぜろ)である。

別のARゲームも体験したのだが、こちらの方はスコアがいまいちだったので、やはりパワードミュージックが合うのではないか、と考えていた。

「エントリーであれば、こちらのデータが必要になりますが――」

 男性スタッフの指示でデータを入力していく明石だが、彼女が特に喋る事はなかった。

必要な部分は答える一方で、不必要なトークなどは控えるような流れである。

これに関してはスタッフも特に突っ込む様子はなかったと言うが――。

「スーツの方はどうしますか?」

 男性スタッフがスーツに関して尋ねると、明石はタブレット端末をスタッフに見せて自前で用意している事を示すのだが――。

「そのスーツではパワードミュージックは非対応ですので、新規で購入する必要性がありますね」

「止むを得ないか――では、システムの仕様に関してはそちらにお任せしましょう」

 明石の方もスーツが非対応と聞き、ここはさすがに応対しなくては――と言う事で身振り手振りも駆使してスタッフに説明する。

「なるほど。ARメットをうまく対応できる物ですか」

「全体を覆うタイプでもかまわないが、この方が全方位をフォローしやすい」

「しかし、パワードミュージックではカメラ内蔵型ドローンは飛ばせません。一種のチートとまではいきませんが、持ち込み禁止ガジェットなので」

「ARガジェットも変更する必要性があるのか? ガジェットに関してはワンオフを必須とするのはジャンルが限られると聞いている」

「確かに、ワンオフ型ARガジェットを必須とするARゲームは少ないですね」

「では、こういう形状の物は用意できないのか?」

 愛用のARガジェットはカメラ内蔵型のドローンと言う変わり種のARガジェット。これによって全方位をフォローできるという物である。

しかし、それでもチャフグレネードの影響を受ける、ドローンの起動時を狙われ易い等の欠点もあり、万人向けではないだろう。

そこでスタッフから勧められたのは、有線タイプのブレードガジェットだが、それよりも明石が興味を持ったのは別のガジェットである。

その形状とは、リズムゲームのコントローラをベースにしているのは必須だが――チェーンソーブレードという珍しいタイプの武器だった。

「チェーンソーブレードですか――。それはARガジェットの中でも複雑な物、あまり初心者に薦められる物じゃありません」

 スタッフの方は、明石が該当ガジェットを選んだ事に対して困惑している。

試作型ガジェットであればショップには置かないので、それを踏まえると――。



 その様子を何か怪しんでいた人物がいた。既に数ゲームプレイしただけだが、上位のランカーに迫るスコアを叩きだしている人物――。

それは、何と島風朱音(しまかぜ・あかね)だったのである。

彼女はインナースーツ姿で次のフィールドへと向かう途中で明石の光景を目撃していた。

「あれは――」

 島風もスルーしようと思ったのだが、あまりにも身振り手振りがオーバーリアクションだったので、気になってしまったらしい。

さすがに受付でギャラリーが出来るような光景も――と思われるが、気になっていたのは島風一人だけのようだ。

「まさか、彼女が明石?」

 髪型と見覚えがあるようなガジェット、それにスク水を思わせるインナースーツ――彼女が持ち込みでもめているとすれば、あのドローンガジェットだろう。

「あのドローンガジェットを持ちこまれたら、リズムゲームが作業ゲーになっちゃうじゃない」

 島風の方は、明石が持ち込もうとしていたドローンガジェットを知っていた。ネットの噂ではなく、実物を見覚えがあるのだ。

その能力はリズムゲームで使われたら、それこそ理論値を量産される危険性も否定できない。

使い方を間違えれば演奏ミスを連続する可能性も高いので、諸刃の剣とも言えなくはないが――。

「それでも、ARガジェットのタイプによっては使用不能の作品もあるはず」

 AR格ゲーでARFPSで使う様なスナイパーライフル系が禁止、ARレースゲームではターボユニット付きのブースターが禁止と言うように、そのジャンルではチートであるガジェットを禁止しているケースがある。

ARパルクールでは特に禁止されているガジェットはないのだが、大量破壊系武装は禁止されているはずだ。

しかし、パワードミュージックはARパルクールではなく、リズムゲームのカテゴリーである。

それを踏まえれば、ドローンやビット系列の遠隔操作系は禁止されているだろう――そう考えたのだ。



 午前11時30分、試着室と言う名のコンテナルームから出てきたのは明石零(あかし・ぜろ)なのだが――。

装備しているアーマーは、シューティング系ARゲームで使用している物とは全く異なる物だった。

両肩にはシールド機能も備えたブレードビット、背中は大型ブースターとも判断されそうなバックパック――。

脚部は最低限のアーマーのみ、ボディもスクール水着を思わせるインナーを強調する為か、アーマーは装着されていない。

逆に言えば巨乳を強調する為にスク水インナーを着用している疑惑もあるだろうか。

「振り心地は――悪くない」

 明石が右手に握っていた物、それはARガジェットなのだが――その形状はチェーンソーブレードを思わせる。

チェーンソー部分はビーム刃なのだが、それ以外の部分は実体貸しているような気配を感じる程の重量武器だ。

しかし、実際は重量が5キロにも満たないと言う。100キロの鉄塊を思わせる武器、全長2メートル以上のスナイパーライフル、更には大型のパワードアーム――。

そう言った物も、ARゲームではすべて拡張現実として扱われ、高度な技術で作られたCGとして表示される。

ARバイザーを装備していない物からすれば――何も見る事が出来ないので、面白味も何もないのだが。

それが、ある人物の残した『ARゲームはゲームであり、プロパガンダ等に悪用されるべきではない』に通じるのかもしれない。



 午前11時35分、明石がプレイし始めていたのはチュートリアルモードだった。

彼女の場合は複数のARゲームをプレイ済だが、パワードミュージックの様なシステムのリズムゲームは初めてである。

「この感覚は――VRともARとも違う感覚か」

 明石はプレイ中の挙動がVRゲームとは違い、更には同じARゲームでも若干違うと考えていた。

『――出現するプレートを曲のリズムに合わせ、ARガジェットで演奏をしていきます』

 ヘッドフォンから聞こえるシステムナレーションを確認し、手持ちのチェーンソーブレードで目の前に現れた白い壁を斬り裂く。

しかし、演出エフェクトは出現せず、バイザーにはエラーと表示された。

アクション系では、特にクリティカルと判定されるよりも少しずれた位――タイミングとしては悪くないはずだったのだが、何が悪かったのか?

『タイミングが合っていないようです。楽曲のリズムに合わせて操作をしないと、スコアにはつながりません』

 どうやら、明石のチェーンソーブレードは判定ミスとなったようである。

アクションゲームだと攻撃が当たればよいというパターンが多いが、リズムゲームではそうはいかないのだろう。

パワードミュージックで必要とされるのは――リズム感だ。明石にはリズムゲームのプレイ経験が少ない為か、タイミングがつかめていない。

明石にはリズム感が皆無という訳ではない。音楽の授業に関しては成績が悪い訳でもなかった。

しかし、明石は超有名アイドル無双が続いていた音楽業界に嫌気が差した結果、音楽からは距離を置いていたのである。

だからと言って音楽そのものをトラウマにしている訳ではない。仮にそうだった場合、スーパーやコンビニに行く事も出来ず、電車やバス等にも乗る事が出来なくなるだろう。

だからこそ、最低限の我慢はする事にしたのである。そうすれば、他人が不快に思う様な事は起こらないだろう――自分はストレスがたまって倒れそうな状態になるのだが。

『プレートを一定のリズムでタッチし、演奏していく事でコンボを繋ぐ事が出来ます』

 しばらくプレイして、明石は何かの感覚を掴みつつあった。要するにリズムゲームとしてではなく、別のゲームに当てはめる事にしたのだ。

一定のリズムでタッチする部分とコンボは格闘ゲームにおける目押しコンボで――何とかフォローする。

『ゲージはプレートのタイミングミス、ペナルティ行為等で減って行き、ゲージ0になると強制終了となります――』

『ゲージルール以外には、紋章ルールが存在します。紋章はスコア到達、隠し要素、特殊アクション等で入手し、0の状態でゴールをすると演奏失敗になります』

『ゲージルール、紋章ルールはホストプレイヤーが選択をする事が出来ます。ホストプレイヤーに関しては、ランダムで決定します』

『特殊アクションの中でも、一部のアクロバットに関してはペナルティの対象になります。詳細は電子パンフレットをご覧ください』

 ヘッドフォンにはシステムナレーションが聞こえるが、明石は特にスキップするもせず、だからと言って集中して聞いている訳ではない。

彼女の場合、単純に集中し過ぎた事で一種のトリップ状態になっているのかもしれない。

この症状は天津風(あまつかぜ)いのりにもあるらしいが――本人は自覚していない。

「ARゲームにおけるトリップ現象――これを超有名アイドル勢力に気付かれれば、炎上マーケティングや自分達の宣伝に利用されるのは目に見えている」

 明石はバイザーを左手で抑えながら、震えが止まるのを待っていた。

これはアカシックレコードのフルアクセスとは異なる。単純な異世界トリップ現象の様な物かもしれない。

一通りのチュートリアルナレーションが流れ終わった頃、震えの方は何とか止まったのだが――。



 午前11時40分、島風朱音(しまかぜ・あかね)は以前とは違うカスタマイズのARアーマーを装備していた。

デザインはSFとはほど遠く、むしろ北欧神話系に近く、背中にはバーニアユニットを搭載したバックパック――。

それでも、デカリボンは特徴なので外せない。ARメットはバイザー方式の物を使用しているようだが。

ARガジェットはリズムゲームのDJテーブルを思わせる形状のハンドガンが二丁――まさかのロマン武器である。

「この段階でマッチングは――」

 島風の方は準備完了しており、その他に準備が終わっているプレイヤーをサーチする。

そして、該当プレイヤーが2人いたので3人マッチングと言う事になったのだが――。

「何、このスキル差? もう片方は更に上級みたいだけど」

 島風は一歩間違えると格ゲーにおける初心者狩りみたいな状況になると思った。

リズムゲームで初心者狩りと言う物はあり得ないのだが、スキル狩りの様な物は作品によっては存在するだろう。

この場合はマッチングで優越感に浸るような――そんなケースと思われる。

マッチングリストを見て、片方の人物は見覚えがあると思ったら、まさかの明石だった事には島風も驚いていた。

あの時のやり取りを知っていた事もあり、戦ってみる価値はありそうだと判断した。

最終的には、明石もマッチング拒否をしなかった為、3人のマッチングは成立する。

「リズムゲームに格ゲーの要素を持ち込む方が、間違っているか」

 島風は、他のゲームのルールを持ち込む方がマナー違反だと感じ取り、特にマッチングでレベル差を考えるのはやめた。

あくまでもリズムゲームは個人競技に近い。そこでスコアを競うタイプのゲームであると。


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