第23話 源為朝

「先ずは、お礼を申し上げます」


 応接室へ通された俺達に、駅長は深々と頭を下げた。どこの馬の骨とも分からない、怪しさ満点の、無暗に偉そうな小娘と、モブキャラっぽい平凡な俺に、そんな態度を見せるとは随分と懐の広い人だ。

 俺は、アタフタと対応してしまったが。牛若はこんな事に慣れているのか、落ち着いた様子で謝意を受け取った。


「いえ、余所者が出しゃばったまでです。貴方の部下の練度は大したものだ、某は彼らの実力が発揮できるよう多少背を押したに過ぎません」

「そう言って頂けると、彼らも救われます。

それで……、ふぅ、一体何からお聞きすれば良いのか迷いますが……まず、お聞きしたいのは、この事故は終わったのですか?」

「そうですね、今回の件は終わったものと思われます。元凶は既に排除されています」

「元凶?排除?」

「ええ、話すと長くなりますので、概要をお話しします」


 そう言い、牛若は自らの出自とGENの事について話し始めた。荒唐無稽でざっくりとした説明だったが、駅長自身、前代未聞な事故や弁慶さん屋島さんの説明不能な能力を見ているのだ、様々な疑問を腹に置いたまま、黙って牛若の話を最後まで聞いてくれた。


「以上が事のあらましとなります。裏付けとしては、某が本拠地としております北九州市の市長殿か、総理大臣殿にお尋ねください。いえ、むしろあちら側から説明を要求されるかもしれませんが、その際にはご協力お願いします」


 堂々と、しかも微妙に慇懃無礼に語り終わる牛若。これも、小娘が戦場で嘗められないように作り上げられた会話術なのかと思ったが、今までのこいつを見るに単に生まれ持った性質なのだろう。付き合わされる俺としては胃が痛くなる。


 突拍子のない話を聞かされた駅長は非常に難しい顔をしていたが、屋島さんから終了の連絡と、牛若の予想通りに内閣の危機管理室下部の極秘対策室から連絡があった事により、俺たちはなし崩し的に応接室を後にする事となった。





 パトカーと救急車で十重二重と囲まれた駅を、光学迷彩を使い後にする。取りあえずは仲間内で情報整理をしなければならない。佐世保での戦いに始まり、避けなければならなかった事態と目的不明の乱入者、矢継ぎ早に色々な事がおこってしまい、訳が分からない。


 そんな訳で、俺たちは近所のカラオケボックスにやってきていた。勿論みんなで仲良く歌を歌う訳でなく、堅気の方に迷惑をかけないよう内緒話をするためだ。


「すまねぇな嬢ちゃん、遅れちまって」

「よい、叔父上とじゃれ合ったのだろう。あの人と相対して五体満足であるだけで上出来だ」

「はっ、じゃれ合えてすらねぇよ。旦那が振った手に自分から当りに行ってぶっ飛ばされただけだ。まぁ、たったそれだけで腕が吹っ飛びそうになったのは事実だがね」


 継信さんたちが為朝さんと相対したのは救援に駆けつける途中だったそうだ――





 時刻は逢魔が時、日が暮れ、昼から夜に切り替わる黄昏の時間だった。福岡の大動脈国道3号線のとある交差点、そこに鬼が現れた。


 運転していた男は不運だった、信号が切り替わり、アクセルを踏んだ瞬間の時だった。突如目の前に光が生まれた。対向車が間違ってハイビームに入れたのかとも思った。だが違う、光は間違いなく男の目の前に突如現れた。

 男は反射的にブレーキを踏み込んだ、衝撃と共にエアバックが作動する、ついでに後ろからも衝撃が来る玉突き事故に巻き込まれた、いや巻き起こしたのか。


 何かとてつもなく硬いものに当ったと思った、交差点のど真ん中に鉄柱がいきなり生えたかと思った。すると先ほどの光は鉄柱が地面に衝突した時の爆発か?隕石でも落ちて来たのか?ついてない、どんな確率だ。後ろからはクラクションの音が鳴り響いて来る。

 エアバックが萎み、白く汚れたフロントガラスが見えて来た、いや、見えるのはそれだけでない。鉄柱だ、愛車と自宅での寛ぎタイムを駄目にした鉄柱が見える。

 鉄柱……、違う、何か違う、さっきまであんなに五月蠅かったクラクションの音が遠くに聞こえてくる。代わりにカチャカチャと硬い音が頭に響いて来る。視界が小刻みに振動する、何だこれは!五月蠅い!

 鉄柱?違う、違うと思う。フロントガラスには見覚えのあるものが見える。

 手だ!大きく、太く、硬い手が見える。

 恐る恐る、ハンドルにしがみつく様に身をかがめのぞき込む、そこには1匹の鬼が居た。それを直視した途端に意識が遠のいていった。


 光の中より現れた鬼は、ただ立っていた。自動車に追突されても、震える様にクラクションを鳴らされてもどこ吹く風、ただ、立っていた。

 視線だけを左右に動かし周囲を見渡す。そしてつまらなそうに手に持った柱を少し持ち上げる。恐慌状態のクラクションに流石に少しは煩わしさを感じたのだろう。鬼にしてみれば、鬱陶しい蚊を手で振り払うのと同じだ。そう、鬼にとっては蚊も自動車もどちらも等しく一払いで消し飛ばせるものだった。


「ちょっとまったッ!」


 嬢ちゃんの救援に向かう途中だった。強力な八正反応が発生し、進路を少し反らしそちらに急行した。

 そこで見たのは為朝の旦那に無邪気にクラクションを鳴らす一般市民の皆さんと、面倒くさそうに弓を持ち上げつつある旦那だった。





「でっ、旦那にぶつかった運の悪い車の代わりに、俺がふっとばされてその場は終了って訳だ」

「まったくねー、私もつぐっちから降りるのが遅れちゃってさー。その余波で吹き飛ばされちゃったのよー。いやーそれにしても聞きしに勝る化け物っぷりだよねーあの人。

つぐっちも一般人から比べれば大概化け物なスペックなんだけど。あの人の前では大人と赤ちゃんだよ」


 うっせーな、その通りだよ。と憮然とした態度でそれに同意する継信さん。この負けず嫌いな剛の者をして、そう認めざるを得ない、それ程の相手。


「で、なんの目的でやって来たんだと思う?」


 恐る恐る、俺はそう切り出してみる。


「ふむ、十中八九敵としてでしょうな」


 牛若はあっさりとそう返事した。


「一応、為朝さんは源氏の一員なんだよな。裏切ったと言う事なのか?」

「そうですね、それこそまさに一応所属は我ら源でした。ですが実際には、叔父上には源氏も平家もありはしないのです。

 あの人はあまりにも強すぎた。最強を超えた無敵、並ぶものなき天下無双。並の兵をはるか下に置き去りにして天涯孤高の武の頂に居続けたのです。

 あの人には、源氏や平家と言った枠組みなど全く興味は無かったでしょう。求めるのは自分と対等に戦える敵、血沸き踊る戦、それだけだったと思われます」


 牛若は昔を懐かしむようにそう語った。こちらの世界ではこの二人にあまり共通点は無かったと言われる。義経が為朝に遠慮して八郎でなく九郎と名乗ったと言う逸話はあるが、そんな逸話が真っ先に上がる程度の付き合いしかなかったと言うことだ。

 だが、牛若の世界ではそれなりに付き合いがあったのだろう。そう言えば以前にも為朝さんとの思い出を語っていた覚えがある。


「それに、あの人は自軍にいても、何時も俺様基準で好き勝手に行動していましたからね。ぶっちゃけ、行動の読めない第3軍扱いでした。いつかこんな日が来るとは心のどこかでは思っていましたね。心底そんな日が来ない事は望んでいましたが」


 ため息まじりに、心底面倒くさそうにそんな事を漏らす。

 どうやら源為朝が制御不能の暴れん坊と言う面は、二つの世界で共通しているらしい。


「要するに俺達と戦いたいから敵になったってことか?」

「いやー、正直。某達では勝ち筋が見えません。叔父上と対等に戦うとなれば、兄上にご出陣頂いた上、源氏の精兵総出で当たらねばならないでしょう。

 勿論、叔父上もその位承知でしょうが……。

 正直、あの方の考えなど某には分かりかねます。何時もの気まぐれとしか言いようがございませんね」


 なる程、よく分かった。源為朝と言う男は、姿形は人間だが、中身は鬼や怪獣の類で、普通の人間にはその物差しが理解できないと言う事だろう。


「牛若様、伊勢様よりご連絡でございます」


 グチグチと先の見えない話をしている途中で、屋島さんの治療を受けている弁慶さんより連絡が入った。連絡先は、佐世保に続いて博多の件でも事務作業を行ってもらっている伊勢さんからだった。





『と言う訳で、今回の件はテロリストが起こした事件として処理する事となりました』

「ふむ……そうか」


 伊勢さんの報告を、牛若は不承不承と言った感じで受け取った。まぁこいつの気持ちも分からんでもない。一線を超える覚悟をもって行動したが、ふたを開けてみれば、肩すかしとなった感じだろう。

 牛若は公衆の面前で、あちらの世界の技術を大盤振る舞いした。事態の収拾を図るために、自分たちの素性をオープンにして今回の事件の矢面に立つつもりだったのだろう。


 なにしろ今回は死亡者が多数出ている。ついにと言うべきか、とうとうと言うべきか、いずれは避けられない事態だったのだろうが、やはり死亡者が出てしまうと一線を越えてしまったと言う後悔が押し寄せてくる。いや、やはりこの少人数で今まで死亡者を出さずにやってこられたのは、単なる幸運だったのだろう。


『牛若様、お気持ちは分かりますが。今は為朝殿の動静に集中してください』


 そんな牛若の心中を察したのだろう、伊勢さんは言葉を続けた。


『為朝殿の目的は不明なれど、かの御仁です。援軍として現れたとしても、敵方として現れたとしても、大いなる騒乱を巻き起こすでしょう。あの方はこの平和な世界には危険すぎます』

「援軍としてか、気休めを言うな義盛。叔父上の使用していた八正は義仲のそれと類似していた、それに未だに姿をくらましていることから敵方に相違あるまい。

 あの叔父上が義仲と連携行動をとるとは考えにくい故、おそらくは別の任務で出立したに違いない。現れる時期が早すぎるのが気になるが、おそらくは叔父上が早すぎたのでなく、義仲が遅く着きすぎたのだろう」

『そうですね、私も同意見でございます。そうなると義仲殿の請け負っていた任務が気にかかりますが、過ぎたことは気にしても仕方ありません。少なくとも、彼の請け負っていた任務は、彼を打ち取った以上、妨害に成功していますので、良しとしておきましょう』


「うむ、義仲の事は置いておくとして、問題は叔父上だ。義盛、正直に効かせてほしいが現状の戦力で叔父上を打ち取る事は可能か?」

『……無理でございましょうね。あの御仁は全てにおいて規格外すぎます。忠信君が到着したとしても残念ながら変わりはないでしょう。それほどまでの存在でございます』

「ふぅ……。某も同意見だったが、やはり貴様にそう言われると応えるな。とは言え手をこまねいている訳にもいかん。手段は無いか?」

『そうですね、戦闘では同じ土台に立てないので。交渉ですかね、気まぐれなあの方ですので、上手くいけば自軍に引き入れることが出来るかもしれませんが……』

「そうだな、上手くいけば上手くいく交渉と、最初から問題外な戦闘では、交渉の方がいくらか目があると言った所か……」

『ですが……問題があります』

「問題が無い事の方が少ないが、何だ?」

『私は利害を利用した交渉術しかしてきませんでした。それがあの御仁には全く通じないと言う事です』

「あー、野生の獣に現金をちらつかせても全く意味がないのと同じか」

『左様でございます』


「仕方ない、某が当たろう。交渉事は不得手だが、この中で叔父上と一番接する機会があったのは某だ。そんな事に意味があるかは分からんが、少しでも確率が上がれば儲けものだ」

「あー、そうか。嬢ちゃんはガキの頃、あの人に可愛がってもらったんだってな」

「某が四つか五つの頃、一方的に遊びをせがんだだけだがな。今にして思えば怖いもの知らずと言うものではなかったな」

「いやいや、笑いながらそう言えるのがすげーよ。ガキはおろか老若男女誰一人としてあんなおっかない人に好き好んで近づく人はいなかったぜ?」

「ふむ、某は特に意識しては居なかったな。よじ登るのにいい背中があったから肩まで上っては放り投げられていたな」


 はっはっはと笑う牛若。御付きの人の胃痛が想像できる。野生のライオンで遊ぶ貴人の子のお守なんて死んでもしたくない。

 とも言え一応の結果は出た。為朝さんとは交渉を中心とし可能な限り戦闘は避ける方向で相対すると言った方針だ。俺としても正直助かる、あんな化け物と戦うなんて想像しただけで胃に穴が開きそうだし、戦うことになったら心臓に穴が開くどころか、消し炭すら残らなそうだ。





 火花が散りそうなほど歯を食いしばる、千載一遇、いや兆が一つのようやく巡って来た機会。一撃必殺の砲撃を潜り抜け、ようやく目と鼻の先まで潜り込めた。

 背筋が膨張し鎧を軋ませる。全身至る所に追加装甲を増し増しの要塞使用。足は落ちるが、防御力は桁違い、重みが増した分火力も相応に増加した。

 瓦礫と破砕音が鳴り渡る戦場に、シュポンと多少気の抜ける音が鳴り響く。手甲に設置した盾に仕込まれたランチャーから煙幕弾が放出された音だ。特殊な煙幕で相手の視界は零だが、ゴーグルを付けているこちらからは丸見えだ。

 だが、そんな事はあくまでおまけ、俺以外が使った場合唯の煙幕だが――


「燃え尽きやがれッ!」


 白に覆われた空間が一瞬で紅の世界となる。この煙幕に使われる粒子の引火点はかなり高めに設定されているが、もしそれを突破して引火した際には鉄すら蒸発する大延焼を起こすことになる。


 爆発の衝撃を利用して背後に跳び下る。援護射撃が炎に叩き込まれる。まぁその大部分は炎にまかれ蒸発してしまう事になるが――


「なっ!?」


 ぬるりと、巨体が影を落とす。一瞬たりとも視線を逸らした覚えはない、いや良きにしろ悪しきにしろ、知性を持つ存在である限り、奴を目の前にして視線をそらせるわけがない。本能が奴と言う圧倒的存在に目をそらすことを許さない。

 だが、奴はそこにいる。奴は圧倒的強者、絶対的無敵でありながら、生まれ持った力に飽き足らず多種多様な技を取得していると言うが――


 それは分類としては弭槍(はずやり)に属するだろう。とは言え戦国時代に用いられたそれのように、通常の弓に、槍の穂先を後付けに紐で結んだ物でない。最初から刃物を固定されるように作られたものだ。

 とは言え、そんな些細な事以外にも目を引くものはそのサイズだ。圧倒的な分厚さは電車のレールを上回り、とても弓とは思えない存在感を示していた。そしてその両端に龍の咢(あぎと)を思わせる凶悪な刃物がこしらえられていた。


「くそが」


 目にも留まらぬ一閃により、佐藤継信は真っ二つに切断されボーリングピンの様にはじけ飛んだ。





「駄目でございましたか」


 援護射撃を延々と叩き込んでいるが、全く効いた感触が無い。一応生身の人間のはずだが、先に戦ったアンドロイドの巴よりも丈夫なのは何の冗談だろうか。

 こちらの主武装は両腰に設置された大口径レールガン。戦艦の装甲すら容易く打ち抜くはずのそれが豆鉄砲扱いだ。その他にも同時操作可能な装備は全て装備して、その運用補助のための強化外骨格と追加増槽も装備しており、本体のサイズだけでも通常の倍はある。真一様の感想ではフルアーマー弁慶さん等と言っていたが、その全力をもってしても負傷を与えるどころか、微かな隙を作る程度しか働けない。


 矢が番えられ放たれる、素人なら、いや訓練を積んだものでさえ見逃すほどのその速度は西部のガンマンが放つクイックドロウの様だ。

 弓が弦から解き放たれた瞬間に、その周囲が爆発する。特性の鏑矢が音速をはるかに超える速度で放たれた際に生じる衝撃波だ。

 だが、恐るべきはそれだけの抵抗を食い破りながらも全く速度が低下しないと言う馬鹿げた発射速度だ、それもまたあの悪夢の様な弓と、それを操る化け物じみた人間の筋力が成すものだろう。


 かわす、かわす。盾役の継信様がやられたことで、こちらに攻撃が集中する。だが、衝撃波の性で着弾ごとに姿勢が崩される。あまりの連射速度に迎撃も間に合わない。

 爆撃を利用し回避を続けるが、逃げに回る時にはゴチャゴチャとした追加装備が足手纏いとなる。かと言って通常装備では微かな隙すら作れないだろう。


「ここまででございます」


 光の弓が弁慶を貫いた





「まったく……貴様ら全然いいところが無かったな」

「はぁーー?真っ先に突っ込んで真っ先にやられた嬢ちゃんがそれを言うってのか?」

「はっ!某全然本気ではなかったからな!」

「へっ!それを言うなら俺もそうだよ!」


 ギャーすか、ギャーすか毎度の様に繰り返される、シミュレーション後の反省会(笑)を薄目で眺める。


「で、どうなんだ。何か糸口はつかめたのか?」

「「いや、全然」」

 馬鹿2人はそろって首を横に振った。





 あれから、為朝さんの行方は杳として掴めなかった。身長2m半と言う鬼の様な姿形をしているので直ぐに捕まるかと思ったが、彼は隠形術も一流だそうで広域で荒い網ぐらい、易々と突破してのけるそうだ。生まれ持った力に胡坐をかかず、貪欲に技術を収める強者なんて敵対する場合、悪夢にしか他ならない。唯でさえ無敵のチート能力者がこれ以上強くなってどこを目指すと言うのだろう。牛若達は知らないが、あっちの世界では銀河一武道会とかが開催されているのかもしれない。


 と言う訳で、俺たちは暇を持て余す気持ちなどには全く成れず、寸を惜しんではこうしてシミュレーションに没頭していた。会場は牛若が以前やった超凄いVR空間だ、ただし今回その場所を提供したのは継信さんで、疲労でぶっ倒れるたびに屋島さんが面白がって何かの注射をして甦らせているのだが、こちらの世界ではご禁制の疲労がポンと飛ぶ系の薬ではないかと訝しんでいる。俺には決して使わないように言っておかなくてはならない。


 一方博多駅の方はどうなったかと言うと、伊勢さんが言っていた通り、一連の事件はテロリストの仕業と言うことになった。以前から公安のチェックリストにあったあるグループに容疑が掛けられているそうだ。

 伊勢さんの裏話によると、あっちでも以前から煮え湯を飲まされ続けていた案件に、今回の罪を擦り付けてまとめて処理してしまうとのこと。冤罪も甚だしいが、伊勢さんの裏工作により証拠のでっち上げは完璧で、後は流れに任せるとのこと。

 俺の中で伊勢さんは敵に回したくない人物同率タイだ、勿論その一方は現在行方不明の為朝さん。社会的にじわじわ殺されるか、物理的にスパッと殺されるかどちらがいいだろうか悩むところである。

 そんな訳で、牛若のうの字も出ずに。博多駅は急ピッチで修理が行われている。



 こうして、不思議と静かな時間を過ごす俺達に、ドラマチックとは程遠く、とある人物が普通に玄関のチャイムを押して訪問して来た。

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