48話 十一日目: 淫魔×再会×小悪魔
夢を見ていた。
「ウフフ。 山ピーのキノコ、もうこんなにトロトロですよぉ?」
妖艶に笑う亜理紗は俺のキノコを執拗に撫でまわしていた。
「いただきますですぅ! んっ、んう゛ぅ、んんっ……」
隣で眠る少女に食べられた俺のキノコ。
体を痺れさす快感に身を震わす。 夢だと分かっていながらも、その快楽には逆らえない。
「うっ!!」
「ぷはっ! ……うふふ、いっぱい出たですぅ」
夢の中の亜理紗は色気があった。 淫魔サキュバスのようだ。
噴火したキノコに白濁に染められ、妖しく笑う亜理紗に俺は……。
「……やっちまった」
目を覚ますとパンツが大変なことになっていた。
なぜかズボンは脱げていて助かった。 寝ながら脱いだのだろう。
隣で眠る亜理紗を確認し、起こさないように静かに寝床をたつ。
焚き火に薪を足し、灰を少し持っていく。
「雨……止んだな」
雨上がりの早朝。 独特のイイ匂いだ。
空は未だ晴れず霧も出ている。 今日も天気は悪そうだが。
「しかし、初めてだなぁ……」
夢精を初めてした。
十日ほどしていなかったし、寝る前にマッサージされていたし、仕方ないだろう。
聞いていた以上にリアルだった。 もう自分の息子を弄り回された感触が残るほどに。
「おぉ……冷たい……」
湖の水は冷たい。
裸になった俺は水に入っていく。 胸に水を掛け慣らすようにゆっくりと。
心臓が止まるほど冷たいわけではないが一応だ。
すっかりと眠気も覚め、体も綺麗に洗う。 煩悩も清めてしまおう。
服は灰を混ぜてゴシゴシ。
灰に含まれるアルカリ性が汚れを落としてくれる。
おっさん以外は肌荒れするから、手袋を着用したほうがいいだろう。
「あー、火を持って来ればよかったな」
一旦戻って焚き火の側に干し台を作ろう。
小腹が空いてきた。 朝食はどうしようか?
「おー、チコリの花か」
帰り道も散策しながらいく。 常に食料の気配に敏感に行かないとダメだ。
雑草の中に紛れる薄紫色の綺麗な花を見つけた。 朝に開いて夜には閉じるタイプの花。 この植物は優秀でタンポポの代わりになる。
花も葉も根も全部食べられるし、根からはコーヒーもできる。
俺は上機嫌で採取していく。 繫殖力も強いからいっぱい採取しても大丈夫だろう。
これでサラダはゲット。 コーヒーは乾燥させないとだからまた後のお楽しみだな。
「果物も欲しいな」
朝は果汁たっぷりの物がいい。
乾いた喉も潤せる。
「お、ポーポー」
アケビのような形をした緑色の果実。
通常の物より大きく肉厚だ。 細い枝をしならせている。
タンパク質が豊富なのでぜひ手に入れたい。
樹皮も抗菌作用と虫よけ効果もある。 果実にも虫よけ効果があって無農薬で栽培される。
「おぉ、でかい!」
大きいことはいいことだ。
これで朝食は大丈夫だな。 サゴもまだまだあるし。
しかし、自然の中を全裸で散歩するのは気持ちがいいな。
ヌーディストの気持ちが分かるようだ。 服が乾くまでしばらくこのままでいいか。
おっさんのネイキッドクッキングなんて誰得なんだ?
「どうにかして、裸ブームを巻き起こす……」
道のりは遠そうだ。
◇◆◇
「おい、耳を澄ませてみろ! 波の音が聞こえるぞ!!」
聞こえる訳、ないだろ?
俺も悪かったと思うけど、人の失敗をからかうのは良くないと思うぜ。
「いいから、ほら!」
「んー? ……あっ!」
波の音だ!
波の音が聞こえる!
まだまだ辺りは薄暗く、木々の間からは海は見えない。
俺たちは雨が止むとすぐに、洞窟を出て海を目指した。
空は晴れず薄暗い森を松明を頼りに彷徨い歩いた。
おっさんに習った松明の作り方がさっそく役に立つ。
「よっしゃ!!」
「辿り着いたぞぉおお!!」
まだ人の気配のない早朝の砂浜に、俺たちの歓喜の叫びが轟く。
「おお? どうした、お前ら? そんなにはしゃいで……」
ヤンキーを召喚した。
騒いだせいで金髪オールバックのイケイケ系ヤンキーを召喚してしまった。
(ヤバイ、締められる!?)
トラウマが蘇る前に、他の野郎どもが飛びかかった。
「ははは! 久しぶりだなぁ!!」
「やったぜ、この野郎!!」
「うおっ!? テンション高ッッ!!」
どうやら知り合いらしい。
ワイワイと楽しそうだ。 俺は一人、その輪の中に入れずヤシの木の下に腰を降ろした。
この金髪オールバック、最初におっさんと水辺に行った奴らしい。
他の奴らも大抵そうだ。 だから異様に仲がいい。
「おっさんは来てないのか?」
「あぁ、気づいたらどっか行っちまってた」
「はは、相変わらずか」
たしか、おっさんに彼女のギャルを寝取られた可哀想な奴だ。
疲れの見える顔はどこか哀愁も漂っている。 かませ犬っぽいもんな。
ギャル男は苦手だが――しかもヤンキーっぽい――こいつとならなんとか上手くやれるかもしれない。
俺も話の輪に加わろうかと近づくと、会話は終わってしまった。
「バナナか! みんな喜ぶと思うぜ?」
俺たちはヤンキーに連れられ、砂浜を移動する。
浜辺に打ち上げられた機体が懐かしい。 まだそれほど日は経っていないはずなのに。
「たくさんあるから、焦らなくて大丈夫だ!」
集まった連中はバナナに夢中だ。
本当は俺の手柄にしてチヤホヤされようと思ったけど、疲れすぎてそれどころではない。
人だかりから避けるように、近くにあった寝床に腰を掛け溜息を一つ吐いた。
随分としっかりした作りだ。
「はぁ……しんどい……」
腹も減った。
疲れを癒さないとダメだ。
おっさんに分けてもらった秘蔵のハチミツを食べるしかない。
「おっさんもケチだよなぁ。 こんだけしかくれないんだもん……」
真空パックの袋に入れられた僅かな黄金色の液体をサゴのパンに塗り一口。
「うんっまッッ!」
濃厚な甘み。 ねっとりとした甘みだ。 ハチミツ特有の匂いも食欲を誘う。
「いい匂い……。 お兄さん何を食べてるの?」
「――!?」
蜜の匂いに惹かれてミツバチがやってきた。
とっても可愛いメスのミツバチだ。
「ああ、う、あええ!?」
「……大丈夫かな? お水、飲む?」
こ、これは!?
試練を乗り越えた俺に、ギャルが接近してきた。
しかも超可愛い。 おっさんのギャルと比較しても遜色ないぞ!
「はい。 どうぞ?」
「あ、ああ、ありがとぉございしゃす!!」
どもった上に超早口でお礼を言った。
巨大蛇に遭遇したときのように、俺の心臓が爆発しそうに鼓動している。
「フフフ……、お兄さんカワイイね? 私はマリって言うの、お兄さんのお名前は??」
「た、田中一郎ですっ!」
童貞です!!
砂浜に向かい危うく叫びそうになった。
彼女のクリッとした瞳が俺を見つめてくる。
笑うとできる小さな頬のくぼみ、タレ目がちな瞳に通った鼻筋。
小悪魔のような彼女は俺に近づいてくる。
「それは、なぁに? パン??」
「そそ、パンみたいな物だよ。 ……た、食べる?」
「えっ、悪いよぉ? お兄さんのだもの、……貴重でしょう??」
「いやいや! また取ってくればいいから。 俺なら楽勝だからさぁ! 食べていいよ!!」
彼女の瞳はサゴのパンをチラチラと見ていた。
俺はつい見栄をはった。 だが後悔はしていない!
「んっ! 甘くて美味しいっ!」
ハチミチもケチらず塗ってあげる。
――効果は抜群だ。
サゴパンを食べ終えた彼女は俺に近づき、その可愛らしい顔を近づけてきた。
「――ふぁっっ!?」
「……お兄さんも、美味しそうだね?」
頬にキスをされた。
頬でもファーストキスに入るのか?
う、ファーストキス? 何か、嫌な……。 頭が、痛いっ……。
「大丈夫? ここは私のベットだけど、自由に使っていいからね?」
「……はい!!」
どうやら俺の時代が来たらしい。
しかし俺はこの時しらなかった。
蜜に惹かれてやってくるのは可愛いミツバチだけじゃない。 獰猛で残虐で肉食なスズメバチもまた蜜に惹かれてやって来ると言うことを……。
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