第5の季節はどんなのにする?

ちびまるフォイ

季節の変わり目にはごようじん

「では、季節会議をはじめる」


夏は全員を円卓に集めて神妙な顔をしていた。


「会議~~? 会議ってなにするの~~あはは~~」


「どうせ冬なんてクリスマスしか好かれないのに……どうせどうせ……」


「そんなことよりお腹が減ったよ」


春、冬、秋はそれぞれ緊張感のない様子。

夏は怒ってテーブルをたたいた。


「貴様ら! 俺たちの影が薄くなっていること、自覚してないのか!!」


「ええ、ええどうせ冬は影が薄いですよごめんなさいすみません……うぅ……」


「そうじゃない!! 最近、季節の存在感がないってことだ!!」


「そんなこと、どの本にも書いてないよ?」


「影、うすくなってるかな~~」


「なってる!!」


夏はホワイトボードに新橋のサラリーマンを捕まえて得た

街頭インタビューの結果を円グラフで見せた。


「見ろ! 最近、季節について考えていますか、と聞いたところ

 ・考えている …20%

 ・考えてない …60%

 ・飲みにいく …20%  という結果になった!!」


「そういえば、最近は異常気象ばっかで、

 秋でも冬みたいに寒いし、春でも夏みたいに熱いって本で読んだよ」


元々影のうすい秋は別に気にしていないが、

夏の言うことももっともだと、焼き芋食いながらフォローした。


「あはは、でも夏は人気じゃ~~ん。

 夏になると今でもはしゃいだ若者が意味なく活発になるでしょ~~」


「そういう問題じゃない! 季節の影が薄くなっている今!

 新しい季節を作る必要があると言っているんだ!!」



「新しい季節……やっぱり冬はいらない子なんだ……」


「まぁまぁ冬ちゃん~~。いらない子じゃないよ、求められないだけで~~」


「うわぁあぁぁん!!」


春の毒舌に冬はテーブルにつっぷして泣きじゃくった。


「ということで、昨今の異常気象に合わせて新しい季節を1個作れば

 季節感のメリハリがついて、我々の存在感を復活させられるというわけだ!」


「よかったね、冬ちゃん」

「うう……ぐすっぐすっ……」


「ねー、みんなでテニスやらない?」


秋は飽きたのかスポーツしたくて体がうずいている。


「つーわけで、貴様ら、新しい季節のアイデアはないか?」


「はいはーーい! やっぱり人気のある季節にしたいです~~!!」


「人気は大事……求められない季節だと……私のように……ああぁ……」


「んじゃ、人気のある季節ってなんだよ」


夏の切り返しに春はぽかんとしていた。

誰もが見て分かる「そこまで考えてなかった」の顔だ。


「どうせ一番人気の季節は春なんだし……クローンの季節作ればいいんじゃない……」


「そんなのダメだよ~~! ボクの影が薄くなっちゃう」


「じゃあさ、みんなのいいところを取っていけばいいんじゃない?」


「「「 それだ!! 」」」


秋のアイデアに全部の季節が納得した。


「貴様らの季節のいいところを寄せ集めれば、完全無欠の人気季節になるはず!

 だが、一方で器用貧乏になるから、俺たちの引き立て役としてもいい!」


「そうだね~~。全部あるのと、専門の季節とで~住み分けできそう~~」


「ますます冬が嫌われそうなんですがそれは……」


「そんなことより、お腹が空いたよ」


というわけで、全員で自分たちの季節のいいところを考えることに。


「ボクは~~。穏やかな陽気で~~ぽかぽかだから~~人気だよ~~」


「なるほどな。夏みたいに雨が多くないし、気温は暖かい、採用だ」


夏は春のいいところをメモする。


「俺は昼が長いところが人気だぞ。必然的に遊べる時間も増えるからな!!」


「夏の暑さは……不人気なところあるしね……ははは」


冬は夏のいいところをメモした。


「私は紅葉とか風景がキレイなのが人気だね」


「秋ちゃんの季節は~~おでかけにぴったりだもんね~~」


春は冬のいいところをメモした。


「よっし! これで終わりだな!!」


「ああああ……やっぱり冬はいらないんだーー……」


冬はふたたびやる気を失って地面にへたれんでしまう。


「まぁまぁ、冬ちゃんのいいところは~~……えっと~~……」


「夜が静かなところじゃね」


「それ! ボクもそう思った! 夏みたいに暴走族が暴れないし!」


秋からの絶妙な助け舟で冬のいいところが見つかった。

こうして新しい季節が決まった。


「よっし! 貴様ら、新しいき季節が決まったぞ!!

 春のように穏やかな天候で、

 夏のように昼が長くて、

 秋のように風景がきれいで、

 冬のように夜が静かな第5の季節だ!!」


「いろんな季節があるから~~名前は"虹"がいいと思いま~す!」


「第5の季節を入れて、冬がまた好かれますように……」


「決まったな!! 第5の季節・虹の完成だ!!」


会議は季節たちの拍手に包まれて円満に幕を下ろした。






「それで、この季節、どこに挟むの?」


「「「 あ゛っ…… 」」」



それぞれの季節の間に新しい季節「虹」を強引に差し込んだところ、

人間からの猛烈な批判を受けて間もなく「虹」はお蔵入りになった。



「季節が変わりすぎて、体調管理できるかぁ!!!」

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