第三十二話:『目安箱』

「ふんふふーんふーふふー」

『いつになくご機嫌ですね』

「何といっても今日はバレンタインデーですからね」

『あげませんよ、貴方にあげるくらいなら自分で食べます』

「そう言うと思って自作しています」

『あげる方に回るつもりですか』

「女神様の分も用意していますけど、自分の分もしっかり用意してありますよ」

『自分用のチョコを自作ですか』

「いえ、女神様の空間で自作したチョコならばそれはもう女神様から貰ったチョコだと思えませんか」

『中々の上級者発言ですね、理解の兆しはみせないで起きましょう』

「例え女神様といえども俺が女神様からこのチョコを貰ったと思い込むことは簡単には止められませんからね」

『貴方の脳みそに電極を突き刺して弄繰り回し様々な薬品を使用すれば止められるとは思いますが』

「容赦ない、それくらいは許容してほしい所ですが」

『雉も鳴かずば撃たれまいに、まあ私への献上分の味次第としましょう』

「そこは大丈夫だと思います。バレンタインデーと言えば異世界ではバレンタインデーってないですよね」

『キリスト教の司祭だったウァレンティヌスがいなければバレンタインと言うイベントが発生しませんからね。チョコレートの供給もあるかないかという問題もあります』

「チョコの有無は分かれていましたけどウァレンティヌスさんが司祭だったタイミングは異世界では無かったですね」

『いたんですかウァレンティヌス』

「いましたよ、農家で大根育てていました」

『バレンタインデーに漬物を贈ることになりそうですね』

「別の世界のウァレンティヌスさんはコメディアンでしたね」

『それ気まずい雰囲気に転生した際の時ですかね』

※第15話参照。

「いやあ、奴は強敵でした」

『その辺の報告は受けていませんが、今度その世界の漫才関連の情報を仕入れておくとしましょう』

「バレンタインデーのない世界でも一応は贈り物を贈る習慣はありましたね」

『何かしらで相手に感謝や気持ちを伝える切っ掛けは欲しいでしょうからね』

「そうですね、そもそも男に甘いチョコレートを渡すって発想が日本の企業戦略の謎さを感じますよね」

『甘い気持ちを贈りたいとかその辺かと』

「男だったら甘い系よりも塩系のお菓子の方が良い気がするんですよね」

『そこは好みでしょうけど男性よりかは女性の方がチョコレート好きの人多いと思いますね』

「俺は好き嫌い無いのでどんな味でも平気ですよ」

『ではカカオの実でもあげましょうか』

「加工の気配もない、でもそう言うネタ経由でも女神様から貰えるならチャンスなのではと思う自分がいます」

『まあそれからチョコを作らせて私が食べますが』

「なるほど無駄がない。チョコレート出来ましたよ」

『では味見を……本当にこういったスキルは高いですよね』

「人生が長いと学ぶ機会は多いですからね、手短な物は大抵練習していますよ」

『人の生は長くないと思いますが、まあこの味なら見逃してあげても良いですね』

「やった、これで今日一日は妄想が捗る」

『ですが異世界転生の時間です』

「畜生、忘れていた」

『さっさとお題を引いてこの世界から去ってもらいましょうか』

「女神様にチョコを渡せたと言うだけで満足するしかないですね。ではがさごそっと。残鉄さんより『目安箱』」

『目安箱ですか、それですね』

「これですね。この目安箱になるのを転生とみなしてもらえるならありかもしれませんね」

『みなしませんよ、異世界転生なのでどのみち異世界には旅立ってもらいます』 

「仕方ない、取り敢えずオプションを決めますかね。ええとこれとこれと……素材に世界樹とかないかな」

『素材には結構こだわるタイプですよね』

「戦闘技能は適当でもどうにかなるので、見た目や材質くらいしか拘る箇所が無いんですよね」

『実際今の貴方の戦闘技能はどれくらいあるんでしょうね』

「試してみますか。と言っている間に消し炭にされてしまった」

『相手が悪いですね、それでは行ってらっしゃいませ。残ったチョコは私が綺麗に食べておきますので』

「せめて一口だけでも食べさせてくださいよ」

『美味しいのでダメです』



『今年の用意も済みましたが……はてさて』

「ただいま戻りました」

『おや、やはりダメでしたか』

「残念ながら」

『最近は残念に思うことも無くなっていますがね。報告を聞きましょうか、今回はシンプルに目安箱でしたね』

「ええ、とある王国に設置された目安箱ですね」

『王国に目安箱ですか、中々珍しいですね』

「はい、王様の名前はラユステ。女王でとても慎重な人でした。ラユステは民が日常国に何を求めているのか、日々にどの様な不満を持っているのかなどを調べるために目安箱を設置したのです。それが俺です」

『それが俺ですって発言の流れに違和感を覚えないあたり私も随分と感覚がマヒしてきましたね』

「ちなみにこちらが街の広場の隅に設置された俺の写真です。隣にいるのはラユステです」

『む、スタイルの良い女王……そして貴方は大きめですが普通の目安箱ですね。流石にファンタジー世界の目安箱とあって漢字で目安箱とは書かれていないのですね』

「その代わりに横に看板が設置してあり、『全ての意見を掬い上げることはできないが、目は通す。この国での不満、国に成してほしい事を書いて投函されたし。ただし夜の投函は認められない』と書かれていますね」

『表立って女王に意見を言える者は少ないでしょうが匿名性が守られる目安箱ならばそれなりに意見もあったのではないでしょうか。夜に投函出来ないと言うのは少々気になりますが』

「ええ、結構頻繁に投函がありましたね。どこどこの下水が詰まっているとか、隣の誰々が夜にいつも喧嘩をしていてうるさいとか」

『下水は国でも対処できますがご近所トラブルにも国が介入すると中々煩わしそうですね』

「それとなく注意する程度しかしませんでしたが結構効果ありましたよ」

『まあ誰かしら迷惑していると国に密告されるようなものですからね』

「思いの外俺の活躍は好評でラユステの支持率は地味ですが上昇していきましたね」

『貴方の活躍とは言えないですが目安箱を設置したことに意味はあったようですね』

「ただ投函する人が増えてくるとやはり無理難題や変な内容も増えてくるのです」

『貴方の目安箱に関しては変な内容ばかりですがね』

「給料を三倍にして欲しいとか、女王様の露出もっと増えないかなとか」

『貴方みたいな人もいるのですね』

「なお後者の手紙を出した者は翌日不敬罪で罰金を払うことになりました」

『匿名性が機能していませんね。何かしらの対処がされていたのでしょうか』

「ええ、ラユステには誰がどんな内容を投函したのか知る術があったのです」

『ふむ、ファンタジー世界ならば魔法といった手段があると思いますが』

「違いますね」

『一般的な方法ならば広場に兵士やらを潜ませ目安箱を常に見張らせるとかですかね』

「うーん、ちょっと惜しい」

『ふむ、筆跡鑑定とかも違いますか』

「ええ違います」

『冷静に考えてそろそろ予想外の展開が来そうなので答えを聞きましょうか』

「目安箱の中にラユステが常に入っていました」

『ロクな女王じゃないですね。日常業務はどうするのですか』

「ラユステは優秀な女王で適材適所な人材を無駄なく配置し、自分の労働の手間を最小限に、目安箱に潜む時間を捻出していたのです。そして必要な日常業務は夜に済ませていましたね」

『それだけ優秀なくせに目安箱の中に入って常に監視をしていたのですか』

「箱入り娘として育てられましたからね」

『意味が違いますね』

「元々箱の中等狭い場所が好きで他者との関りを好まなかったラユステにとってこの目安箱の中の人の業務は非常に心落ち着くものだったのです」

『本当に箱に入る癖があったのですか』

「中にはクッションやら空調設備やらあって意外と快適でしたからね」

『子供の時ならばそう言った秘密基地的な感覚は楽しめると思いますが、女王ともなるとどうなんでしょうね』

「満喫していましたね」

『変わり者もいますね』

「俺も満喫していました」

『変わり物もいましたね。この炭でも食べてなさい』

「凄い、紛うことなき炭だ。まあ頂きますけど」

『炭を躊躇なく食べれるのはぞっとしますね』

「今までの流れだともっと手厳しい目に遭うと思っていましたし、これくらいは平気ですね。水は飲みたいですが」

『炭を溶かした水なら良いですよ』

「わぁい」

『貴方の色欲は本当に消えませんね』

「そうは言いますが自分の中にスタイルの良い美人の王女が入ってくつろいでいるんですよ、反応しない方が男としてどうかしています」

『頭がどうかしている時点で男とかそう言った問題ではないですし、そもそも箱なので性別はありませんよね』

「ラユステは目安箱を通じて様々な民の意見を聞き入れ、そしてその願いを叶えてきましたが時折叶えられない願い等も投函されることに嘆くこともありました」

『給料三倍以外にも何かあったのですか』

「『光を失った妹の目を治してください』とかそう言った感じの奴ですね」

『魔法の発展程度にもよりますがその世界では難しかったのでしょうね』

「ええ、魔法はありましたが扱えたのはごく一部、奇跡の御業です。医学なども殆ど発展しておりません」

『可能ならば叶えてあげたいでしょうけど、無理なのでしょうね』

「ですがその願いを投函した少年は一度だけでなく、何度も何度も目安箱に同じ願いを投函して来るのです」

『中にいる当人は非常に気まずい思いをしたでしょうね』

「そしてある日、その少年は盲目の妹を直に連れてきて目安箱に投函しお願いしてきます。これにはラユステも叶えてあげたいと思いつつも複雑な顔をしていましたね」

『こういった思いをすれば女王も箱に入っているのを諦めたくなるでしょうね』

「はい、なので俺は少年の目の前で妹の目を魔法で治療してあげました」

『しれっと奇跡の御業を使いましたね』

「実は俺にはオプションで『中に投函された願いを叶える』機能が備え付けられていたのです」

『目安箱でその機能は危険な気もしますが。ですがそのオプションですと給料三倍や女王の露出を増やすと言った願いも叶ってしまうのでは』

「大丈夫です、給料三倍は小銭を増やして重量を三倍にしておきました」

『捻くれたトンチが効いていますね』

「ラユステのロングスカート丈を膝上5センチにしておきました」

『最早ロングとは言えない、ストレートに叶えてしまっているじゃないですか』

「どのように叶えるかは自由ですし、そもそも叶えないと言う選択肢も選べましたからね」

『なるほど、それで女王のスカートを自分の意志で短くしたと』

「はい」

『炭を追加しましょう』

「これは後で胃薬案件かな」

『炭は体に良いのですよ』

※炭を食べる文化もあります、日本にも。

「ただこの炭は栄養価が殆どなさそうですが」

『適当に燃やして作った炭ですからね。元は食べ物の炭を用意しているので安心してください』

「なるほど、元々が食べ物ならばいけますね。水をお代わりで」

『はいどうぞ、炭をたっぷり混ぜておきました』

「水分があるだけマシだと思おう。それで願いを叶えたのは良かったのですが、やはり奇跡を起こしてしまうと噂の広まるのは早いのです。目安箱への投函が急激に増え始めたのです」

『願いの叶う目安箱とでも噂になれば聞きつけた者は試しにと入れるでしょうからね』

「まともな願いなどはラユステが叶えていたのですがやはり私欲にまみれた願いなどは叶えるわけにはいきませんからね」

『ですが奇跡を起こせるとなると願わずにはいられないのが人間の性ですからね』

「なので俺が独自の解釈で叶えてあげることにしました」

『嫌な予感しかしませんね』

「まず『働かずに金持ちになりたい』」

『いますね、対価を支払わずに利益を求める人』

「強制的に転職させ金山の炭鉱夫にしておきました」

『確かに金を持つ仕事ですね』

「次に『あの男の彼女と付き合いたい』」

『既に恋人関係にある相手を好きになってしまうことは良くありますが目安箱に頼る内容ではありませんね』

「一応本気かどうかを調べましたが、ただのクズい男だったのであらゆるものがその女性に見える魔法を掛けておきました」

『人によってはホラーですね。貴方の場合は平気そうですが』

「見える人皆女神様になると……まあひとしきりは楽しめますけどやはり女神様は一点ものが良いですね」

『微妙に嬉しくない解答ですね』

「次は『最強になりたい』」

『努力する気が皆無ですね』

「最強だと錯覚する魔法を掛けておきました」

『それ場合によっては惨事では』

「威張れなくなる謙虚の魔法も掛けておいたので対人トラブルはなかったですよ」

『奇跡の御業のバーゲンセールですね』

「続いて『女王の露出をもっと増やして欲しい』」

『それ不敬罪で罰金払わされた人ですよね』

「ラユステのスカート丈を膝上20センチにしておきました」

『マイクロミニにまでなりましたか。ストレートに叶えてしまいますね、女王はそのことに何か思わなかったのでしょうか』

「着る服が常にそのサイズに変化する呪いを危惧して願いを投函した男を留置所にぶち込みましたね」

『妥当ですね』

「ですが支持率はぐっと上がりましたよ」

『国民の民度が知れますね』

「俺も満足です」

『炭追加』

「へへ、ホールケーキくらいの炭だ。喉が鳴りますね」

『水分は禁止します』

「こいつは難儀だ。さてラユステは奇跡の起こる俺を不思議に思い、夜のうちに俺を調べますが俺はうんともすんとも言いません」

『喋れる機能は封印していましたか』

「いえ、調べ終わった際に大声をだして驚かせたかったので」

『良い性格していますね』

「えへへ」

『褒めていませんよ』

「そろそろラユステに事情を説明しておかないと色々面倒になりそうな段階でしたからね。俺は自分が意志を持った目安箱であり、投函された願いを叶えることが出来ることを説明します」

『それだけですと危険な目安箱ですよね、実害ありますし』

「ですので叶えられる願いは選択可能、どういった形で叶えるかも融通が利くことを説明します」

『危険度は下がりましたが今度はスカート丈の件で問題視されますね』

「そこは呪いといった形で誤魔化しました」

『しれっと嘘を付きますね』

「いやぁ、あの場で素直に認めると燃やされそうでしたから。『これを作った女王への願いは可能な限り応えねばならない』的な説明をしておきましたよ」

『作った本人に災いが降り注ぐならばあまり安全とは言えなくなりましたね』

「とはいえ実害は殆どありませんし、ラユステは俺を使って国を良くしようと考えます。そして自ら噂を流したのです」

『奇跡の起こるアイテムに頼る事はロクな結末にならないのが常ですが、大丈夫でしょうかね』

「『目安箱にはあらゆる願いを叶える力がある。しかし身勝手な願いには然るべき報いが降り注ぐ。女王の服装に関しての願いは必ず報いが降り注ぐ』と言った感じです」

『全力で警戒していますね』

「そして投函される願いをラユステは一つずつ吟味して願いを叶えるか、罰を与えるかを選んでいきます。露出を増やそうとした者は躊躇なく牢獄に叩き込みます」

『必ず報いが降り注ぐと言われてもいるところにはいるのですね』

「膝上20センチのスカートですからね、もっと上にいけるのかと思えば挑むのが男ってものです」

『どうでもいい情報ですね』

「人々は多くの奇跡を得て、幸福感を得ていきます」

『何はともあれ魔法で出来なかったことが出来るようになれば画期的ですからね』

「ラユステの胸元は大きく開き、スカートのスリットは深くなり、布地はよりヒラヒラになっていきます」

『強行突破した者達もそれなりにいたようですね。炭のおかわりはいくらでもありますからね』

「物理的に胃が破裂するかもしれない。しかし同時に問題も発生します。願いを叶えて行くことで国民達は満たされる。そう思っていたラユステでしたが願いの投函はどんどん増えてき、私情にまみれたものが増える一方です。目安箱の前には長蛇の列が毎日できるほどです」

『人は便利になってもなお更なる利便性を求めますからね』

「どんなに罰しても人々は私情を優先する、そんな繰り返しを経験していくうちにラユステは安易に願いを叶える力は人々を駄目にすると理解しました」

『服装を考慮すると遅すぎた感はありますが、良い教訓にはなったでしょうね』

「ある日ラユステは『よし』と頷くと国民が投函しようとした瞬間に目安箱から飛び出します。長蛇の列を作っていた国民達は皆がそれを目撃したのです」

『箱入り生活も終わりにしようということですか』

「ラユステは声を大にして言います。『私はこの目安箱の中で国民達の声を、願いを聴き続け、叶えられるならば叶えてやろうとした。だがお前達は自ら願いを叶えることを捨てこの目安箱に頼るようになってしまった。民を幸福にする為に設置した目安箱で民が堕落していくのは見るに堪えない。今日を持ってこの目安箱を終了する』とあられもない姿で」

『散々貴方の被害に遭っていましたからね』

「しかし堂々としたものでしたよ。色々あってもやはり女王といったところでした。そして俺は撤去されることとなりました」

『それで貴方の人生は終わりと言ったわけですね』

「いえ、撤去しただけで目安箱としては残っていましたからもう少し続きがあります。ラユステは物置で俺の手入れをしつつ呟きました『良い願いだけを叶え続ければきっと良い国になる。そう思っていたのに、結局私は国を、国民をダメにしてしまった。王として失格なのだろうか』と」

『それよりも目安箱への潜伏、露出の激しさを考えた方が良いとは思いますがね』

「俺は言います『取返しのつかない段階になる前に決断できたラユステは十分立派だ。願いの本質に気づくことができたんだ。願いを叶えようとする思いの強さ、それを日々の力の糧にできるからこそ価値があるんだよ』と」

『色欲に促され安易に露出を加速させた目安箱の台詞ではないですがそうですね』

「『盲目の妹がいる少年の時もそうだ。俺が奇跡を起こさなければ起こさないで妹への優しい想いを力に変え、苦労したとしてもきっと妹を幸せに導いてやれただろう。だが国民全員がそういった方向に進めるとは限らない。そんな人達を導けるのはこのことを経験として学んだ君のような人だよ』と言うとラユステは恥ずかしそうな顔で俯きます」

『格好の方には恥ずかしがらないのに』

「本当ですよね、凄いエロかったのに」

『最後に炭の粉末1キロをどうぞ』

「粉状は辛い。その前に最期の報告を。『俺を封印したとしてもきっとその奇跡を頼ろうとする時は来るかもしれない。だから最後に君の願いを叶えよう、何を願うかはわかっているね』と言うとラユステは最後の願いを投函します。『奇跡を叶える目安箱をこの世界から消してください』と」

『それで貴方はその願いを叶えて自決したと』

「はい、体は木製でしたからあっさりと炭になりましたよ。今も炭の過剰摂取で炭になりそうですが」

『それは自業自得です。貴方も安易に願いを叶えさせた共犯なのだから甘んじて受けなさい』

「まあ、そうですね。ラユステはきっと良い統治者となれたことですし、めでたしめでたしと。一応お土産はラユステの愛用していた高級クッションです」

『ふむふむ、中々洗練されたクッションですね。……おや、ポケットから紙がはみ出していますよ』

「これは……ラユステの最後の願いが書かれた紙ですね。燃えた筈なのに」

『貸して見なさい。……なるほど、この紙はまだ願いを叶えきっていないようですね。裏に小さく別の願いが書かれています』

「どれどれ、『目安箱さんの魂に安寧を、ありがとう』ですか」

『難題ですね、頑張って叶えてあげてください』

「前向きに検討させてもらいます」

『変わりませんね貴方も。罰ついでに炭を作った台所の片付けもお願いしますね』

「はいはい」



「あ、これチョコを炭化させたものだったのか。もうちょっと味わえば……いや炭だったしな。まあいいや、やっほう」

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