全てをぶちのめす系のストロング0スタイル


 大神官のおっぱいがニセモノだという真理に触れてしまった俺たちだが、まぁやってしまったことは仕方ない。ぶっちゃけ直接見てるわけでもないからね。微乳だからって差別はしない。


「しかし大神官様がまさかなぁ……」

「お前そっちで大神官様の直属になったのかよ!」

「でっかいのは正義だろ!」

「馬鹿野郎!」


 俺は酔拳ででっぱい好きの兵士をどつき倒す。こういうヤツがいるから世界は乱れるんだ!見つけたぞ!世界の乱れ!!


「な、なにするんですか!!」

「いいかお前ら!」


 俺は叫ぶように持論を展開する。


「おっぱいに貴賎などない!!」

「や、それはわかってんだけど、騙されてたってのは許せなくないですか?」

「馬鹿野郎おおおおっ!!!」


 再び兵士が吹っ飛んでいく。馬鹿な発言をしたら鉄拳制裁されるのは仕方ないだろ。


「そういうコンプレックスって、萌えね?」


 俺のその発言に、兵士たちから叫びごえが上がる。賛否両論のようだ。


「わかる!ものすごくわかるぅ!!!」

「わかんねぇよ騙されてた相手にそんなん思えねぇよ!!」

「馬鹿野郎おおおっ!!」


 兵士同士で殴り合いになってしまったじゃないか。俺が振ったネタだけどお前ら落ち着け。


「みんなすまん。俺の発言で殴り合いはやめろ。まずはもう一杯飲め」

「そっすね」

「さ、さっきは……悪い」

「気にすんなよ」


 仲直りしてくれたようで何よりだ。もっと飲めお前ら。


「男って、バカしかいないの?」


 アニスが事実に触れてしまったが、実際そうだとしか言えない。


「そだよ」

「なんか男って存在が許せなくなってきた」

「仕方ないだろ、男と女以外がいたらそっちに行けばいいけどそんなんいないんだから。まぁ飲めアニス」

「変なことしないよね」

「するわけないだろ」

「そう言われるのもなんかムカつく」

「女心って難しいな」


 アニスにもストロング0を投入しながら俺は思う。トン単位のストロング0があるから当分売るには困らないが、さてはてどうしたものか。少なくとも戦闘に使えないのは厳しいな……ストロング0系のスキルで使えるの酔拳だけかよ。


「そういやアニス」

「なに?」


 早速飲んでるのかよお前。そりゃ俺がふったけどさ、ストレス溜まってんのか?まぁ飲め。


「大神官どうしたの?」

「借りた部屋のベッドで寝てるよ」

「そっか。ちょっと会ってくる。あと頼む」

「いってらー」


 ストロング0を飲みながらアニスが手を振る。俺はアニスが借りた部屋に向かうことにした。


「すまんね」

「いえいえ。しかし大神官様、大丈夫でしょうか?」

「単にアルコールのせいだから大丈夫だ」

「はぁ」


 部屋に入ると、大神官はまだ横になっていた。


「入るぞ」

「……酷い」

「酷いのはどっちだ。兵士の中には『裏切ったな!父さんと一緒でぼくを裏ぎったな!』って叫んでるヤツもいたぞ」

「なんで父さんなんですか?」

「すまん、今のは話を盛った」

「はぁ」


 気の無い返事をしながら大神官が起き上がる。おい、ちょっと待ってくれなんでなにも付けてないの?あ、そうかブラとったんだ。綺麗な薄いピンクの突起が見えてしまって俺は焦る。


「ちょっと!見えてる!」

「なにがです?」

「胸元!胸元ぉ!!」


 大神官が真っ赤になって胸元を抑える。こっちもそういう文化圏か。


「見ました?」

「悪い」

「……最低ですね」

「ごめん」


 どっちもいける口の俺としては、十二分にご褒美である。落ち着けマイサン。


「ひとつ聞きたいんだがいいか?」

「よくないです」

「非常時以外には能力使わないから、それなら聞いていいか?」

「……本当は一切使って欲しくないんですが」

「魔王とか突然攻めてきたら使わせてくれ」

「……仕方ないですね。そのレベルなら許します」

「で、聞いていいか」

「バストサイズ以外なら」

「それは聞かねぇよ」

「で、なんですか?」


 俺は聞きたいことがいろいろある中で、どうしても聞かないといけないことを聞くことにした。


「異能者ってのは、なんなんだ?」

「正確なところはわからないですが、別の世界で亡くなった方の魂がこの世界で肉体を持って現れた方だそうです。その際にこちらの人間にはない能力を持てたとか」

「なるほど。やはり俺も死んだのか」

「おそらくは」

「しかしその異能ってのは何で手に入ったんだろ」


 大神官が胸元を抑えながらこちらを見ていう。できたらもう一回見たい。


「異界渡りの神の権能だと言われていますね」

「異界渡りの神」

「どうやらこの世界の維持の為に、増えすぎた魂をこちらの世界に送っているようです」

「邪神だろそれほぼ」

「しかしこれまでにあなたのような方はいませんでした。世界を滅ぼしかねない力を持っていたのは」

「俺、魂ごと消滅されそうになってたな、そういえば」

「?」

「しかしその時にこいつがあったんだ」


 俺はストロング0の缶を見せながらそういう。


「この筒ですか?」

「あぁ。変なこと言うが、ひょっとしたらこいつが異世界で暴れたかったのかもしれないな」

「そんなバカな」

「そうとしか思えないんだよ」

「いや、それはないと思います」

「そうか?」

「そうですよ!筒に意識があるとでも?」


 大神官が身体を乗り出す。見える、見えるぞ!私にも、ピンクが見える!


「普通に考えたらそうなんだが、そうとしか思えないな」

「いくらなんでもありえないです!」

「大神官様!!」


 兵士が飛び込んで来た。あ、お前にも見えたのか。前屈みになっている兵士に俺が先に聞く。


「何かあったのか?」

「魔王軍のものと思われる巨大なゴーレムがぁ!」

「わかりました、すぐ行きます!」

「その前にさらしでも巻いてくれ、チン○痛くなってきた」


 大神官が胸元を抑える。普段気にしてないんだろうな。大神官が準備をしている間に俺は巨大なゴーレムの前に走りだす。


 巨大ゴーレム、18メートルくらいの高さがある。お台場にあるあの像みたいなサイズだな、あっちのがかっこいいが。


「デケェな……異能なしだとムリだろこれ」


 巨大ゴーレムが拳を振り上げ、そして振り下ろしてくる。巨大な拳が俺を襲う。ストロング0酔拳の回避技能は結構役に立つ。ちょっと酔拳も試してみるか。かわしながら足元に近づく。そして拳を叩き込む。痛え!


「かったいじゃねえかよクソ!」

「さすがに素手では無理かと思います」

「大神官!」


 いつの間にか胸に包帯を巻いている大神官が現れた。大神官が眼を見開く。


「その力、奪わせてもらいます!」


 ゴーレムから異音がする。しかし、動きが遅くなってきたものの、ゴーレムは止まらない。


「そんな!なんで!?」

「十分な効果がないってことか!?」


 まずいじゃないか?大神官に向かって拳が振り下ろされる。大神官を抱えたまま俺はゴーレムの拳をかわす。


「あ、ありがとうございます」

「ここまでくると、使うしかないか?」

「でも……」

「バカ!迷ってる場合じゃねえ!このままだと街に被害が出るぞ!」

「……わかりました」

「よし、行くぞ!」


 俺はゴーレムの拳を交わしつつ、ゴーレムのそばに接近する。そのままゴーレムをどんどんよじ登ってゆく。


「このくらいでいいか。行くぞ!近接!ストロング0おおおおっ!!!」


 内側からストロング0の缶が溢れだす。ゴーレムの核が壊れたのだろうか、そのままゴーレムが停止した。


「これが……ストロング0……」

「後でゴーレムごと売りとばそう」

「逞しいんですね」


 大神官、そんなこと言うタイプなんだな。


「そりゃ逞しくないと生きていけないだろ」

「そうですね……あっ」

「大丈夫か?」


 大神官が倒れそうになったので俺は思わずかかえる。倒れそうになった大神官の胸元見えてるよ、ちゃんとしてくれよ立っちゃうだろ。


「お優しいんですね」

「そうでないやつは生きていく資格ないだろ」

「そうですね……」

「それより見えてるから!」

「もう!」


 膨れる大神官を見ながら俺は思った。戦いがない世界を作れば、もう異能を使わなくていいな。そうするしかない。



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