点が繋がり線となり、やがて一つの形を結ぶ――呪物に誘われた者の果ては?

亡霊が生み出した曰く付きの品『呪物』を巡る群像劇から、物語はスタートします。

一つ一つの呪物がそれに関わる者達を大きく翻弄する、オムニバス形式で綴られる物語はどれもぞっとするほど恐ろしく、自分の身近にあるものももしかしたら……と考えて、トイレに行くどころか身動きするのも怖くなってしまいました。

しかし、恐怖は呪物単体に留まりません。
これらの群像劇は物語の前夜祭にすぎず、全てのエピソードが一つに収束するのです。

後半はもう、先の見えない恐怖、亡者に襲われる恐怖、欲望に囚われた人間の恐怖と、様々な恐怖のオンパレード!
一話読むたびに心が削られ、もしや自分自身も『読む』という行為で呪物に触れてしまったのではないかと、本気で震えました。

けれどこの作品の素晴らしい点は、ただ怖いばかりではなく、その恐怖の裏に潜む悲しみや弱さについて触れられていること。

恐ろしいだけの存在であった亡者達も元は自分と同じ、いやそれ以上に傷つきやすく繊細な心を持つ『生者』だったのだと気付かされた時は、不覚にも涙が零れそうになりました。

呪物に導かれた者、そして呪物が導く先には何が待ち受けているのか?
ホラー好きな方もそうでない方も、まずは一話を開いてみて下さい。

呪物に魅入られるかの如く、止まらなくなりますよ!


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