8-16(水)〜8-17(木)のブログ

     2017-08-16 20:47

         ☆無題


   イケメンに拾われた。


   お腹すいた。

   財布にはもう、いくらも残ってない。

   オタクと別れても、行くとこなんてない。

   夜まで渋谷をうろついてて、

   近くのマクドに入って、ポテトだけ注文したけど、

   こんなんじゃたりない。


   大事に食べてたら、男が声かけてきた。

   オタク男と違って、けっこうイケメン。

   服もブランド物だし、いい靴履いてる。

   「オレもメシまだ食ってないんだけど、いっしょにどう?」

   とか誘ってくる。

   「おごってくれるならいいよ」

   もうこっちもヤケ。

   なんでもいいから食べさせて。




     2017-08-16 23:36

         ☆無題


   なんなの? この男!!

   ホテルに連れ込むなり、いきなり服を脱がされた。

   いちおうピザの宅配電話してくれたけど、

   すぐにベッドに押し倒された。


   こいつの、でかい。

   こんなの入るわけない!

   イヤがってるあたしにかまわず、両手で押さえつけて、

   無理やりねじ込んできた。

   全然濡れてないのに、引き裂かれるみたいに痛い。

   あんまり痛くて、涙流して苦しんでるのに、

   それをヨガってるって勘違いして、

   ガンガン突き立ててくる。


   あたしの気持ちなんて、全然考えてくれてない。

   エッチって、そんな一方通行なもの?

   男はただ、ヤリたいだけ?

   女は、ガマンしてるだけ?

   しかもこいつ、なかに出しやがった。


   気持ち悪い。

   吐き気がする。

   息ができない。

   ここ数日の、ほんわかした時間が、まるで夢の様。

   あたしはまた、罪を償ういばらの日々に戻る。


   それでもあたしは、ピザを食べる。


   いつかきっと、この贖罪しょくざいも終わる。

   そう思わせてくれたのは、あのオタク。

   一縷いちるの希望があるなら、

   ここで死ぬわけにはいかないから。




ブログの文字が歪んでくる。


ここまで栞里ちゃんに辛い思いさせたのは、ぼくなんだ。

みくタンとダブルブッキングなんかして、栞里ちゃんを怒らせたから、こんな事になったんだ。

だから、これを読むのは、栞里ちゃんに対する、ぼくの贖罪しょくざい

涙を拭ったぼくは、次の記事をクリックした。



ファーストフードで栞里ちゃんに声かけてきたその男は、女とヤル事しか頭にないヤツだった。

自分の話しかしないし、何人ナンパ成功して、自分のモノがどんなにでっかくて、すごくエッチがうまくて(だったら相手の事も考えろよ)、たくさんの女をイカせたっていう様な、くだらない自慢話しかしない様なヤツだった。

朝まで何度も何度も、あらゆる体位をとらされて、栞里ちゃんはその男に抱かれまくり、白濁とした液をからだの中にも外にもに浴び、、、


つっ、、、辛いっ!

こんなのは読んでて辛すぎる!!

自分の彼女が、他の男とエッチしてるブログを読むなんて!!!

こんな寝取られ系の鬼畜話なんて、エロマンガでも想像もできない。


栞里ちゃんからその話は聞いてたものの、実際に活字で読むと、そのシーンが脳内にビジュアルとして浮かんできて、いたたまれなくなってくる。

もう耐えられなくて、ブログを閉じようとした親指を、ぼくは必死の思いで押しとどめた。


ぼくはもう、逃げないって決めたんだ!

どんな過去でも、栞里ちゃんのすべてを受け入れるって、誓ったんだ!


今は読んでて心が折れそうになるけど、物語の結末はわかってる。

いずれ栞里ちゃんは、ぼくの元へやってくる。

その未来は確かな事なんだから、ぼくはそれを心の拠り所にして、この罰に耐えるしかないんだ。


勇気を振りしぼり、ぼくは次の記事を開いた。




     2012-08-17 10:08

         ☆無題


   あいつはあたしの横で、アホ面さらしてすやすや眠ってる。


   、、むなしい。

   あたし、、 なにやってんだろ?

   まだ、あそこがヒリヒリ痛む。

   けがらわしい液が、じわりと太ももに垂れてくる。

   あまりの痛さに涙が出てくる。


   そうじゃない。

   からだが痛いから泣くんじゃない。

   痛むのは、心。


   確かにイケメンだけど、こいつの中身は、めっちゃブサイク。

   っていうか、中身なんて、なんにもない。

   からっぽ。


   自分をいかにすごく見せるかが、こいつのすべてで、

   女なんてただのエッチの道具。

   だったら、AVでも見て、自分でシコってりゃいいじゃん。

   そんなに自分が可愛けりゃ、自分とエッチしてろよ!


   あたし、、、 バカだ。

   今頃、あのオタクの事が、よかったとか思うなんて。


   少なくともあいつは、あたしの事を

   ちゃんとひとりの人間として、見てくれてた。

   あたしが死んだりしないかと、本気で心配してくれてた。

   さえないヤツだったけど、

   あたしをスケッチしたり、

   イラスト描くのに熱中してる姿は、

   不覚にもカッコいいって思ってしまった。


   なにかを一生懸命やってる人って、家族にも友達にも、

   今までいなかったかもしれない。


   みんな自分の利益しか考えず、自分勝手な事ばかりして

   その日その日が無事に終わればいいやって感じなのに、

   オタクはいつでも一生懸命、あたしの気持ちを考えてくれてた。


   こんなあたしを、、、

   アカの他人で、ただのビッチな家出娘を、

   とっても大事に扱ってくれた。

   そんなのは、ありえない。

   ありえない事だったのに。


   彼女がいてもいい。

   二股かけられてても、いい。

   オタクに、、 会いたい。


   もしかして、あたし、、

   あのオタクが好き?


   ありえない。

   これは恋愛感情なんかじゃない。


   ほんとに?!

   ほんとに恋愛感情じゃない?


   オタクに会いたい。

   会って、それを確かめたい。


   でも、、

   怖い。


   やっぱり、あきらめよう。

   あたしはビッチ。

   ただ、汚れて堕ちていくだけの存在。

   幸せなんて、望んじゃいけない。


   


ぼくに会いたいと願いつつ、それを実行に移す勇気もチャンスもないまま、その日も栞里ちゃんは一日中、その男に抱かれていた。

そいつは散々栞里ちゃんをもてあそぶと、飽きたオモチャを捨てる様に、ドライブ先の山奥の公園で、栞里ちゃんを置き去りにして、逃げた!


置き去りにして逃げた?

そっ、そんな人間がほんとにいるのか?

鬼畜過ぎだろ!




     2012-08-17 22:18

         ☆無題


   まあ、殺されて捨てられるより、マシ?

   実際、その可能性はあったわけだし。

   

   ここ、どこだろう?

   横浜か、川崎くらい?

   はるか向こうには海が見える。

   とりあえず、今夜の寝床を確保しなくちゃ。

   買ってもらったパンは、まだ残ってる。

   ってか、コンビニパンおごったくらいでいい気になって、

   ショボすぎ。


   だれも来そうにない公園の森の奥に入り込み、

   大きな木の下で、あたしは横になった。

   こんな場所でも、さっきまでの男の隣より、マシ。

   むしろ、捨ててくれてありがとうって感じ。

   とりあえず、強がってみる。

   家出したのが夏でよかった。

   冬だったら確実に凍死。


   つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る