巨乳ツインテールには抗えない

「ごめ~ん。急に呼び出して」


 待ち合わせの私鉄の駅前。

少し遅れてきた麗奈ちゃんは、改札を抜けるとぼくの方へ駆け寄ってきた。

両腕を軽く曲げて振りながら走り寄る姿が、いかにも女の子っぽくて萌える。

頭の上で結んだツインテールが大きく左右に揺れてる。

やっぱり、麗奈ちゃんみたいな小柄な女の子のツインテ姿は、いい!

真っ赤なチェックのミニスカートがひらひらと翻り、むっちりとした太ももにからみつく。

アイドルに間違えられるんじゃないかってくらい、そんな麗奈ちゃんは可愛いくて、女の子フェロモンをプンプン発散させてて、見てるだけでドキドキしてくる。

歩調に合わせて、その巨乳がアニメやゲームのキャラの様に上下に弾むのが、ブラウスの上からでもはっきりわかり、ぼくは顔を赤らめた。


「よ、よく、ぼくのケータイ番号わかったね」


目の前に立ってハァハァと息を弾ませ、少し頬を染めて上目遣いにぼくを見つめる麗奈ちゃんにドギマギしながら、ぼくは訊いた。


「こないだヨシキが、あたしのスマホからミノルくんに電話したじゃない。その履歴から」

「あ。そ、そっか」

「よかった。今日ミノルくんに会えて」

「え?」

「さ。行こ!」


麗奈ちゃんはそう言うと、ぼくの腕を取って歩きはじめた。


ええっ?

麗奈ちゃんがぼくに触れてくるなんて、、、


腕を組んで歩いていると、麗奈ちゃんの大きくて柔らかな胸が、ぼくの二の腕にプニプニと当たってくる。

嘘だろ~!

な、なんて気持ちいい感触なんだ!

やばい、、、

思わず興奮してくるじゃないか!


「そ、そう言えば、『パソコンのもので買いたい』って言ってたけど、なんなの?」


気を逸らそうと思い、ぼくは麗奈ちゃんに訊いた。


「レタッチソフトなの」

「『Photoshop』とか?」

「うん。カメコさんからデータもらって、それを自分でもレタッチとかしてみたいって思って。CGとかも作ってみたいし」

「そうなんだ」

「ミノルくんフォトショ(Photoshopの略)使ってるんでしょ? 結構難しい?」

「まあ、、、 初心者がいきなりCGは、ハードル高いかも」

「え~っ。ほんとに? どうしよぉ~」

「最初はやっぱり、だれかに習った方がいいよ」

「じゃあ、、、 ミノルくん、教えてくれないかな?」

「えっ。ま、まあ… いいけど、、」

「ほんと?! やったぁ♪」


麗奈ちゃんはそう言って笑顔を見せて、ぼくの二の腕にギュッと抱きつく。

電車に乗って秋葉原に着くまで、彼女はそうやって、なにかとぼくのからだに触れてきた。

そういうのってすごく嬉しいし、相手への親近感も増してくる。

うるうるした瞳で上目遣いで見つめられるのも、まるで小動物の様で愛おしい。

アイドルの様な今日のカッコとツインテールも、自分的にどストライク。


麗奈ちゃん、、、 やばいっ!

以前から気になる存在だったけど、、、

本気で惚れてしまいそうだ!



 秋葉原はぼくのテリトリー。

原宿と違って路地裏まで知り尽くしてるおかげで、麗奈ちゃんのエスコートにも迷いがない。

彼女は終始ハイテンションで、腕を組んできたり手を繋いだりと、まるで恋人同士。

ダサいカッコのオタク男子が、ぼくと麗奈ちゃんを羨ましそうに振り返る。

それはまるで、ぼくがヨシキと麗奈ちゃんを羨ましく見てた姿、そのままだ。

今のぼくは、そいつらから羨ましがられる立場。

なんだか優越感さえ感じてしまう。

栞里ちゃんにフラれたショックも忘れて、ぼくは有頂天だった。


「フォトショって高いのね~。麗奈、そんなにお金ないし」

ショーウインドに並ぶ『Photoshop』のパッケージを見て、麗奈ちゃんはため息ついた。

「ぼくのをコピーしてやってもいいけど(作者註:ダメです)、うちはMac版だし」

「え~。残念」

「でも、アカデミック版(学生向けパッケージ)なら、かなり安く買えるよ」

「麗奈、フリーターだし」

「そっか、、、」

「え~ん。困ったな~」


すがる様に、彼女はぼくを見上げる。

そんな顔見てると、なにかしてあげたい気持ちになっちゃうじゃないか。


「じゃあ、ぼくの名義で買ったげようか?」

「え。いいの? ミノルくん、優しい♪」

「買うのにサインとか学生証が必要だから、とりあえずお金は、ぼくが出しとくから」

「ありがと。あとで払うね」

「ついでにタブレットも買えば? 細かい作業には便利だよ」

「う~ん… それだと予算オーバーかな~、、、」

「じゃあ、これはぼくからプレゼントするよ」

「えっ。嬉しい♪ 麗奈幸せw」


麗奈ちゃんはそう言って、全身で喜びを表す様にぼくに抱きつき、満面の笑みを浮かべた。

彼女のホクホクと喜ぶ顔が見れるなら、タブレットのひとつやふたつ、安いもんだ。



「麗奈のおすすめカフェに行こ」


買い物がひと段落した後、彼女はそう言って、ぼくを秋葉原の片隅にあるカフェに案内してくれた。

そこはオタクの街には不似合いな、女の子っぽい内装のお洒落なカフェだった。

カフェといえば、普段はメイドさんがいる様な所しか行かないぼくには、こんな洗練されたお店は新鮮だけど敷居が高く、ちょっと緊張。花の様に可愛い麗奈ちゃんといっしょだから、なおさらだ。


 それでも時間が経つのも忘れるくらい、ぼくは麗奈ちゃんとの話に夢中になり、いろんな事を喋った。

彼女も腐女子でバリバリのコスプレイヤーで、趣味でイラストも描くみたいなので、かなりディープなオタ話も違和感なくできるのが嬉しい。

栞里ちゃんにフラれる原因となった、バーチャルカノジョのみくタンの画像も、麗奈ちゃんにはノリノリで見せる事ができるくらいだ。

こうして麗奈ちゃんと向かい合って、彼女の親しげな微笑みを見てると、ぼくたちは恋人同士だって錯覚さえしてしまいそうになる。

やっぱりぼくの恋の相手は、栞里ちゃんみたいな普通の女の子より、オタク女子の方がいいのかもしれない。



「あれ、ミノル? 珍しいな、こんな所で」


どのくらい麗奈ちゃんとそうしてただろう。

男の呼びかけ声に、ぼくはハッとして振り向いた。

テーブルの傍らに立って、ぼくと麗奈ちゃんを見下ろしてたのは、、、

ヨシキだった。


つづく

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