6話 2人の秘密




ポツポツと地面に落ちる雨音に。

火照った身体を、火のついた囲炉裏で風邪をひかないように暖をとり。


そして替えの服を用意されていない俺はパンイチの姿のまま、ひんやりとした床に寝そべり、さっきの錠剤のせいか、やけに身体中が熱く、少し息をあげながら、俺の上に乗る少女に問いかけた。



「はぁ…はぁ…俺に…何を飲ませた?!」



俺がそう言うと、少女は大人の女性にも負けない妖艶な笑みを見せると、俺の耳元で、安心して毒は入ってないわ。ただ……。と言うと、着ていた衣服を脱ぎ始めた。


上半身裸になった少女の肌は透き通るくらいに綺麗な肌をしており、熱を帯びたその赤い瞳は、恐ろしくも綺麗だと一瞬、思ってしまった。

少女は俺の身体を優しく触れると。



「さぁ、始めましょう」



と言った。

いや、始めるも何もマジで意味わかんねーんだけど!!



俺がどうしてこんな状況になったかというと、遡ること5時間前。

俺は範頼をラーメン屋に誘おうと思って、範頼の部屋に行ったが、ノックをしても返事がないという事は、どこかに出かけてるのか?

まあ、今日じゃなくても別の日に誘う事にするか。



今日は寺子屋もないし、行きたい場所もこれといって…そうだ、久しぶりに甘味処にでも行くか。



俺は町に出るため、動きやすい袴に着替え、軽く髪を一つに纏めると、京の街へと繰り出しに行くのであった。


俺は人通りの少ない、少し殺風景な路地を歩きながら、美味しい甘味処のお店がないか探していると。

甘味処とはまた別の少し小洒落た喫茶店に目が止まった。



たまには、こういうこじんまりした喫茶店も悪くないかもな。

外に出てある看板に目を通すと、本日のオススメは、ガレットとオニオンスープと……いや、昼ご飯はもう食べたから読まなくていいか。

とりあえず本日のデザートはなんだ。

プロフィットロール?なんだそれ?

えっと内容は、アイスクリームの詰まったシューの上に熱々のチョコレートソースを、お好みでかけてお召し上がり下さい。


ほう、美味しそうだな。

よし、今日はこの店で決まりだな。


喫茶店の中は、アンティークで統一しており。洒落た感じで、棚なだどはわざとペンキが剥がれた感じでいい味が出ている。


俺は陽のあたる窓際に座ると、店員さんがオーダー表を持ちながら注文を伺いに来たので、俺は外に書いてあった、プロフィットロールというやつと紅茶を一つ頼んだ。


頼んだデザートを待ちながら、俺はその間、暇つぶしに持ってきた本を読み始めた。



「すみません、ここ空いているかしら?」



突然、少女に話しかけられ。

顔を上げるとそこには、腰まで伸びた綺麗な白い髪の毛に、透き通るくらいの白い肌。

そして吸い込まれそうな赤い瞳。

いわゆるアルビノというやつか?でもなんかアルビノのそれとは違うような…。



"稔お兄ちゃん。さっきの約束、絶対だよ"



あれ?何だ今の記憶…それに誰なんだ、あのぼやけた少女は?

……まあ、あれだな。

思い出せない記憶は無理に思い出さなくていいって、婆ちゃんが言ってたわ。たぶん。



俺は周りを見渡し、お店の様子は混んでいるわけもなく。寧ろ空いている方だ。

不思議と思いながら少女に目をやると、俺はニコッと笑い、はい、どうぞ。と返した。


別に断る理由もないし。

それに世の中には、相席を好む子だって、いてもおかしくないだろうしな。



俺は再び本を読みだすが、目の前に座った少女の視線が少し気になる。

なにせ、俺の事をめちゃくちゃガン見しているのだから……

俺は読んでいた本をやめて、少女に話しかけた。



「あの、何か頼まなくてもいいのですか?」



俺がそう言うと、少女は優しく微笑んだ。



「そうね。これといって食べたい物は特にないわ」



特にないって、何しに喫茶店に来たんだよ!!

ただお冷やをもらいに、冷やかしに来たのか?

一体何を考えているんだ、この女は。


俺はため息を吐くと、そうですか。と言った。

そしてすぐに、俺の頼んだプロフィットロールと紅茶が来て、甘い物を堪能したいが、やはり少女の視線が気になり食べるに食べられない。

なんせ、人に見られながらなんて食いづらいだけだろ。


俺はチラッと少女の方を見ると、一口食べます?と言うと、俺の返事に少女はクスッと笑った。



「結構よ。それよりも、義経は気にならない?この世界の事について」



は?

なんでこの子俺の名前知ってんの?

そもそも自分の名前を名乗ってないし。いくら源家が有名だからって、俺の知名度は低いはず。

てことは、この少女も転生者で間違いないはず。俺の第六感が、そう言っているから間違いない。


俺は持っていたスプーンを皿に置き。


「気になるも何も、まず貴女が何者なのか名乗ってもらいたいものですね」


俺がそう言うと、少女は少し悲しげな表情を見せた。



「…そうね。弥生と呼んでちょうだい。それと大事な話があるから、そのデザートを食べ終えたら、場所を移したいのだけれど。義経は、この後時間は大丈夫なの?」



弥生にそう言われ、本当は範頼を誘ってラーメン屋に行くはずだったが、それもキャンセルになった事だし、別にいいか。

それに大事な話って言われると気になるしな……



俺はシューアイスを頬張りながら、別に予定はないし。と食べながら言い。

うん、別にいいよ。と返した。


それにこの少女。何か色々知ってそうだしな。俺の勘だけど。

俺がそう返事を返すと、弥生はニコッと微笑み、俺の食べかけのシューアイスをパクリと食べると、それじゃあ、移動しましょう。と言った。


俺の最後のアイスが……。




*************




その後、喫茶店を出た俺は、弥生と一緒にとある場所へと向かっている最中だった。

まあ、どこに向かっているかは俺には分からんがな。


それにしてもこの沈黙の時間は正直キツイ…何か話した方がいいのか?



そんな事を考えていると、ポツポツと雨が降り始めてきた。



「このタイミングで雨とか最悪だろ…そもそもこの辺に店どころか、人1人通らない場所の森林だぞ?ふざけてるのか?」



そんな俺の様子を見ていた弥生が、俺の前まで来ると。



「お散歩がてら2人っきりでデートがしたかったのだけれど、雨が降られてしまったらデートが台無しだわ。

仕方ないけれど、お散歩デートを中断して、瞬間移動テレポートで、屋敷へと案内するわ」



と言った。

というより始めからそうしてくれ。




瞬間移動テレポートで、弥生の屋敷へと到着した俺たちは、大広間だろうか。

俺の目の前には、目つきの悪い兄さんが俺を睨みつけるなり、大きく溜息を吐き始めた。



「はぁー…あのな、御子さんよ。

外に出かけるのはいいが、あまり目立った行動は控えてくれよな。

仮にもアンタは、この街の神様なんだから危機感というものを弁えてくれないと、こっちが困るんだよ。

もし、御子さんに何かあったら俺らの責任で首チョンパだよ?わかる?

それに、そこのガキンチョはなんだ?」



と、長々と話しをし始めたが、誰がガキンチョだ、この小童が!!

俺が少しイライラしていると、次は優しそうなお姉さんが現れてきた。



「あらあら、朔ちゃん。少しお口が悪いわよ。

それに御子ちゃんもお隣の子も、雨で服が濡れているし、早くお風呂に入らないと風邪ひいちゃうでしょ。

まずは、お風呂が先よ。」



と、優しく微笑んだ。

……え、てか弥生ってみこって言われてたけど、これはどっちのみこなんだ?まあ、後で聞いてみるか。



「それじゃあ、義経。一緒にお風呂に入りに行きましょうか」



弥生がそう言うと、俺も返事を返すように、そうですね。と返した。

……ん?



「待て待て待て、弥生さん。今さっきなんと仰りましたか?」



俺がそう言うと、弥生はキョトンとした顔で、一緒にお風呂に入るのよ。と、言ってきやがった。

てか不覚にも少しドキッとしてしまった。




「あのー…弥生さん、私は男で貴女は女性なんですよ。

なぜこの流れで一緒にお風呂に入るのか理解し難いのですが…」



俺がそう言うと弥生は、俺の方へと近づいて来た。



「弥生は、義経と一緒にお風呂に入りたいの。

それに男女だからと言って一緒に入ってはいけないという理論はないわ」



「うぐ……確かに…」



いや、そんなこと言われたら、反論できないわ…卑怯だろ。


俺が困っているのを見かねて、目つきの悪い兄ちゃんが、溜息を吐きながら割って入って来た。



「あのな、御子さんよ。

あまり彼を困らせるな。分かったらさっさと別に別に風呂入れ!

それと…義経つったっけ?風呂場案内するから着いて来い」



そう言うと、風呂場へと案内してくれた。

口は悪いが、性格はまともそうだな。

てか、背後から凄まじいオーラが伝わってくるが、無視しとこう。



風呂場へと案内された俺は、ゆったりと広い大浴場に一人で寛いでいた。



それにしても鞍馬より広い大浴場だな。

まあ、俺は広い大浴場より2.5畳くらいの風呂場の方が落ち着くだけどな。


そんな事を一人で考えていたら、ガラガラっと誰かが入って来た。



「いやー、今日もいい仕事をしましたなー」



と言いながら身体を洗い始める爺さん。

多分ここの使用人だろ。

俺は爺さんの事を無視して、お風呂に浸かっていたら、身体を洗い終えた爺さんが、俺の隣に入って来た。



「やぁ、こんにちは。君があれかね。御子様のご友人とは。さっき使用人たちが天使のような美少年だったと騒いでおったぞ!

まあ、あれだな。幼い頃のワシそっくりだな!」



なんだコイツ…急に話しかけてくるなり、小さい頃の自分にそっくりだって。

え、じゃあ俺も将来はこの爺さんみたく頭ハゲるの?

なにそれ、凄く嫌なんだけど。



俺は無理に笑顔を作ると、あははは…ご冗談うまいですね。と返した。

すると爺さんは、冗談じゃないぞ。と返して来た。


いや、その下もいいから…それより、もう上がろうかな。

あまり長くいるとのぼせそうだし。



「それでは、お先に上がりますね」



俺はそう言うと、風呂から上がろうとしたところで、爺さんに呼び止められた。



「少年よ、ちょいとまだ話さんかい?

というより、寂しい爺さんの話し相手になってほしいんじゃよ。それに御子様について知りたくわないかのう?」



と言いながら少し口角を上げて見せた。

この爺さんは、弥生の付き人とか何かなのか?

だとしたら、少しは情報を知っておくべきだろ。

ま、のぼせない程度に話し相手になってやるか。



「仕方ありませんね。少しだけなら話し相手になってあげますよ」



俺がそう言うと、爺さんは、すまんのう。ありがとな。と言いながら、にこやかに笑って見せた。



「そうだな。御子様が生まれた時から話した方が良いか?そうだな。御子様の魅力を知ってもらうために、一から話した方が良いな。あれは10年前の話だったかのう…」



いや待て、過去の話とかクソどうでもいいんだよ。

俺が知りたいのはそこじゃあないッ!



「お爺さん、過去の話もいいですが、私が知りたいのはそこではありません。

弥生さんの、みこについて少し詳しくお訊きたいのですが、よろしいでしょうか?」



俺がそう言うと爺さんは、うむ、良かろう。と頷くと、みこについて話し始めた。



「弥生様の御子様についてだが、まず神を崇拝する巫女ではなく。

神の子と書いた、同じく巫女と同じ神を崇拝する神子でもない。


残るは天皇の子の御子だが、これもまた別なのじゃ。

漢字の読みは一緒だが、御子様は特別な存在であられ、また神の生まれ変わりとして、崇められておられるのじゃよ。


だが御子様は特別扱いされるのが、あまり好きではないので、世間には御子様のことは伏せておられるのじゃ。

どうか、御子様を今後とも宜しく頼みますぞ」



なるほどな。

てことは、転生者である弥生は神の中の神。

つまり、ゴッド・オブ・ゴッドってわけか!

なんだよ、その勝ち組人生。

俺の人生と代われよ。まじで。


まあ、弥生のことはある程度分かったことだし、そろそろ出るか。

まじでのぼせそうだし。



「お爺さん、ありがとうございます。

弥生さんとは、良い友達になれたらいいなっと思っております。

でわ、私はお先に上がりますね」



俺はそう言い、先に風呂から出ると、そこには弥生の姿があった。

俺は一瞬思考が止まった。

ハッと我に帰り、自分が今全裸なのに気づき咄嗟に自分の息子を急いでタオルで隠した。



「お前、マジでないわ!

もう俺、お婿さんに行けない……もういっそのこと俺を殺してくれ!!」



俺の大事な部分、このロリ、ガッツリ見やがった。

顔が可愛いからって許さねえぞ、俺は。

もう恥ずかしくて顔も見れん……



俺が1人辱めを受けていると、弥生は俺の方まで近づいて来た。

てか、かなり密着しすぎてはないか。



弥生は俺の顔をまっすぐ見つめると、安心して、弥生が貰うから。と言うと弥生は、俺の頬を優しく両手で包み込むと、そのまま俺の唇へと口付けた。



は?



あのこれ、なんて言うエロゲーですかね?

初日で出会った男にキスするなんてイージー過ぎない?

いや、そこじゃない。この女の行動に俺は理解できん!



軽くパニックになりつつ、いきなりキスされた事により息を吸うため口を開いたら、そこからヌルッと弥生の舌が入ってきた。


まじかよ…俺のファーストキス奪った挙句、ディープなキスするとか、最近の子供は、ませてるな。



そんな事を考えていると、口の中に何か錠剤のようなものが流れ込み。勢いでその錠剤を飲み込んでしまった。



俺は急いで弥生から離れて、錠剤を吐き出そうとしたが。

みるみるうちに身体は熱くなり。視界も悪くなり始めた。

俺は息を切らしながら、弥生に話しかけようとしたが、そこで俺は意識を失ってしまった。




************




ポツポツと地面に落ちる雨音に。

火照った身体を、火のついた囲炉裏で風邪をひかないように暖をとり。


そして替えの服を用意されていない俺はパンイチの姿のまま、ひんやりとした床に寝そべり、さっきの錠剤のせいか、やけに身体中が熱く、少し息をあげながら、俺の上に乗る弥生に問いかけた。



「はぁ…はぁ…俺に…何を飲ませた?!」



俺がそう言うと、弥生は大人の女性にも負けない妖艶な笑みを見せると、俺の耳元で、安心して毒は入ってないわ。ただ……義経の全てが知りたいの。と言うと、着ていた衣服を脱ぎ始めた。


上半身裸になった弥生の肌は透き通るくらいに綺麗な肌をしており、熱を帯びたその赤い瞳は、恐ろしくも綺麗だと一瞬、思ってしまった。

少女は俺の身体を優しく触れると。



「さぁ、始めましょう」



と言った。

いや、始めるも何もマジで意味わかんねーんだけど!!

いやいや、ここはこの痴女を止めるために身体を起こさないと……って意識はあるものの身体が動かねええええ!!



そうこうしていると、弥生は俺の耳たぶを軽く甘噛みし始めた。

弥生の唐突な行動に、思わず、んッ…と、耐えながら必死に声を出した。



「弥生……本当に限界なんだが……そろそろ俺を…解放してくれないか?……このままだと、頭がおかしくなりそう」



俺は涙目になりながらも必死に訴えると、弥生は俺の耳元で、安心して、今すぐ楽にヌいてあげるわ。と言った。


ん?

まさか、あの時飲ませた物って媚薬か?

いやいや、そんな子供に媚薬飲ませるなよ…。

どうにかして止めなくてわ。

そうだ!暗黒物質ダーク・マターのスキルを使えば止められるかも!


弥生が俺の大事な息子に手を伸ばそうとした瞬間。

弥生の目の前に鋭い黒助が現れ、弥生の手の動きが止まった。


どうやら間に合ったみたいだ。

でも、身体は動かなくてもスキルは使えるのは助かったな。

まあ、男だったらこのイベントは最高に良いイベントなんだが、まだ俺、子供だし、それに経験するには、あと5年は必要だな。


さてと何から話そうか。

というより身体の火照りと息の苦しさが、だいぶ楽になった。

てことは、弥生が飲ませた薬は媚薬じゃないんだな。良かった、良かった。



少し重たい身体を起こすと、俺の上に座っていた弥生は、ゆっくりと退いてくれた。

まだ頭はクラクラするが、俺は少し息を整え、弥生の方に顔を向けた。



「訊きたいことは山ほどあるが、まず何故あんな行動をとったのか説明してくれる?」



俺がそう言うと、弥生はクスッと笑った。


「好きな人にキスして何が悪いの?」



えーっと、唐突な告白とか初めてな上に、まず俺たち初対面だよな?

あー…まじか、言葉に困るわ。

ってきり俺は、この後、洋画とかでありがちなパターンで殺されるのかと予測してしまってたわ。

特にこの少女がエイリアンに寄生されてた奴で俺もエイリアンになると見てたのに…いや、それはそれで凄く嫌なんだけどね。



「えーっと…ありがとう?って言うべきなのか?

まあ、それは置いといて。好きの他に何か理由ないの?!」



5秒くらい沈黙が続き、そして弥生はゆっくりと口を開くと、稔お兄ちゃんだからだよ。と答えた。



「そうか。俺の生前を知っている者だったんだな、それは納得だわ…………

……………はあぁあああああああッ!!!」



俺が今物凄い変な顔をしているのは置いといて、何故この小娘は俺の生前を知っている?!

いや、普通にスキルの可能性もあるが、まさか弥生も俺と同じ時代に生きてた人間で尚且つ俺のことを知る人物な上に俺を好きな子と言えば、隣の家の花子かッ!!

いや、花子は人間じゃないし、そもそもメス犬だったわ。



俺は少し冷静になりつつも、弥生は何故俺の名前を知っているのか訊いてみた。


「何故、俺の生前の名前を知っている?」


俺がそう訊くと、弥生は俺の唇に人差し指をあてると、今は教えてあげられないわ。と答えた。



納得のいかない答えに俺は少しムスッとなると、弥生は俺の頬を優しく包み込んだ。



「安心して、今は教えられなくても時が来たら、必ず話すわ。

それと約束は絶対に守ってね…弥生をお嫁にもらってくれるっていう約束を」


弥生はそう言うと、本日2度目のキスをしてきた。


弥生が俺の唇からゆっくりと離れると、優しく微笑んだ。



「弥生は今でも、稔お兄ちゃんの事を愛しているわ。

安心して、この愛は永遠に消える事は無いのよ。

本当は、今すぐにでも全て話したいのだけれど、今はそんな時間はないわ。

これ以上無駄話していると、弥生も稔お兄ちゃんも消されてしまう可能性があるから、この話は2人だけの秘密よ」



弥生はそう言うと、俺の着ていた服を持ってきてくれた。


当の俺はと言うと、話がぶっ飛びすぎて、俺だけ置いてけぼり状態だった。


とりあえず、この話を他の者に話すと消されるって事はわかった。

ただ、弥生を100パー信じていいのかは、話は別だ。


それに弥生も転生者なのは、わかったが、さらに言うと俺の生前の名前を知っている。

そのうち話してくれるって言ってたし、それに消されるって事は、死を意味するんだよな。

じゃあ、誰にも話さないわ。俺死にたくないし。



全て着替え終えた俺は、玄関の方へ向かい。帰る準備をしていた。

玄関へ向かう途中、目つきの悪い男が俺に話しかけてきた。



「お、さっきぶりだな。チビ助、御子さんに何か変な事されなかったか?」



さっきの目つき悪い朔とか言われてた兄ちゃんか。

てか、俺はチビ助じゃねえんだよ。


「はい。何もされてませんよ。それではまた遊びに来ますね」



俺はそう言うと軽くお辞儀しながら玄関へと向かった。



「おう、次来る時は気をつけろよな。

じゃなきゃ御子さんに喰われちまうぞ」



このクソ男……!



「悪趣味ムッツリすけべ野郎がッ!」



「心の声漏れてるぞー」



態と聞こえるように言ったんだよ!



そのまま無視して玄関へと向かった。

玄関へ着くと、弥生が出迎えており、手には傘を持っていた。


そういえばまだ雨降ってんなー。

まあ、瞬間移動テレポートで濡れずに帰れるけど、人に見られたらまずいよな。



弥生は俺に傘を渡すと、今日は、本当に楽しい1日だったわ。と言った。


まあ、俺も本当の事を言うと嫌ではなかった。寧ろいい体験ができて良かった。

本音を言えば、あのまま続きがしたかったのは事実だが、この物語において薄い本の展開は期待するな。というメタ発言をしたところで、現実に戻るか。


俺は、お礼を言いながら傘を受け取ると、それじゃあ、また。と言うと鞍馬へと、帰っていくのであった。



その夜。

今日の出来事を思い出しながら、弥生がどういう人物なのか考えていると、スパーンッと勢いよく襖が開くと、義経、トランプしようぜー。とニコニコ笑いながら入って来たのは、言わなくてもわかるだろう。そう、範頼だよ。



俺は溜息をするのも、めんどくさくなり。もう眠いので、適当に追い払うか。



「そういえばさぁ、また隠し神が出没したみたいだけど、お前大丈夫なの?」



あ、そういえばそんな奴いたな。

まあ、大丈夫だろう。たぶん。



「隠し神については大丈夫でしょう。それより、早く俺の部屋から出てってくれないかな。それとデリカシーのない、その性格治した方がいいよ。将来的に」



俺がそう言うと、範頼は、あははっと笑い。



「まあ、いいや。それじゃあ、良い週末を」



と言うと、俺の部屋から出て行った。


なんだアイツ。

何しに来たんだ?……あ、そういえばミズハが、範頼は転生者ではなく部外者とか言ってたな。

んー、色々ありすぎて今は状況が追いつけないから、範頼の事は、ゆっくり監視していけばいいか。

それに今日は疲れたし、もう寝るか。




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