そこにいたのは....

そこには金髪の女がいた。長髪で端正な顔つきだ。胸はない。そいつは言った。

「はじめまして。私は遭難したものです。この島を探索していましたらこちらの屋敷を見つけました。怪しいものではありませんので悪しからず。」

何なんだこの女。

「あんたは何者なんだ?なぜ遭難した?」

「申し遅れました。私は衣伊夢都(ころもい むと)。船で旅をしていたのですが、嵐でしてね。船は大破。瀕死の状態でここまで来たものですよ。」

なるほど。確かに服はボロボロだ。しかし、このタイミングで現れるのは不自然だ。

「ところでそこに血の跡がありましたが、何かあったのですか?

例えば殺人とか?」

殺人があるのは確かだが、この女に話してもよいものだろうか。

「私は所謂探偵のようなものでしてね。この手のシチュエーションはたくさん経験してきたんですよ。隠さずお話しください。」

淡々と語る女を見て俺は直感的にこの女が犯人ではないと思った。

しかし、イトはそう思わなかったようである。

「あなたがどなたか。それはどうでもよいのですが、夏宮家の方々を侮辱されるのは許しません。」

イトがそう言う気持ちも分かる。この探偵とやらは満面の笑みなのだ。

まるで死者を冒涜するような笑み。この笑顔には好感を持てない。

「煙たがられますね。まあ仕方がないですね。こんなタイミングですし。

まあ、推理に困ったらいつでもお使いを。鮮やかに推理して差し上げましょう。」

どうしてこの女はこんなに上から目線に話すのか。

「とりあえずあげてくださりますか?大丈夫ですよ。怪しい者ではないので。」

怪しすぎるんだが。まあこの女を野放しのしておくのも嫌だし、食堂に連れて行った方がいいかもしれない。この女が絶対に犯人とは限らないし。

それをイトに言って食堂へ連れていく。イトは渋々食堂へと連れて行った。


イトが玄関へと戻ってきた。探偵は眠ったらしい。疲れていたのだろう。

探偵が言っていた大破した船はどこにあるのだろう。

修理して使えないだろうか。しかし、探偵の話を鵜呑みにするのは危険だ。

何を疑い何を信じればよいのか。さっぱりわからない。

イトが不安そうに俺を見てくる。あの探偵が嫌なのだろう。

姉貴の失踪後すぐに現れた探偵。偶然にしては怪しすぎないか?

姉貴を見つけるのが先決だろうが、屋敷から出るのは危ない。

大地も行方不明だ。天音も泉姉貴も。

この島には今何人の人がいるのだろう。何人も死んだ。犯人は分からない。謎の探偵も来た。行方不明だっている。兄貴は密室殺人だ。

「海翔さま、この島は異常です。灯様や十一智様がお亡くなりになったり、」

「灯兄貴?死んだのか?」

初耳だった。確かに兄貴は俺たちと一緒にいなかった。

「皆様知っているかと思いました。樹里様と十一智様は知っていましたので。」

兄貴たちは知っていた?俺だけが知らなかったのか?

「どこで兄貴は死んでいたんだ?」

「灯様の部屋です。鍵はかかっていませんでしたが、鍵が鍵穴に刺さったままになっていました。しかも、自殺のような感じで首を吊っておられました。

そのそばには倒れた椅子がありました。お亡くなりになってからどれくらいたったのかは分かりませんでした。」

なんてことだ。さらに死んでいたなんて。

怪しい。全てが怪しい。この島には俺たち以外に誰かがいるのか?

泉姉貴の髪飾りが落ちていた、泉姉貴がいるのか?島には来ていないはずだが。

その時だった。

「ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ」

狂った笑い声が食堂から聞こえてきた。

食堂には探偵がいるはずだ。俺たちは急いで食堂へと向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Gold Island-黄金の島 冬宮よる @tonight3941

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ