第26話 アルベルトという男2

ベリル王国は華やかな街だった。

あの日見た景色と同じ景色が、そこには広がっていた。

父からは監視役兼護衛に、キャシーという従者がつけられる。

キャシーは国1番の武術の達人だ。

また、父から、母の踊り子の一座に入るよう言われていた。

アルベルトはこの現状で少しでもシェルナリアの役にたてるようにとシェルナリアの回りの事を調べていた。

その結果、家臣の中で悪巧みをしている者がいることを掴んだ。

どうにかシェルナリアのためにこの事を知らせたいと考えたとき、怪盗として証拠を集めるという考えに至ったのである。

それからこつこつと怪盗をやり、やっとシェルナリアに会うことが出来た。

シェルナリアは思っていた通り、いや、それ以上に凛々しく、賢く、そして美しかった。



「それからはシェリーの知っている通りだよ」


アルベルトは私の手を取り、不安げにこちらを見つめてきた。

私はやっぱりな、という気持ちしか湧いていなかった。

何処かで予感はしていたのだ。

彼はただの怪盗ではない、と。


「なぜ、そんなに不安げになの?私は貴方を嫌ったりはしないわ。そんなに生半可な気持ちをこの1年育ててきた訳じゃないのよ」


ふっ、と微笑みながら優しく諭すように言う。


「……うん。それでこそシェリーだよ」


アルベルトはやっと年相応の顔を見せた。

今までの顔は無理に大人びている感が否めなかった。

私はやっとアルの、アルベルトの全てを見た気がした。


「じゃ、シェリー。いや、シェルナリア。私と結婚してくれますか?」


真摯な瞳がこちらへ向けられ、私の胸は喜びでいっぱいになった。

出した答えも、掠れて。


「……はぃ」


気づかないうちに頬には涙が流れていた。


「ありがとう、シェルナリア」


アルベルトの顔が近づいてきて、私は思わず目を瞑った。

そして、どちらともなく唇を重ねた。


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