第25話 アルベルトという男1

アルベルト──アルベルト・ルービィアはリリアナとルービィア王国国王オリド・ルービィアの間に生まれた。

リリアナはオリドの寵愛を受けており、塔1つ与えられていた。

アルベルトはリリアナの容姿を強く受け継いでいたが、リリアナはアルベルトという存在を受け入れられないようだった。

アルベルトが生まれてから、リリアナは常々言っていた。


『私はね、アルベルト。あなたを喜んで生んではいないのよ。私はあなたを心から愛することは出来ないの。その体にあの人の血が流れている限り』


アルベルトは決まって言った。


『かあさま、それでもぼくはかあさまがすきです』


うわべだけのリリアナの言葉だとしても、母という替えのきかない存在をアルベルトは信じていた。


──いつか、いつかきっと。


それが終わりを告げたのはアルベルトが3才の時だった。

アルベルトはルービィア王国第2王子という身分を持ち、第1王子よりも成績が良く、武術も出来た。

それに加え、母リリアナは王の寵愛を受けていたため、正妃と正妃の子どもの第1王子からは嫌がらせを受けていた。

その日も水をかけられたうえ、階段から突き落とされそうになったが、持ち前の運動能力で打ち身は避けられた。

敢えて言うなら、手に擦り傷が出来たくらいだ。


階段から落ちる際、聞こえた正妃の声。


『……あなたもお可愛そうにね。あいつはあなたを置いて逃げたのに』


アルベルトはその言葉が気になって頭から離れなかった。


部屋に戻ると、母の所に急いだ。

正妃の言葉が嘘だと信じたかったから。

しかし、部屋に母は居なかった。

机の上にあったのは1枚の封筒。

中を開けてみると、母の直筆と思われる手紙が入っていた。

書かれていたのは、ごめんなさい、だけ。

手に力が込もって、手紙がぐしゃっと潰れた。

母との絆まで潰れたようだった。


それからアルベルトは無我夢中で勉強し、医師免許と薬剤師免許を取得した。

丁度その頃、国内で氷漬けの女性が発見された。

過去に例を見ないその死体は刺し傷があった。

医師免許と薬剤師免許を持つアルベルトもその調査に呼ばれた。


『かあさま?』


女性がの氷漬け死体は確かにアルベルト母リリアナだった。

穏やかに微笑んでいるとは言いがたい表情。

肌はあまりの固さにトンカチで叩いて皮膚の成分を調べた。

原因はルービィア王国でしか栽培出来ない氷花ひかの実だった。

その半年後、特効薬を見つける。

その功績から1つ願いを聞いてもらえることになった。

もちろん、国王に。

と、同時にベリル王国へ留学という目的で行くことになる。

というのも、ベリル王国の新国王の御披露目の際、アルベルトは見たのだ。

齢13ながらも、凛々しく、そして力強く立つ、シェルナリアの姿を。

その姿に、アルベルトは幼いながら胸をときめかせた。

アルベルトはもう1度見てみたかったのだ。

彼女の姿を。

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