大和田さんの事情

第14話 やばくて強い大和田さん

「咲良先輩よかったですね・・!おめでとうございます!」


「えへへへへ、ありがとう・・」


どうして梅宮先輩がこんなにだらしない顔で喜んでいるかというと、まあそんなの理由は一つしかない。


「まさかあんなところから告白してくれるとは思わなかったよ〜〜うへへへへ」


そう、梅宮先輩にお兄さんがベランダから大胆告白をしたからだ。


「俺も驚きましたよ。あんなところから告白をするなんて。」


「うんうん!もうびっくりだよ〜しかも避けてた理由も・・・あ〜〜結かわいい!」


梅宮先輩は実に乙女チックにはしゃいでいる。避けてる理由を知ってからというもの、かわいいかわいいと言ってばかりだ。


「あははは。かわいいのかはなんとも言えませんが付き合えてよかったですね。」


「ほんとだよ・・付き合えるなんて思ってなかったから・・!うれしい・・」


顔を赤らめて幸せそうな笑顔でそう言った。


「あれって胡桃沢くんたちが結に」


「いえ、あれはお兄さんが自分で決めてああしたんです。全部お兄さんの意志でですよ。」


言葉で背中を押したかもしれないが、ああやって行動したのはすべてお兄さんの意志だ。だから嘘は言っていない。


「そっか・・・・・結に勇気をくれてありがとう。私もちゃんと結に好きって言えてよかった。」


勇気なんて大層なものあげた覚えはないが、まあそういう事にしておこう。


「あれからお兄さんはクラスでどうですか?」


「いやあなんかね・・あのことがあってから結、質問されまくりで、いやでも人と関わる感じになってるんだ。あはは。だからあたしは別にあれぐらいが結にはちょうどいいと思ってるんだけど、毎日うっとおしそうにしてるよ。笑 まあ別に友達ができたとかじゃないけど、ひとりでいたときよりなんかあたしは楽しそうに見える。それに久我とも仲直りできたみたいで・・・本当によかった。」


嬉しそうに今のお兄さんのことを語る。


「そうですか。それはよかった。」


前に梅宮先輩から頼まれた、あと二つの事は、俺が何かしなくても大丈夫そうだ。


「いろいろ頼んじゃってごめんね。かなこ、胡桃沢くん・・・本当にありがとう。」


梅宮先輩はそう言って部活があるからと、吉丘と部室に向かっていった。




は〜〜〜〜〜〜やっとこれで心置きなくおっぱいができる。心配事があってはなかなか手をつけられないからな、おっぱいという最高峰の存在は。

その前に生徒会に顔を出すか。


「胡桃沢せんぱ〜〜い!」


俺が生徒会室に行こうとすると、なにやら後ろから俺を呼ぶ声がする。振り向くと後輩らしき女子生徒が俺に近づいてきた。


「今日は帰りお一人ですか?」


「俺はまだ帰らない。少しだけ生徒会に寄っていく。というか君は?」


「私は今日は誰とも一緒に帰る予定はありません!なので生徒会が終わったら一緒に


「いや、そうじゃなくて、君は・・誰なのかな?」


「?!!!!!!」


え、そんな、なんで知らないの??!!!!みたいな顔されても・・・


「わ、私は、大和田福愛です。聞いた事くらいありますよ、ね・・?」


「・・・・大和田さん・・?」


「大和田さんじゃなくてふくめちゃんって呼んでください!って私の事わからないんですか?!」


申し訳ないけど、全っ然わからん。


「あー、うん、あれかな?生徒会希望だった子・・かな?」


「ちがいますよ!かわいくて、優しくて、とっても頼りになる大和田福愛です!ファンクラブもあるんですよ??」


あ、この子、やばい。


「ご、ごめんね。わからないな。じゃあ俺は行くね。」


「ちょっと待ってください!胡桃沢せんぱい!!」


その子は俺の腕にしがみついてきた。


「・・・ちょっと、俺は今から」


「吉丘先輩とはどういう関係なんですか!!」


吉丘、、どっちのことだ?


「・・・かなこか?」


「か!!!か、かかかかかかなこ?!!」


「ん?お兄さんか?」


「お!おおおおおおおお兄さん??!!」


なんだよどっちなんだこの反応は。


「も、もうそういう関係なんですね・・・・」


大和田さんは肩を落としてズーンってなっている。


「えっとー、どっちのこと言ってるのかな?」


「ど、どっち?!!選択肢があるんですか?!」


選択肢?何言ってんだこの子。

・・・あ!!もしかしてこの子もお兄さんのこと好きとかなのか・・?

タイミングからしてさっき梅宮先輩たちと話してた内容はお兄さんのことだった。これは・・・お兄さん一択ということか。


「いや、あの、家で遊んだりする関係かな。友達だね。」


「い、いいいいいい家で?!遊ぶ??!!!な、何をして遊んでるんですか!!」


「あーーー、えっと、・・・・それは、んー、いろいろ、してる。」


おっぱいで遊んでるなんて言えない!!!!!!


「いろいろ・・・・・・・・・・・どっちってそういうことだったんですね。でも学校から一緒に帰ってましたよね?仲よさそうに、楽しそうに!普通の恋人のように!」


は?恋人?俺とお兄さんが?なんなんだこの子・・・まさか俺に嫉妬してる・・?おいおいやめてくれよ。


「勘違いしてるよ!大和田さん!そんな変な関係じゃない!誤解しないでほしい!」


俺は男に興味はない!!!


「なっ!!・・・ってことは健全な仲ってことですね・・・」


よかったよかった、わかってくれたか。


「そうだ、とても清く正しい健全な仲だ。」


「・・・・・・・・・・・」


なんだか大和田さんは俯いてぷるぷるしている。


「大和田さん?」


「・・・・私、私、絶対諦めませんから〜〜〜〜〜〜!!!!!!」


大和田さんはそう叫んでどこかへ行ってしまった。


大和田さんもこの前のあの大告白を見ていただろうに・・それでも諦めないか・・・強いんだな、大和田さん。応援してあげたいのも山々だが、そうもいかない。俺は、お兄さんが、好きな人とうまくいってほしいからな。

というか、やっぱりお兄さんてモテるんだな。



このときの俺は呑気にそんなことを考えていた。

ちゃんと主語をつけて、確認しながら話していればあんなことにはならなかったのに・・・なにやってんだ俺は・・・。

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君はやっぱりすごい人だった ぶろさむん @akio57

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