第6話「秋山澪の密かな愉しみ」6

澪(独白)「朝6時に家を出る。母が朝食を用意してくれた。ありがたい。今回どうしても塗装費と諸経費・保険料が足らなかった。主義ではないが、ローンを組もうかと思ったけど、未成年なので母に相談した。母は今バイクを買って、友達といい思い出が作れる方が大切だと、ヘソクリから無利子で貸してくれた。

専業主婦の母がそんなに大金を持ってるのは驚きだけど、小さい時からのお年玉を貯金してたらしい。私のはエリザベス買う時に全部使ってしまったのに。偉い人だ。"ママ金融の利子はね、老後の世話よ"と冗談を言ったが、目が笑って無かった。ヤミ金融より怖いかも…」


◯東名高速に入る。

澪(独)「さすがに納車の翌日だから慣らし運転。高速でも80km/h以上出さないように。自然ガンガン抜かれるけど、思ったより怖い車はいない。父曰く”金持ち喧嘩せず。うちは中流だけどな”。ラッシュ時より前に東名に入れたので空いている。遅い私を追い越し車線で抜いていく。混んでたら同じ車線で抜かれるかも。それは怖いだろうな」

◯パーキングエリアでバイクに戻る澪。一人の中年男が腕を組んで、澪のPCXを見ている。何処にでもいる日本の田舎のオヤジ。結構服装は派手だ。

男「(片言)コレアナタのバイク?」

澪「(やばい、盗られる?)は、はい」

男「握手シテ。祖国ノ英雄ヲマダコンナニ若イ日本ノヒトガ、オボエテル。ホント、ウレシイ!」

◯澪言われるままに握手する。男の顔はクシャクシャ。澪も思わず貰い泣き。

澪「なんか気持ちがあったかくなった。さて目的地まで半分ないな」

◯男に手を振り返しパーキングエリアを出る澪。

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