第2話

 私の先生はいつも私だけを教室に居残りさせる。それは誰にも知られてはいけない秘密の授業だから……。

 先生は嬉しそうに私の足元へひざまずき、クールなメガネの銀縁を持ち上げて、脚に手を添える。壊れ物を扱うようにやさしく、吸い付くような指先で靴を履かせては、脱がす。それを何度も繰り返すだけ。

 きっと私は先生に恋をしていた。だからこんな風に呼ばれて、靴を履いては脱がす。そんな異常とも取れる行為も、秘密を共有できるひと時に、胸を焦がした。

 でもね、見てくれないの……。

 一度もよ。たったの一度も先生は、私と視線を合わせてはくれない。

 バカな話。自分で自分の脚に嫉妬したわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る