Chaussures et pieds ー靴の奴隷ー

発条璃々

第一部

第1話

 私のパパはこんな時だけ、普段は見せない、活きいきとした表情をしてる。

 今日は別に記念日でも誕生日でもない。それでもパパは週末になると靴を買ってくる。それは色や柄は様々だけど全てがヒール。

 高さはその日のパパの気分によって変化する。まるで少年が好きな少女にプレゼントを迷っているかのように……統一性はない。

 低いものもあれば、歩くのに困難な高いものもある。

 

 だけど私は、幼いながらも一人のレディとして、喜びを露わにして、優雅に履いてみせた。パパの前でスカートを翻し、裾を摘まんでお辞儀をしてみせる。

 それだけでパパは数日、上機嫌でいられた。ママが度々、私のお気に入りのヒールのように、真っ赤なルージュを引いて出掛けても……。

 ママは出掛ける前に私を一瞥し、無言の言葉を置いて行く。

 とでも言いたげに……。

 でもね、ママ。パパが私を必要でも、私はママが必要なのよ。

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