謎めく詩のような表現から肌で真意を・・・

 どん底を感じた時、それでも立ち直ろうとする人の本能が、自分でも気づかぬうちに よすが となるものを求めたり、あるいは何か〝楔〟に繋ぎ止められていたりする。そんなイメージが見えるようなストーリーと筆致でした。

 そう感じたのは、それが、はっきりと書かれていないからです。詩のように美しい謎めいた表現が随所に散りばめられているのですが、だからこそ、きっと感情移入できる読み手それぞれの形となって、胸に響いてくるものなのだと思います。不思議な文章で綴られていながら、実はとても計算されていて、深い。

 きっと何か抱えているものがあるのだなと、読者にほのめかすその主人公の心の声・・・。そんな彼を〝諦めさせない〟もの、その存在とは・・・。

 ところで、この物語と最初に出会った時、数話を読んですぐに彷彿した名作がありました。タグに『夜と霧』のオマージュとあるので、本来は、私が思う以上にやはり人間を描いた奥深い作品なのでしょう。

 そのうえで、あえて私が感じたのは、宮沢賢治作『銀河鉄道の夜』です。私はこのお話を、小説ではなくアニメーション映画で知りました。なんだか不思議な世界観、でも何となく深い・・・そういったところが、まさに、『銀河鉄道の夜』を観た時と同じ感覚でした。じっくり書き込まれた情景描写には〝美しい〟と思うと共に切なささえ覚えるほど。

 この物語に込められている真意を肌で読み解きたい。そう思わされる作品です。

※ 改稿されているので再度読み直したレビューになります。

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