完璧な三年

前菜がふたりの間に並べられた。

あたしたちの口数は、皿の中央に丁寧に飾られた料理のように少ない。このしとやかな雰囲気に見合うように、ここにいる客の全員が上品に振舞って魅せている。クラシックミュージックが途切れてしまわぬように、誰一人として大声で笑ったりなどはしない。二人にしか聞こえないくらいの囁くように律くんは言った。


「君と付き合ってからもう3年になるね。はじめて会った日の事を憶えているかい?」

「もちろん。忘れるわけがないわ」


律くんは満足そうに微笑んで、それから、3年間の思い出話をはじめた。あんなことがあったね、あんな場所へもいったよね、あの時は本当に楽しかったね。料理をひとつ口に運び咀嚼し終わるタイミングで、ひとつ、またひとつ、律くんは、ゆっくりと3年間を振り返る。


短編映画のような日々を思い出しながら、この3年間、あたしは幸せだっただろうかと自答した。磨かれたナイフで料理を刻む手が止まった。律くんに悟られないように、あたしは綺麗に飾られたお人形のように、彼の声に微笑んでみせた。

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