砂糖菓子と駄目人間

草太は駄目人間だった。単位は落とす、大学院の試験日もろくに調べていない、講義をサボる、部屋は脱ぎちらかした服だらけ、支払いをすっぽかし電気は止まる、冷蔵庫の食材は腐らせる、カーテンの裾が長すぎる、自分で決めたこともろくに達成できない、口先だけ立派な、稀にみない駄目人間だった。


それでも草太のくれる砂糖菓子のように甘ったるい愛情は、あたしの空っぽの心をどろりどろりと満たしてくれた。あたしは家族に愛されなかったから、はじめて愛をくれた草太のことを憎み切れないでいた。


手を繋いだのも、キスをしたのも、それ以上のことも、ぜんぶ草太がはじめてだった。草太といると気が楽だった。化粧も背伸びもしなくてよかった。草太が稀にみない駄目人間だったからだ。


これは恋なんかじゃなくて、自分の自尊感情を満たすための汚れた行為だと分かっていた。それでもあたしは草太を手放せないでいた。

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