プロット:多摩川をさかのぼる「夏の川辺の土のにおい」

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第1話 多摩川をさかのぼる「夏の川辺の土のにおい」

世の中には、どう考えても、どうあぐねても、どうしょうもない事がある。

真直ぐな子供の心は、只今、ただ、なおも、真白くなれど、どうしょうもない。

それでも、幸、不幸を背負った時間の動きは止まらない。



子供の時、この川辺の土のにおいを感じたときがある。

小学生同じクラスの友人が、

「バケツに一杯分の血を吐いて自宅に居る」と言う。

病気の彼は、学校に来ないまま、中学生になった。

中学になっても学校にはいない。

「どうしているんだろうかな。」


小学校の同窓会は、暑い夏の日だった、

その後で、クラスのみんなで、その友人の家に遊びに行くことにした。


川辺に、小さくたたずむ、昔風のその家に着くと、母親と2人暮らしの病気の彼は、浴衣を着て寝ていた。


ベーゴマが、はじまったが、、

それが、へたな自分は、缶蹴りをやろうと言った。

自分たちは、布団を廊下に引っ張ってきて、、

その中で彼は、じっと、静かに、また、視ていた。

そして、母親は、お赤飯に、お団子、お饅頭、そして、コーラまでを買って来てくれた。


自分は、このへんで、みんなの笑いをとろうと、

ザ・ピーナッツの替え歌で、そのまねをした。


案の定、

友達たちは、大笑いして、布団の中でも、、

これは、受けたんだぁ。

「やった~」 と思ったものの、

だた、この軽さを、またかと、バカにされているだけだったのだろう。


そして、その時、

夏の乾いた粘土質の土、その黄土色の乾いた表面に水滴が落ちてきた。

どうしたんだろう、顔を上げると、

彼の母親は、、 、大粒の涙をこぼしていた。

「なんでだろう、また、やりすぎたかなぁ」


乾いた地面に、その水滴は、即時に吸い込まれていく・・・

みんな、しーんとなった。

彼の母親には、何度もお礼を言われて、

なんで、そんなにも、、と、思わざるをえなかった。

それにしても、うちのおかあちゃんはいつも怒っていたからだ。


・・・・・・・・・


たいぶ経って、不幸があったことを風のたよりで聞いた。

「その時の乾いた夏の川辺の粘土質」の、においを昨日、思い出した。

もう、とっくに、忘れていたことなのに。


今年も、その河原で花火が、週末には行われるようだ。

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