異色の異世界小説

この作品には、古き好きファンタジーの要素と新しいSF的な要素が詰め込まれている。

まず、主人公のアトラムの文化風俗を分析的に語る視点。これは古典的なファンタジー、トールキンの「指輪物語」や「ホビットの冒険」でも採用された、ファンタジー世界を魅力的にする最適な手法だ。

アトラムの料理を、原料から作り方まで丁寧に語ることで、話にリアリティを与えている。トールキンというよりは、沢木耕太郎の「深夜特急」に近いかもしれない。深夜特急の主人公も、自らが触れた文化に対して分析的に語る点で一致している。

そして、この物語を異質なものとしている一番の要因は動物たちだろう。

高度な知能と文化を持つ獣たちの視点、我々とは異なる倫理観は、読んでいて幻惑された。獣が獣の肉を食うことで成り立つ社会とカーストは、まさに異世界だ。

良いSF作品は、読者に現実とは全く違う世界を見せてくれる。だから、この作品はファンタジーだけでなくSFとしても成立するだろう。

話の続きを早く読みたい。

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