あいつ と わたし


あいつ は いつも笑っていた

笑い方は少し気持ち悪かったが、

それも含めて あいつ だった

みんなもつられて笑っていた


あいつ は たまに笑わなかった

その目つきは少し冷たかったが、

それを知るのは わたしだけ だった

わたし は それでも笑っていた


わたし は いつも笑っていた

あいつ が笑わない時も、

あいつ が笑っている時も、

ずっとずっと、笑っていた




だが、いきなりのことだった、

経験したことのないことだった、




わたし は 笑えなくなった

いきなりのことだった、

経験したことのないことだった、

みんなの前で笑えなくなった

そんな自分が怖かった、

そんな自分を見せたくなかった


あいつ は 常に笑うようになった

冷たい目つきを見せなくなった

笑わない ことが無くなった、

いつもいつも笑っていた


わたし は それが苦しかった

嬉しさと感謝よりも苦しかった

わたし が あいつ を 笑わせてることが、

何よりも苦しかった


わたし は 少し距離をとった

あいつ と 少し距離をとった

わたし が 笑えるようになれば

あいつ は 無理に笑わなくてすむんだ

そう思って、距離をとった




あいつ は 常に笑っていた

わたし の 前では笑っていた

あいつ の 側に わたし は居なかった

もう、 わたし では良くなったようだった




わたし は いつも笑っている

笑い方は少し気持ち悪くなったが、

昔のように笑っている、

みんなもつられて笑っている



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