第17話

 いきなり燃えだした木をよく見ると。

「これは、絵?」

木の幹には、炎の絵が描いてあった。飛んできたのは、絵だったようだ。うん、自分でも言ってることが分からない。

「ふふふ、今のを避けるとは大したものだな」

そう言って舞い降りたのは、黒いマントで身を隠し、ベネチア風のマスクをつけた謎の人物。


「だが、次は避けられるかな!」

マスクの人物は、大きな筆みたいなものを取りだし、空中に波の絵を描くと、こちらに飛ばしてきた。驚いたことに絵はその形を保ったまま、こっちにくる。

再び絵をよけ、絵が地面に当たると、そこに高波が現れる。

「予想済みだ!」

俺はジャンプで波をよけようとしたが、思ったよりも波が高く、俺の身体能力が低かった。

そのまま波に呑まれて流される。

波が治まり、水が引くと、そこにはびしょ濡れで倒れる俺。

「仁君、大丈夫かい?」

今まで逃げてでもいたワッフルが駆け寄ってくる。

「妖精?まさか君も魔法少女なのか?」

「は、生憎のところ違うよ。どう見ても男だろ?まぁ、なれるならなりたいけどね。そっちこそ、女のくせになんでそんな口調なんだ?キャラ付けか?」

「なんでわた...僕が女だって分かった⁉」

「体格と声でバレバレだ。というか、バレてもキャラ貫くんだな。宝物歌劇団でも目指してるのか?」

「ええい!秘密を知られたからには生きて帰すわけにはいかない‼」

「その台詞絶対に使いどころ間違えって危な‼」

マスク女が、爆弾の乱射してくる。絵が地面に当たって、地雷みたいにあちこちで爆発している。

「いやこれヤバイって!」

「大丈夫?」

「ワッフルてめえ、飛べるからって安全圏から見下ろすな!」

すると、足元が爆発して転んでしまう。マスク女が近づき、筆型アイテムを突きつける。

「さぁ、終わりだ」


「『NAGIチェーン』!」

チェーンソードの刃が飛んできて、筆に絡みつく。そのまま筆を奪って現れたのは、魔法少女NAGIだった。

「お兄ちゃん、もう安心よ!私がこいつをやっつけてやる!」

「また君か」

「何よ!先に襲ってきたのはそっちでしょ!」

どうやら、NAGIはこのマスク女と戦っていたようだ。だから校門に来ていなかったのか。

マスク女が手をかざすと、筆アイテムが手の中にワープした。そして、鎖の絵を飛ばし、NAGIを一瞬で拘束する。

「あれ?」

「おいこらNAGI!なにが『もう安心よ』だ!あっさりやられてるじゃねぇか!」

マスク男がまた俺に筆を向ける。

「今度こそ終わりだ」

くそ!NAGIのやつ、魔法少女なんだからちゃんと俺を助けろよ。人を助けるのが魔法少女だろうが。現実はこうかよ。テレビはご都合主義か?

いや、魔法少女が本当にいたんだ。ありえないご都合主義だって、逆転だって、本物にしてやる!


すると、体が熱くなって、頭が痛くなる。

やがて胸からピンクの光が溢れ、マスク女を吹き飛ばす。

数メートル飛ばされたあと、綺麗に着地したマスク女は、軽く笑い。

「なんだ、嘘じゃないか」


ピンクの光は胸から出てくると、ピンクの宝石になり、他にも現れた光と共に俺の右腕に移動し、ブレスレットの形で収まった。


「まさか、とうとう俺が?」


俺は立ち上がり、ブレスレットを見る、そこには、きれいなピンク色の宝石がはまっている。

「ピンクか、男としてはあれだが、主人公っぽいから文句なし!」


なんと言えばいいかは、妹を見て分かっている。ただ噛みまないようにすればいい。

噛みませんように、噛んだらダサいぞ。

俺は、ブレスレットに手をそえる。


「お兄ちゃん、お兄ちゃんならできるよ!」


「仁君、君の心を信じるんだ!」


「さぁ、君の力を見せてもらおうか」


俺は大声で叫んだ。


「『マジックアップ・トランスフォーム』!!!」

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