神様との応酬


――あーテステス。

どこかの世界くににでも居そうな神様。

何故私はここにいるのか、説明を要求します。


――あー、それは君を異世界召喚したからだよ。


――はー、さようですか……って、何ですと!?


――だから、異世界召喚だって。


――なんという面倒くさいことを!!


――面倒くさいとは何だ面倒くさいとは。


――事実ですもん。異世界召喚なんて、知り合いがいなけりゃ、地獄も同然! 私にしてみれば、余計なお世話ですよ!


――なっ……お前、そこまで言うとは、私は神だぞ!


――そんなの知ってますよ。『神様との応酬』なんですから。


――む、確かにな。というか、私はこうしてずっと君と話していなくてはいけないのか?


――知りませんよ、そんなこと。一界の一国の一市民の一家族の一人にそんなことを聞かないでください。


――むー、何か納得したくないのに、妙な説得力が……………………あるか!!!!


――逆ギレはみっともないですよ、『神様』。


――……というか、何故、神様に『』が付いているのだ?


――あなたが完全に『神様』という保証がないので。


――そうなの?


――そうなんです。


――何か泣きそう。


――泣くなら外で無いてください。ここで泣かれても、迷惑なので。


――何かさっきから君は私の扱い、ひどくない?


――酷くありません。今の対応の仕方を止めてほしければ、元の世界に私を返してください。


――え、魔法もあるのに? 一国の王妃になれるかもしれないのに?


――そんなの、この異世界先くにになら無限にあります。


――チート能力もあるのに? 主人公になれるのに?


――必要ありません。私には、元の世界での生活が必要なんです。


――真面目だねぇ。


――あなたが不真面目なだけです。


――ところで**ちゃん、本当に戻りたいの? 魔法って便利だよ? 楽できるし。


――戻りたいに決まってるだろうが。ふざけんなよ、神もどきが!! 科学なめんな。人は努力するから、その分、知識も増えるんだ。楽なんてしていたら、何かの不祥事に解決出来ないことだって、出てくるんだぞ! 分かったのか、神もどき!!


――神様じゃないことにされたよ!? というか、確かに**ちゃんの言う通りだ。


――分かればよろしい。ったく、まさか私みたいな異世界人が『神様』もどきに説教しないといけないとは、世も末だな。


――ううう……










今回の勝利者は、異世界の少女でした。

ゲーム『神様との応酬』またのご利用お待ちしております。










『神様との応酬』

突如として、異世界に召喚された少女は、理由を知るべく、神様と話すために、あるゲームをします。

それが、『神様との応酬』。

勝てば、元の世界へ帰還できるが、負ければずっと異世界に滞在という無責任なゲームである。

そして、また一人、『神様との応酬』に手を掛けた者がやってきた。










――あーテステス。

どこかの世界くににでも居そうな神様。

何故私はここにいるのか、説明を要求します。


――お、いかにも真面目系。あ、僕は君担当の神様ね。よろしく。


――はい。では単刀直入に尋ねます。何故、私はここにいるんですか?


――本当に単刀直入だね……


――答えてください。


――はぁ、わかったよ。僕は嫌だったんだけど、実は君を異世界召喚しろって、うるさい人が居て……


――どこの誰ですか、そのバカは。というか、異世界召喚とか、何の冗談ですか?


――え? 君、現実主義者リアリストだよね?


――聞いているのはこちらです……というのは置いといて、何故そうなるんですか。現実主義者リアリストなら、今目の前にいるあなた自身を批判していると思いますが?


――あ、確かにね。ま、用件を言うと、とっとと僕を言い負かして。そうすれば、元の世界に戻れるから。


――言い負かすって、あっさり言いましたが、かなり難易度の高い問題ですよ、ソレ。それに、せっかく話すのなら、共通の話題があった方が盛り上がります。


――なるほどね。それじゃあ、共通していそうな話題は…………『こんな上司は嫌だ』。


――あなた本当に神様ですか?


――神様だよ!(一応)


――まぁ、いいでしょう。えっと『こんな上司は嫌だ』ですね。うーん……


――(これで、盛り上がって僕以上に嫌な上司について話してくれれば……)


――…………あなたみたいな『偉ぶってはないけど、自分よりも年下にはっきりと意見を言えない人』とか。


――悪かったね! 明らかに僕より年下である君に意見を言えなくて!!


――泣かないでください。


――泣いてないよ。


――それじゃあ、泣きそうな顔だけは止めてください。こっちが悪いみたいじゃないですか。


――ううう……


――もう、私が側でサポートしますから、しっかりしてください。


――え? でも、そうすると帰れないよ? 僕を言い負かしたのに。


――あのですね、あなたのような人を放って置いたら、帰った後も気になって仕方ないと思うんです。会える保証なんてないんでしょう? だったら、私はあなたのサポートに回ります。


――**ちゃん……


――泣かないでください!


――うん、ごめん。


――あー、もう!










今回の勝利者は、無しでした。

よって、この勝敗は引き分けドローといたします。

ゲーム『神様との応酬』またのご利用お待ちしております。











――『神様との応酬』引き分けドローかぁ……


――あいつには、ああいうが必要だったんだよ。


――というか、これ何?


――んー? 『神たちの応酬』だって。


――そもそも『応酬』って、どういう意味だっけ?


――簡単に言えば、やりとり。難しく言ってもやりとり。


――えー。つまり、『神様との応酬』は『神様とのやりとり』で、『神たちの応酬』は『神たちのやりとり』ということか。


――つーか、誰だよ。こんなゲーム作ったの。暇だからって、俺たちはまだしも、他人に、ましてや人間界にまで迷惑を掛けるようなものを作るなっつーんだよ。


――それ、言えてる。


――右に同じ。


――で、『神様との応酬』の続きが『神たちの応酬』だと思っていいんだよな。


――みんなそのつもりで、今日集まったんだよ~? 忘れたの?


――別に忘れた訳じゃない。確認だ確認。


――なら良いけど。


――アーシア、お前のとこの世界はどうだ?


――んー? 至って平和だけど、そろそろ来るころかな。


――そうか。


――けど、何とかしてみるよ。負の連鎖は断ち切らないといけないからね。


――ああ、よろしく頼む。










こうして、女神アーシアと異世界召喚された一人の少女により、新たなゲーム『神様との応酬』は再開された。






アーシアは、少女に今回までの経緯を話し、『神様との応酬』の終了するべく、『ゲームの破壊』を選択しました。










そして――










――ゲームは、破壊された。










新たな参入者によって。

そして、扉は再び開かれる。

新たなゲームの始まりを告げるかのように――


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