豚計画!? 集まれ豚共!

 あの「罵り顧問・専属女王様」から100年――――。

 

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「さっさと歩けよ、豚共!?」

 

 薄汚れた作業用のツナギを着た一団に、激しい激を飛ばす女性。


 とある工場――――――――。

 機械油とサビ、科学薬品により汚染された排水から漂う、ドブの臭い。


 よどむ空気は人体を蝕み、衛生状況は最悪だ。


 AIの本格導入から一世紀が過ぎた日本社会は、その大半の労働過程をフルオートメーション化した。

 物流業界は荷物の仕分けから車、船、飛行機にいたるまで、マシーンに管理され、人の手が入る余地は無い。


 会社の受付や案内は、家庭用掃除機のルンバが行うようになった。


 エンターテイメントの分野は、ヴァーチャルアイドルやVチューバーが幅を利かせ、新しい才能の芽を踏み潰していく。


 医療は患者の診断、経過をAIが管理し、患者に合わせて薬を投与。


 社会は豊になり、人々の寿命は更に伸び、人口は爆発的に増加。


 だが――――――――豊になったのは、富裕層のみ。

 

 AIにより、人間が出来る仕事は減るのに、人口は増える一方。


 それにより、日本は、大恐慌並みの失業者をだしてしまう。


 社会に絶望した者は、ウンコ製造機ネオニートとなり、労働保険や生活保護を貪り喰う始末。


 そんな混沌とした社会を整備すべく、政府はついに、人権を無視した政策に走る――――。


 戦前、日本がユダヤ難民を中国日本領、満州への受け入れを検討していた、


              ――――河豚ふぐ計画――――


 度重なる内乱により、失敗に終わった同計画から着想を得たのが、


                 ――――豚計画――――


 失業者とウンコ製造機ネオニートを、政府が管轄する、強制収容所に連行。


 一部では、日本版ホロコーストになりえると、批判されたが、ホロコーストとは決定的に違っていた――――――――。


 収容され、自由を奪われた、家畜同然の人々は叫ぶ。


「こ、こんな扱いは不当だ! 人権侵害だ!!」


 騒ぎ立てる、数十人の野郎共の声を、たった一人の沢尻エ○カ似ビッチが、その声量を上回る。


「黙れ! 萌え豚どもが!!」


 その細身を黒い軍服で包み、卍マークの赤い腕章を着けた女王様は、しなるムチを地面に叩きつけて一喝した。


 女王様は、声の響きだけで、脂ぎった豚達のエクスタシーを刺激して、言うことを聞かせる能力がある。


 女王様の攻めに、1人の豚が思わず謝った。


「ご、ごめんなさい……」


 ここでは、8時間労働など、通用しない。

 全てのセクションは、”裁量労働制”にしており、作業が終わるまで帰れない。

 しかし、その作業は24時間、稼働し続けている――――。


 女王様は、この場の主導権を握る。


「許して欲しかったら、あたしの靴を舐めな……」


 真っ赤なハイヒールを突き出すと、豚共は生唾を飲む。


 ムッツリスケベを文化とする日本において、誰が先に飛びつくのか、全員様子をうかがっていると、女王様はじれったくなり叫ぶ。


「さっさと舐めろ! この舐めダルマ!!」


 その言葉を皮切りに、豚共は鼻息を荒げ、赤いハイヒールに飛びつく。


 ハイヒールを舐める為、男達は、それまで団結した仲間同士でブヒブヒと争う――――。


 そんな醜い争いが起きる工場とは別の地区では、男子禁制、三十過ぎても、自身を女子と言い張る、見事なまでにイタい豚達が、科学薬品で荒れる手で、作業に励んでいた。


 見事なまでに肥えた、作業服の女は、手を止めて叫ぶ。


「何で、あたしらも収容されるんだよ!?」


 その訴えに賛同した、同じ作業服を着た女達。

 エステに行く時間も、スイーツを楽しむ時間も奪われ、メイクをする時間さえ奪われ、工場の作業に殉じていたが、ここに来て限界が来た。


 その訴えを抑えつけようとする、軍服の女。


「うるさいんだよ! 豚共!!」


 バチッ!


 しなるムチが硬いコンクリートの床を叩きつける。


 それを見た工場の女達。


「そんなんで脅してるつもりか!」「ナメんな!」「豚はお前だ! ビッチ!!」


 ムチによる威圧が、効果がないと解ると、軍服の女は苦虫を噛む。

 治まりの付かない状況に、工場内は暴動が起きる寸前まで来た――――。

 工場の女達の中から、一人が吠える。


「あのビッチを引きずりおろせる!!」


 その言葉を合図に、女達は一斉に動き出す。

 軍服の女は群衆に捕まり揉みくちゃにされた。

 工場の女達は、この暴動――――いや、革命により、自分達は自由を取り戻したと確信した。


 しかし――――――――。


『ダメだよ。子豚ちゃん達? ちゃんと女王様の言うことを聞かないと』


 甘い男性の声が、薬品の臭い漂う工場に響く――――――――。

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