香辛料に魅了され

紅蛇

香辛料に魅了され


 柔らかな黒い絹を垂らす君。君が舞うたびに、ふわりと浮き上がり、優雅に舞う。透き通る珊瑚色のシルクを身に纏い、ふわり。またも、君の鮮やかな彩りが、流れる空気に添えられる。

 ビビットカラーに彩られた衣装が、君の黒を目立たせる。

 

「私の踊りを見るの、楽しい?」


 君の絹と同じ、黒き瞳が輝く。シャンと、蓮の花が描かれたピアスを揺らし、紅の唇が弧をあげる。

 なんて酷いことを聞くのだろうか。君のことは、いつまでも見つめることができると言うのに。その優艶たる、動きからは目を離せないと言うのに……。


「もっと、見ていたい」


 胸を上下させ、流れる動きをする君に呟く。そうして、ハッとする。君は、鼠を狩る高貴なる生き物のような、瞳をしたから。キッと、僕を見つめる色彩無き瞳に、炎が宿される。そして、腕に巻かれたバングルが照明に輝き、鈴を鳴らす。


「魅せてあげる」


 そう、君に囁かれた気がした。

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香辛料に魅了され 紅蛇 @sleep_kurenaii

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