3-3

 吹っ飛んだ。白い地面がなくなり、空へ飛び出た。

 崖。眼下には盗賊の野営地。雪玉が塔と見張り台に炸裂していた。瓦礫と炸裂した雪。全てが一瞬のうちに現れて、そこに突っ込んだ。

「クソったれ」

 目を開いた。衝撃で頭がくらつく。

 アンナの背中が見える。

 既に誰かを殴っていた。

「仕事が早いな」

 エリオットは起き上がる。

 野営地の中だった。作業場、馬小屋、崩壊した塔と見張り台。様子を見にやってきた盗賊団たち。「囲まれてるぞ」

「知ってる」

 イケイケで暴走する性格。

 アンナはいつもそうだ。

「エリオット、そいつの剣を取れ」

 アンナがぶん殴った男だ。伸びて雪に顔面を埋めている。言われた通りに腰の剣を抜いた。

「取ったか?」

「あぁ」

「これでお前も盗賊だ」

「あんたのせいだぞ」

 アンナが拳を鳴らす。

「侵入者がいるぞ」

 野太い声が響いた。

 敵意剥き出しの男たちが十人。美女はいない。

「多くね?」とエリオット。

「エリオット、横を見ろ」

 アンナの言うとおり、確認した。

「死体がある」

 倒壊した塔の破片が胸を貫き絶命した男だった。目を見開いている。

「違う。その下だ」

「また死体だ」

 死体の下敷きになって死んだ男がいた。やはり目を見開いている。

「その横を見ろ」

 瓦礫の中に黒い口が開いていた。

「地下か?」

 入り口のようだ。

「お前はそこだ。ここは私に任せろ」

 異論はなかった。「行け」

 エリオットは走って、黒い口に飛び込んだ。

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