3-2
野営地のはるか上まで来た。雪が積もっていた。
「クソ。マジで寒い。手も足も感覚がない」
山の上だ。あと少しで山頂。小さな壊れかけの祠がある。何を奉られているのか。こういう山では珍しくもない。誰が何のために作ったのかもわからない遺物。
「ここから真っ直ぐ下に砦がある」とアンナ。
「あんたは寒くないのか?」
エリオットが言った。
「私の話、聞いてるか?」
「俺の質問に答えてくれよ。寒くないのか?」
「寒い。だが私は強い」
「話をどうぞ」
自分と比べてはいけなかった。
「雪玉を作れ。それをここから落とす」
「何個?」
「巨大なものを三つ」
「あー。なるほど」
雪をかき集めて、転がした。
■
「できたぞ」
アンナのリクエストどおり、巨大な雪玉を作った。エリオットの身長よりも高い。この寒さでも身体を動かすと汗をかくのが不思議だった。
「見ればわかる。転がせ」
「三つとも?」
「一つでも命中すれば上出来だろう」
アンナが雪玉を押した。転がっていく。
音はなかった。静かなものだ。
「そういう計算ね」
エリオットも残りの二つを押し出す。
転がっていった。
「俺たちはどうする?」
大きな、何かが崩れるような物音。続いて怒声が聞こえる。どうやら雪玉は命中したらしい。
「お前が雪玉を作って遊んでいる間に私もいいものを作った」
アンナが石版を放ってきた。
「これどうした?」とエリオット。
「ぶっ壊した」
小さな祠がなくなっていた。
「作ってないだろ」
「壊して作った。終わりは始まり。破壊は創造」
「これでどうするんだ?」
「ソリだ」
「あー。俺は歩いて下山するから」
「これは二人乗りだ」
肩を掴まれた。そのまま石版の上に押し込まれるように座られた。
「行くぞ」
アンナが後ろでエリオットが前。
雪の上を滑り出した。
「クソが」
「ははは。楽しいな、エリオット」
「死ね、死ね、死ね」
速度が上がっていく。
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