生まれた町へ行ってみようか


 いろいろと問題を起こして

 飛びだすように町を出たあなたは


 彷徨って 居なくなって

 いきなり現れて 生き急いで


 私は初めて あなたと一緒に

 その山の麓へ行った

 電車を乗り継ぎ

 景色を眺めながら


 坂道を登って

 春の陽射しの山道


 古めかしい喫茶店の扉を

 カランコロンと押して開けて


 牛乳を入れてミキサーで作る

 フルーツミックスジュースを

 迷わず注文すると あなたは

 可愛いね と

 他人のような顔で笑った


 いつもホットコーヒーしか

 飲んでるの見たことないから

 甘い物は嫌いなのかと思ってた

 そう言った


 コーヒーはブラック

 味を変えたくないから

 甘いケーキの甘さを

 ちゃんと感じたいから


 あなたは何年暮らしても

 そういうことがわからなくて


 どんなに近い関係になっても

 手続きひとつで関係を断絶しても

 やっぱり友達だったね


 永遠の友達


 帰らない人になっても

 ずっと友達


 空を見上げても

 きっとそこには あなたは居ない


 いろんな場所を飛び回って

 落ち着かない日々を

 楽しんでいるのだろう


 自由は孤独に似ている

 私は自由が好きだ

 あなたも本当はきっとそう


 寂しいのは執着のせい

 柵のない自由な空は

 どんな眺めなの


 私はもう少しここで頑張る

 明日も未来も見えないけど

 怖くはないから

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