第7話 監視

『くそ、閉められたか。』

朝比奈家を監視しとけって言われたからこうやってマンションから覗いているが思ったよりも大変だ。なぜならその場を動けないからな。

『何で俺が張り付かなきゃならんのだ』

そんな愚痴をこぼしながらタバコに火をつける。

『高井のやろう。怒らせると面倒だからな』

高井光一とは同い年で立場も一緒。

しかし、俺は1ヶ月前パトカーでパトロール中に車に突っ込まれて足を骨折してなかなか動けないため、動ける様になるまで休んでいる。リフレッシュできると思ったが、最近俺の住んでいるマンションの近くで通り魔があったらしい。犯人の行方も分かっていない。

『岸本、お前の住んでるマンションの近くに怪しい兄弟が住んでる家がある。そこからしばらく見張っといてくれ』

そう高井から連絡が来たのは一昨日のことだ。

『昨日今日と見ていたが別にそれらしい動きは見えないな』

カーテンを閉められた今、見ようと思っても見えない部屋に戻る事にした。


『蒼蘭ー』

今日は珍しく妹の部活が休みなので2人で出かけることにした。

『明日一緒におでかけしよ!』

妹が言ってきた時はびっくりした。小さい頃はよく2人で遊びに行ってたが蒼蘭が中学校に入学してからは一度も2人で遊びに行ったことはない。

『はーい!』

呼んんで少ししたら2階から蒼蘭の声が聞こえてきた。

ドタドタドタ!

勢いよく階段を降りてくる音が聞こえてきたから、おそらく下りてきたのだろう。

『お待たせ!』

『遅いぞ、そ、ら?』

正直言って見違えた。今まで制服、寝間着、道着しか見てなかったが、こんな私服を持ってたのか。

少し白めのワンピースに水色のカーディガン、元々剣道の面を被るのに邪魔だと言いショートカットに切っていた髪型が引退してから少し伸び、肩に触れるくらいになった髪の毛をサイドテールで結び、いかにも女の子らしい格好で下りてきた。

よく見ると首元にはネックレスをつけている。

いつのまにか我が妹はここまでらしくなったか。

『へへ、似合ってるかな?』

『お、おう。正直言って見違えたよ』

『ありがと、嬉しい』

そう言って照れ臭そうに微笑む蒼蘭は今までとは違い、年頃の女の子のように見えた。

『行くか』

『うん!初デートだ!』

『で、デート?』

『うん!デート』

妹がデートと言うならデートでいいか笑

『で、今日はどこに行くんだ?』

『お兄ちゃんと行ってみたいところがあるんだ』

いつも以上に楽しそうに話している蒼蘭を見て何だが嬉しくなってしまう俺がいた。

『友達と部活帰りによく行ってるお店なんだけどね、そこのパフェが美味しいの!』

そう言いながら案内してくれたのは確かに最近できたであろうスイーツを中心としたお店らしい。お持ち帰りもできるみたいでケーキをはじめとしたクレープなど色々なスイーツが置いてある。

俺たちは店の中に入り、カウンターで店長オススメパフェを2人分注文して席に着いた。

『ごめんねお兄ちゃん。せっかく休みなのに付き合ってもらって』

『何言ってるんだ妹よ。たまにはこんな休みもいいさ』

よくよく考えたら休みの日は1日中寝てるからな。なんて休日だ。

『お待たせしましたー』

店員が運んできたパフェはおすすめなだけあってとても美味しそうだ。

『『いただきまーす!』』

2人で声を合わせ食べ始める。

『美味しいね!』

『ああ。美味い』


『わかった。今日はもう監視しなくていいんだな』

高井から連絡を受け、今日は自分の時間に戻る。

『さて、一眠りするかな』

[ピンポーン]

ん?来客?珍しいな。

マンションの常設のカメラを覗いてみた。

ん?この子はたしか、署長の娘さん?

『菜々さんですか?』

『はい。少々相談事がありまして』

果たしてどうしたのだろう。

署長の娘さんがわざわざどうしたのだろう。

『まぁ、どうぞ部屋まで上がってきてください』

そう言って自動ドアのロックを開けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る