エピローグ

「おはよう」


 誰かが俺に話しかけている。

 視界が白くぼやけていて、相手が誰なのかは不明だが。


 でも、どこかで聞いたことがある。

 懐かしい。

 ずっとこの声を聞くために生きてきたような気さえする。


 消毒薬のツンとくる匂い。

 心拍数測定装置の規則的な電子音。


 間違いなく、ここは医療施設だろう。

 あの世界のではなく、自分のいた世界の。


「ねぇ、起きてるんでしょ?」


 再び、あの声。

 霞んでいた視界が少しずつ鮮明になっていく。

 自分の体へ繋がれている何本ものチューブ。どうやら自分は医療用ベッドに寝かされていて、点滴を受けているらしい。


 体の節々が痛む。

 動かせるのは、目と首だけ。

 それでも、俺は声の主を探した。


「この世界に……戻れちゃったね」

「莉緒……なのか?」


 俺の視線の先には、隣のベッドに横たわる少女。

 頭部の傷を縫合したためだろうか、彼女の髪はバッサリ切られて以前と随分印象が違う。顔もガーゼだらけだ。

 しかし、そんな姿すらも愛おしいと思える。


「アタシたちを助けに来てくれて、ありがとう」

「あ、ああ……」

「でも、やっぱ遅刻はダメだよ」


 彼女の眩しい笑顔が、痛みを忘れさせてくれた。

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異世界クラス転移したけど自分だけ教室に取り残されたファンタジー ゴッドさん @shiratamaisgod

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