第4話 パイロットになる為に④

「えっ…」

「果たして、目を覚ますかどうかは…」


そんな……

あの、住良木さんが……


「ごめんな。俺も急いで、新型を修理しないと。」

「ヤマトを?」

「ああ。損傷が激しくてね。」

そう言って、船員はヤマトの方へ、歩いて行った。


そんなになるくらいに、住良木さんは、自分をかばって……

大地はその場に、立ち尽くすしかなかった。


「ここにいたのか。」

後ろからキャプテンである、雷人の声がした。

「勝手に持ち場を離れては、困るな。」

「…すみません。」

大地の小さな肩が、震えていた。


「……住良木が怪我をしたのは、自分のせいだと思っているのか?」

大地は、俯いたままだ。

「そう思うのなら、住良木の分まで、敵を倒す事だな。」

大地は、顔を上げた。

「しっかりしろ!さっきまでの威勢の良さは、どこに行った?」

雷人はそう言うと、大地の背中を叩いた。

「キャプテン……」

雷人はゆっくり頷くと、またセンターへ、戻って行った。

大地も、ゆっくり歩きだす。


これが戦場。

訓練を受けてきたとは言え、15歳の少年が、現実を受け止めるには、時間が必要だった。


大地が船の脇に戻った時、風真は大地の分まで、戦っていた。

「大地!敵の数は、少なくなってきたぜ。」

「そうか。急にいなくなって、ごめん。」

そう言われてみれば、さっきに比べて、敵の数は少ないように見えた。

「敵も恐れをなして、逃げたのか!」

「いや……」

大地は、嫌な予感がしていた。


そう、まるで。

嵐の前の、静けさのような……


その時、遠くからポーッと明るい光が、近づいてきた。

月だ。

そのロボットは、月のように、ポーッと丸い光を放っていた。

「新型ロボット?」

訓練の時に叩きこまれた、月側のロボット。

その全タイプと違っていた。

そして、こちらに向かって銃を構えたかと思うと、大地達のいる場所の側に、撃ってきた。


「大地、あんなロボット……ヤマトじゃなければ、太刀打ちできないよ。」

風真の言葉に、大地は頷いた。


その時、センターから格納庫への無線が、聞こえた。

「ヤマトはまだか!」

雷人の声だ。

「もう少しです!もう少しで、ヤマトは行けます!」

その言葉を聞いて大地は、センターへと通じる無線を探した。

「何を探しているんだ、大地。」

「風真、センターとの無線は、どのスイッチだ?」

「そんなの知らないよ!」

大地は、無線が聞こえたスピーカーの、周りを探した。

いろんなボタンを押しているうちに、赤いランプがついた。

「通じたのか?」

大地に声に応えるように、向こう側から、雷人の声が聞こえた。


『どうした?何かあったか?』

大地はスピーカーに、しがみついた。

「キャプテン!!」

『その声は大地か?』

「僕を、ヤマトに乗せて下さい。」

『ヤマトに!?大地…正気か?さっきの住良木の姿、見ただろう。』

「お願いです!キャプテン!!」

『しかし…』


「僕は、ヤマトに乗る為に、ここに来たんです!!」


大地の叫びは、雷人の心に、確かに響いた。

「分かった。一番下にある、格納庫へ来い。」

それで、雷人との交信は途絶えた。

大地は、直ぐに立ち上がった。

「大地。」

風真は、背中を向けたままだ。

「ごめん、風真。抜け駆けして…」

「いや。」

風真も分かっていた。

大地の、ヤマトに対する情熱が。


「大地ならできるさ。頑張って来い!」

そう言って風真は、また敵を撃ち始めた。

「ありがとう、風真。」

大地は風真をその場に残すと、ヤマトがある、一階の格納庫へと向かった。

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