第3話 パイロットになる為に③

「スペースタウンに着いたら、そのまま地球に戻れ。いいな。」

「…は~い。」

洋人が二人を後ろに振り向かせ、背中を押した時だった。


急に大きな音と共に、船が激しく揺れた。

そして鳴り響く、緊急警報のサイレン。

「敵だ!」

洋人は、急にセンターへ向かって、走り出した。

「住良木さん!」

大地は、洋人の腕を掴んだ。

「大地、風真。今すぐ、最上階の部屋へ逃げろ。」

「えっ…」

「そこで、大人しくしてるんだ!分かったな!!」

洋人は、大地の手を振り払うと、急いで駆けて行った。


「ああ!もう!!」

大地はそう叫ぶと、走り出した。

「大地、どこへ行くんだよ!」

「俺もセンターへ行ってくる!!」

「ええ!なんでだよ!住良木さんには、最上階へ逃げろって言われただろう!」

「敵が来てるって言うのに、大人しくしてられるか!」

「何する気だ!大地!!」

「俺達も戦うんだ!!」

大地の言葉に、ぽか~んと口を開ける風真。

「ったく、大地は!!」

風真も、一緒に走り出した。


洋人はセンターへ着くと、大声を出した。

「キャプテン!!敵は!」

「今、解析中だ。」

この船のキャプテン、神林雷人(カンバヤシ ライト)は、振り返ると、洋人の後ろに見かけない顔を見つけた。

「住良木、後ろの二人は?」

「え?」

振り返った洋人は、驚いた。

大地と風真が、息を切らしながら、立っていたからだ。

「おまえら!上へ避難しろと、言っただろ!!」

「俺達にも、戦わせて下さい!」

「大地!!」

洋人は、大地の前に、ツカツカと歩いてきた。


「遊びじゃないんだぞ!」

「分かってます!」

「子供が、何言ってるんだ!」

「子供じゃありません!!」

大地は、真剣な眼差しで、洋人を見た。

「訓練を受けた、正式なパイロットです!」

「大地……」

さっきの思いつめた表情といい、今の真剣な表情といい、大地には、何か秘めたものがあった。


その会話を聞いた雷人が、三人に近づいてきた。

「この船の艦長をしている、神林雷人だ。君達の名前は?」

「天海大地。」

「…川井風真です。」

「君たちは、パイロットの訓練を受けているのか?」

「はい。」

大地が、大きな声で答えた。

「歳はいくつだ。」

「15歳です。」

雷人は小さな、驚きの声をあげた。


「確かに僕たちは、まだ15歳ですが、ヤマトの訓練生、20名の中にいました。」

「ヤマトの…訓練生?」

雷人は、洋人を見た。

「はい。二人は俺と一緒に、ヤマトの訓練を受けていました。」

「信じられん……この二人が……」

そんな雷人を、大地はじっと見つめた。

「必ず、役に立つと思います。」

雷人は、その目に圧倒された。

「分かった。」

雷人の言葉に、大地も風真も、ほっとした。

「その代り外には出るな。後方支援に回れ。」

「はい!」

大地は、元気よく返事をした。


「キャプテン!解析終了です!!」

監視員が叫んだ。

「敵はどこだ!」

「敵は11時と1時方向。両方とも、同時に攻撃してきています!」


「了解!住良木、すぐに行ってくれ。」

「はい。」

洋人が、センターを出て行った後、大地と風真も、顔を見合わせて、センターを出て行った。


船の脇に着くと、大地と風真は、船に近づく敵を撃った。

「大地、俺達本当にこれで、パイロットとして認められるのか?」

「そんな事気にしないで、目の前の敵を、倒す事だけ考えろ!!」

敵は、こちらが少年だとは知らずに、撃ってくるのだ。

しばらくすると、大地の目の前に、敵の船団がやってきた。

「こんなにたくさん……」

大地は、無我夢中で撃った。

次々と敵は、煙をあげていく。


と、その時。

突如、大地の目の前に、一機のロボットが現れた。

「えっ…」

敵の銃が、一瞬光ったかと思うと、それは光の矢になって、大地に襲いかかった。

「うわっ!!」

大地は、目をつぶった。

だが大地は、痛くも痒くもない。

そっと目を開けてみると、そこには煙が上がっている、ヤマトの姿があった。

「住良木さん……?」

大地は、風真の言葉にハッとした。


そうだ。

ヤマトのパイロットは、住良木さんだ。


「風真!しばらく席を空ける!」

「どこに行くんだよ!大地!」

「住良木さんのところ!」


大地はベルトを外し、急いでヤマトが収容された、一番下にある格納庫へと向かった。

「無事でいて下さい……住良木さん!」

祈るような気持ちで、格納庫の扉を開けた大地の眼に、担架に乗せられた、洋人の姿が映った。

「住良木さん…」


間違いない。

血まみれの包帯。

点滴を受けながら、医務室へと運ばれて行く。

大地は、近くにいた船員に、駆け寄った。


「住良木さん、大丈夫なんですよね。命は、助かるんですよね。」

船員は、下を向いている。

「乗っていたのは、新型だから、命は助かるようだけど…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る