第4話 バイト先に奴が来る

 大学から自転車で20分ほど走った所にあるビジネス街の一角に、カフェ『Home』がある。その通用口を入ると、私の仕事は始まる。

 キッチン希望だったのに、可愛い顔だからという理由でホールになったのだ。


 あれから、2年目に突入した。

 昼間は、サラリーマンやOLさんが主なお客様だ。

 夜は、医者とか残業で遅くなった会社員が多いかな。

 昼間は大学があるので夜の時間にバイト希望し、大学が休みの時は、昼間からバイトをする。


 その日も、いつも通りに夜にバイトをしていた。


 ♪カララン♪


 ドアベルが鳴る。

 お客様だ。

 「いらっしゃいませ」

 「おっ、今日は友か。コースの見せて」

 「かしこまりました」

 そう答えて、常連の今田さんにコース料理のメニューを持っていく。

 いつもはコース頼まないのに、珍しいな。

 そう思いながら、連れがいることに気がついた。

 「メニュー、お持ちしました」

と、メニューを2人に其々差し出す。


 あっちも気がついたみたいで、こっちを見る。

 「あれ…?君は、あの時の…」


「2人とも知り合いか?」と、今田さんは聞いてくるが、どっちに聞いてるんだ?

 「ん… ちょっとね。そういえば、足はどうなった?」

 「メニューはお決まりでしょうか?」

 「うん。私はBコース。博人は?」


 「そうだな、私はCコース」

 「BコースとCコースですね。しばらくお待ちくださいませ」


(今田のヤロー、なんてヤツを連れてくるんだ)

 そう思いながら、キッチンに「コースBとC入ります」と注文を言った。



 すると、今田さんから声が掛かった。

 「友、今夜は飲むから、いつもの2人分頼む」

 「あ、はい。かしこまりました」

チーフに一言、断ってからドリンクコーナーに入る。

 「チーフ。今田さんからいつものドリンク入ったので、入れて来ます」

 「おう。よろしく」


 キッチンで料理を作ることはさせてもらえないが、ドリンク類は入れさせてもらえる。今田さんがいつも注文してくるカクテルを2人分入れて運ぶ。

 すぐに口をつける、ひろちゃん。

 「へぇ… コレ、上手いな」

 「だろ。友が入れると、また格別なんだよな」

 と、ニヤつきながら今田さんは言ってくる。

 その言葉に答える言葉は、これだけだ。

 「ありがとうございます」


 すると、奥から「8番に、よろしく」と言ってきた。

 「はい」と、ホールにいるスタッフは答える。

 8番、このテーブルのお客様の事だ。

 近くにいたスタッフがその言葉に応えて、こっちに持ってきてる。

 助かった。

 あんまり、ああいうタイプは好きじゃないんだ。


 その日も、いつも通り23時まで働いた。

 通用口を出ると、ひろちゃんがいた。

 もしかして、今田さんも?

 すると、ひろちゃんが口を開いてきた。

 「今田は、帰ったぞ」と。


 ふーん、それがどうした。

 自転車を駐輪から出して乗ろうとしたら、すかさず後ろに乗ってきたのか自転車が揺れる。

 「お…、重っ!」

 「話があるから乗せろ」

 「2人乗りはダメです」

 「なら押して歩け」


 なんなんだよ、この俺様野郎。

 「言っとくけど、あんたに対しての印象は悪いからね」

 「構わんよ」


 ほんとに、俺様な奴だな…。

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